黒田総裁は一体何を言っているのか

日銀が長期金利の誘導目標をゼロパーセント程度にしていることについて、ゼロパーセント程度の定義を±0.25%から±0.5%に変更すると発表して丸1日

世間では上限を0.25%から0.5%に変更したことを切り取って実質的な利上げだと言っている人が多いが、黒田総裁は頑なに利上げではないと言っている

理論上の話では下限も同時に-0.25%から-0.5%に変更しているので利下げでもあり、中立的には変動幅を拡大しただけなのでゼロパーセント程度の水準に変更はないとも言える

では何故この変更が実質的な利上げと評価されるのかというと、これまで長期金利は上限の0.25%に張り付く形で推移してきて発表の直後0.46%に急上昇したことを以て実態として変更前の上限を突破する形になったのでその様な評価になることにも一理あると思う

一方で、指摘している人が少ないように思われるのが、そもそも変更前の上限の0.25%が意味をなしていたのかという論点

例えば10年後100円が払い戻される借用書があったとして、日銀はその借用書を98円で無制限に買い付けると宣言していたとすると、世の中にその借用書を99円で買いたいという人が存在すればその借用書を売って現金化したい人からすれば日銀に98円で売るより99円で買ってくれる人に売って売買が成立することになるが、世の中にその借用書を99円で買いたい人が居なくて97円なら買う人なら居るとすれば、97円で買うより先に日銀が98円で買ってしまうので日銀が無制限に買い付ける限り手に入らない
この場合、借用書が98円未満に値崩れしてしまうことを日銀が防いでいるので価格の維持には成功しているが、98円より高い値段なら誰も買わないとすれば買い手は日銀しか存在しなくなる
これを流動性の低下という
じゃあ日銀が無制限に買い付けるのは96円にしようと決めれば97円なら買いたい人が買えるようになるので流動性が回復することになる

今回、日銀は長期金利の水準を±0.5%にすることを決めただけでなく、短期金利の水準は維持しつつ新たに中期金利と超長期金利も操作対象にする(これまでも誘導目標を具体的に設定していなかっただけ必要に応じて介入した実績はある)ことに決めたので、長短の間にある残存7年債などで生じていたイールドカーブの歪みを理想の形に補正しつつ流動性を確保することを通じて企業の資金調達をより円滑にし緩和の効果を高めるのだと黒田総裁は主張している

主張は建前に過ぎないのか詭弁なのかはそれぞれが判断すべき事だとは思うが、そもそも主張の中身を理解していない人が多いし、それを解説する報道も少ないように思う。

#日経COMEMO #NIKKEI #日銀 #金融政策決定会合


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