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半身で働くことは現代の本の読み方

現代社会を嘆く前にするべきことを考える

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』
という本が売れている。
私も先日、京都まで出向いた際に直接、三宅香帆さんのお話を聞いてきた。

「現代社会で本が読めるようになるには?」
という問いが張り巡らされて、論理展開している本であるが、その中身はとても多岐に渡る分野について言及している。
一見、“読書と歴史について”書いてあるため、序盤で脱落する人も多いと思う。
しかし、この本の本質は、終盤のまとめられている著者の意見と読書の歴史の“合わせ技”にある。

この中でも、特に私の心に響いた部分をご紹介しようと思う。

『半身で働く』
これは、私も何となく気がついていたものの、それを言語化してくれた、興味深い部分になる。
“半身で働く”ことこそが、現代の働き方であり、それこそが読書ができるようになる働き方だという事が述べらている。

2010年代に入って、私たちの世界は一変したと言ってもいい。
SNSが普及したことによって、誰でも発信できる環境が手に入った。それによって、「いかに行動をしたものが勝つか」という社会が作られたのである。
“花束みたいな恋をした”で仕事に忙殺された挙句、小説が読めなくなった麦が手に取っていた本が『人生の勝算』という本である。

『人生の勝算』とは、“メモの魔力”で有名になった前田氏が、行動する事の重要性についてのエピソードを多数種録した書籍である。
この書籍の中で、前田氏はこのようなことを言っている。

よくビジネス書では、人に好かれる能力を磨きなさいと書かれていますが、僕は逆だと思っています。人を好きになる能力の方が、よっぽど大事だと思います。
人を好きになることは、コントローラブル。自分次第でどうにでもなります。でも人に好かれるのは、自分の意思では本当にっd堂にもなりません。コントローラブルなことに手間をかけるのは、再現性の観点でも、ビジネスにおいて当然でしょう。

人生の勝算より

コントローラブルなものに集中して行動量を増やし、アンコントローラブルなものは見る価値がないから排除する。それが人生の勝算を上げるコツらしいのだ。

ここまでが、三宅さんの著書に書かれている内容だが、つまり、行動量を上げることで、人生の勝算である仕事の成功をおさめることを綴ったビジネス書なのだ。
その一方で、現代である2020年代には、半身で働くことがいいのではないか、という提言をされている。
人生の勝算については、これの他にも語られていることはあるが、他のビジネス書と同様に、“行動量”について語っているビジネス書が、この時代には一世を風靡したことは間違いない。
『7つの習慣』というビジネス書が、急に注目を浴びたのもこの頃だし、ビジネス書が書店の大半を占めていた“本好きには辛い時代”だったのも2010年代だった。

「何でもいいから行動しろ」
という考え方は、もはや現代では辛い方法となっている。
なぜなら、私たちは食べていかなくてはいけないからである。
これは、私の持論ではあるが、行動量を増やすためには“お金と時間”が必要なのだ。
そのためには、金銭的、時間的な余裕が必要となる。

かつては、「お金を取るか時間を取るか」といった選択肢が存在したが、現代ではそんな選択肢はなく、お金も時間もない人がほとんどではないだろうか。
現代は、言わば、“羊の皮を被った狼”である。
スマホを持ち、動画に溢れ、情報はすぐに手に入る。
何もかもが満たされているはずなのに、年間の自殺者は増えている。
こうした現代の闇については、マスコミは一切触れようともしない。

しかし、こうした時代になった以上は、このことから目を背けたり、考えることをやめてしまってはいけない。
時間も、お金もないからこそ、『半身で働く』という事が重要なのではないだろうか。
半分を仕事に傾け、残りの半分を他のことに向ける。
そのように“走りながら考える”という事が求められているように感じるのだ。

「新しい文脈を知ろうとする余裕がないとき、私たちは知りたい情報だけを知りたくなる。読みたいものだけ、読みたくなる。未知というノイズを受け入れる余裕がなくなる。長時間労働に疲れているとき、あるいは家庭にどっぷり身体が浸かりきっているとき、新しい「文脈という名のノイズ」を私たちは受け入れられない」

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』より抜粋

本書で言うところの、『ノイズ』を受け取る暇がないことが、読書ができない弊害となるのである。
新しいことを取り入れる事ができないことは、自分の成長になっているのだろうか。
全く、真逆のことをしているのではないだろうか。
こうしたことを、本書を読んで思ったのが、私の感想である。

つまり、「本が読めない」と言うことは比喩表現であり、「新しいものに触れる余裕がない」と言うことと等しいのだ。
そのためには、現代社会を嘆くのではなく、今の現状から自分がいかに脱却するかを考えなくてはいけないのではないだろうか。

『半身で働く』と言う言葉には、そういった生き方の提言も込められているように思うのだ。

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