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この医学書・看護書がすごい!2022【まとめにかえて+α】

『この医学書・看護書がすごい!2022』売り場での展開は2023年1月31日をもって終了いたしました。
今回は2022年11月24日から二ヶ月ちょっとの開催期間でしたが、多くの方にお立ち寄りいただき、3回開催した中でなんと過去最高の売り上げを達成いたしました。

これもひとえに、ツイッターとnoteでの紹介をリツイートなどで拡散してくださった皆様のおかげです。この『医学書看護書がすごい!2022』ってなに?と思った方はぜひこちらをご覧ください。

https://note.com/syotenin/n/nbf6ecfe8be5f

そしてご協力頂いた28社の出版社の営業担当の方々、今年も大変お世話になりました。毎年言ってましたが、私ひとりでは到底できないフェアです。決してひとりで成し遂げたものではありません。


あと、今年も山形県の公立置賜病院の病院図書室で『この医学書・看護書がすごい!2022』で選書した書籍をPOPとともに展示していただいてます!
しかもなんと今回はPOPだけではなく高陽堂書店様(@KouyoudoInfo)にご協力いただき、全て見計らい図書として書籍とともにの展示です!

いやーすごい!公立置賜病院図書室の司書さんにもこの3年間、本当にお世話になりました。
ありがとうございます!圧巻ですね。実際に本があるという威力は強い。
ご協力いただいた高陽堂書店様もありがとうございました。

ところで、今年もこれだけでは終わりません。
タイトルの+α部分です。
昨年と同様、各出版社にアンケートを送った際に下記の項目をつけました。

『今年、他社で出版された本で悔しいけれどすごいと思った本がありましたら教えてください』

こちらの回答が今年もなかなかに面白くて興味深かったので、担当者名は伏せたうえで書籍とコメントを紹介いたします(文体も一部変えております)。

『ドラッグストアで買える あなたに合った薬の選び方を頼れる薬剤師が教えます』(羊土社)

コロナ禍において、ちょっとした体調不良では病院に行かずに、ドラッグストアで薬を買うという人が増えているだろう現状に対応した書籍。市場状況をよくおさえた、情勢に則した企画かと思う。

この企画を医学書専門版元がこの価格でやるのって、かなり勇気が入るのでは。
いったいどれだけ刷ったんだろう、などという野暮な話にどうしてもなってしまうが、難なく重版決定。すごすぎる。営業部頑張ったなあ。

『みんなでできる 医療的ケア児サポートBOOK』(照林社)

いま必要とされている大切な本だと思う。看護師だけでなく、病院や地域の多職種で作り上げた1冊という点も良いと思う。

『偽物論』(金原出版)

表紙も、著者の尾久守侑先生も、「学術エンターテイメント」という新領域も、販促の手法も、すべてがピカピカに光ってて新鮮。

『ナイチンゲール生誕200年記念出版シリーズ「ナイチンゲールの越境」』(日本看護協会出版会)

クラシックかつビビッドな表紙で目を引き、テーマもこれまでにない内容で、日看協さんの地力を感じた。

『医学用語の考え方,使い方』(中外医学社)

純粋に興味深く、それだけでなくとても読みやすい一冊

『小児のギモンとエビデンス』(じほう)

先を越された

『がんがみえる』(メディックメディア)

こんなん絶対売れるやんずるいって……ってなった
略したら「ガンミエ」,めっちゃ診えそうなのもずるい……

『誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた』(医学書院)

「こういう著者を見つけ、こういうテーマを提案し、こういうプロモーションで売りたい」が全部詰まっていてさすがに引いた。

ここまで、今回の『この医学書・看護書がすごい!2022』で選書された本でした。
ここからは選書外の本となります。私のひとことコメントもつけました。


『鍼灸のことが気になったらまず読む本 Q&A 89』(中外医学社)

一般的ではありますが、個人的に読んで「へぇ、そうなんだ」と思うことも多かった本

こちらの本、医師や鍼灸師の方だけではなく一般の方が読んでも面白いと思います。コメントにあるように、へえそうなんだとなる本。


『恋する心電図教室』(南江堂)

昨年はかげさん、そして今年はまさかの萌え系イラストに「恋する」、と
2年連続で心電図に対する並々ならぬ南江堂さんの意気込みを感じた1冊。
内容はマンガイラストから会話形式で理解、というよくある感じではあるが、ここまで振り切れるとつい一度は手に取りたくなるのではないか。

この本、実は最後の最後まで私からの選書で悩んだ本だったんですよね。萌え系イラストが目を惹くし、内容もとてもわかりやすいです。

『総合診療医がみる「性」のプライマリ・ケア』(金芳堂)

近年いろいろと話題になってはいるがなかなか難しいテーマだと思う。それでもコンパクトにまとめきっているところが素晴らしい。一歩踏み込んだコラムもためになる。

コメントにもあるように「性」というカテゴリにここまで踏み込んだ本はなかったのでは?かなり読み応えがあります。多くのひとに読んで欲しい本でもあります。


『クイズで学ぶ画像診断「1手詰」 読影のキホンが身につく必修手筋101』(金芳堂)

画像診断をクイズ形式にして詰将棋に例えて読みやすくする発想が斬新だった。

金芳堂は本当に面白い本をだすなあと新刊が入荷した時に思いました。すぐに売れたはず。


『オンコロジークリニカルガイド 消化器癌化学療法 第5版』(南山堂)

・歴史的にも名著の誉れ高かった同書の改訂第5版が何と言っても出色。
・薬物治療・化学療法にことのほか強い南山堂さんと、この道の大家大村健二先生(上尾中央総合病院)、室圭先生(愛知がんセンター)による編集。
・ASCO,ESMOの最新情報も取り入れてのずっしりと充実の一冊。
・消化器医必携の書。

オンコロジークリニカルガイドの三冊目。表紙のデザインがとても好み。こちらも入荷してすぐ売れた覚えがあります。

『<叱る依存>がとまらない』(紀伊國屋書店)

繰り返される<叱り>を依存症として科学的に捉えるだけではなく,叱ることを中心に薬物依存や体罰問題,さらにはバッシングや厳罰主義など社会や文化の問題にまで落としこんだ,表面的ななぞりで終始しない一冊。

医学ジャンルではなく人文ジャンルの本なのですが、新刊で入荷した時に気になった本。これ叱る側だけではなく叱られる側の方が読んでも、なるほど!と腑に落ちることがあると思います

『病気の見取り図』(照林社)

看護にしっかりフォーカスしている点,昨今の読者ニーズに合わせた過不足のない解説・編集にうまさを感じる

見開きの二ページで患者さんの症状から、なにを観察して、どうケアすればいいかが、ぱっと見てわかるのがすごい。もし、私が看護師だったらこの本絶対に買ってましたね。

『ジェネラリストが知りたい 膠原病のホントのところ』(メディカル・サイエンス・インターナショナル)

ジャケです。ツボなんです、浮世絵。やられた!と思った。

コメントにあるようにこれは表紙がずるい。私も大好きなデザインです。医学書でこういう遊びがあると個人的にテンションあがります。


『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)

たくさんの書籍の中でもすぐに目につく表紙と版型に驚かされました。

これも入荷した時におおっ?となった体裁でした。思わず手にとってしまうデザインっていいですよね。

『論文図表を読む作法』(羊土社)

論文系で久しぶりのスマッシュヒットではないか?
羊土社さんの紙面の作り方の上手さが際立つ1冊。

売れましたねーこの本。羊土社は論文系の本でヒットを出すのがうまい。


他にコメントなしで、『臨床整形超音波学』(医学書院)、書名は具体的には挙げずに「羊土社が元気がよいのでは」というコメントをいただきました。
それにしても悔しいという実感がこもっているコメントが多いですね。ぜひこれからもいい意味でしのぎを削って欲しいところです。

さて、そろそろまとめに入ります。
今年は昨年よりさらに2社増えて、28社56冊をフェア棚にフル展開できる運びとなりました。

上の2枚の写真は開催初日のものです。

こちらが最終日の棚の様子です。売り切れている本もありますが、棚にみっちりです(下段は取りづらいので敢えて空けました)。

ある出版社の方に「どうして2社増やしたんですか(大変なのに)」と訊かれましたが、このフェア棚をフルに使いたかったということに尽きます。
完全に自己満足の世界です。

毎年言ってますが、昨年大変だったことを忘れてしまうんですよね。いや、忘れてはいないんですけど、まあなんとかなるやろとかわけのわからない自信で手をつけて、これいつ終わるの?なんで増やしたの?POPあと何枚残ってんの?あと○日しかないのにnoteの説明文まだ半分も終わってないんですけど……って涙目になるんですが、フェア棚が完成した時の達成感と推し本が売れた時の歓喜をまた味わいたいという一心でやりました。本当に嬉しいんですよ。やった!ってなるんです。
そして、やったはいいけれど一冊も売れなかったらどうしようという不安はもうありませんでした。

だってこの56冊は間違いなく『すごい』本なのですから。

うちの店で売れなくても、SNSでこの企画を見かけてとか、このnoteを見てどこかのお店で手にとって売れるきっかけになっていれば嬉しい限りです。
本望です。今からでも気になった本は、ぜひ近隣の書店で購入してください。

医書看護書というのは今更言うまでもなくターゲットがとても狭いです。狭いけれど、明確なターゲットはある。だからこそ、いかにして求めているひとの目に留まるか、出版社の方々と私たち書店員は力を注いでいます。

この企画を考えたのは3年前、まだ医書担当になって3年目のことでした。本当に単純に、コミックや文庫は年末に『この○○はすごい!』というジャンル全体をあげてのイベントがあっていいなあ。派手な拡材もあるし、羨ましい。医書界隈でもあればいいけどあるわけないんだよなあ。

じゃあ、自分でやればいいのでは?????よし、やるか!

多分、決断は秒だった気がします。
問題はどうやって出版社にコンタクトをとるかでした。その時点で私は特に医書の出版社とやりとりがあったわけでもなく、ほぼつてもありませんでした。各出版社の担当が誰なのかも知らなかったというひどい状態です。
そんな中、各出版社のサイトの問い合わせフォームからドキドキしながら提案書のメールを送信したのです。いやー、ようやったな自分。この時点でじゅうぶん、正気じゃありませんね。

幸い、國松先生の國ラヂオの出演をきっかけに金芳堂のHさんとはやりとりがあったので、いろいろ相談に乗っていただきました。あと看販会ですね。きっかけを作っていただいて本当に感謝しております。

なによりそんな右も左もわからない医書担当からの提案を快く受けてくださった出版社の営業担当の方々にも、改めてお礼を申し上げます。
冒頭でも言いましたが、本当に私ひとりの力ではできなかった企画です。目一杯、出版社の方々には頼りました!お世話になりました。

そして、

残念ながら私は勤めていた書店の閉店に伴い、もう書店員ではなくなりました。
まさかこんなことになるとは。人生わからないものですね。

これからは別の舞台で書籍とは別のものをまた発信する立場になりますが、それはさておき、最後に敢えてこの言葉で締めたいと思います。

未来の私へ。

「次は、なにをする?」

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