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「成瀬は天下を取りにいく」の成瀬から学ぶ

人の事が気になりすぎてしまう現代人

「自分の事がわからない」
そんな不安を持っている人の中には、“自分が他人からどのように見られているのか?”ということに不安を抱えている人も居るかもしれない。
私がSNSを始めた頃、過剰に反応してしまったのが、“他人からの評価”である。
とにかく、「自分をよく見せたい」という気持ちでいっぱいになる。
ここには、大きな矛盾があるのだが、そのことに当時はまだ、気が付いていなかった。

SNSで発信するというのは、“誰とも知らない垢の他人に向かって話す”ということである。中には、限られたコミュニティだけに発信する『鍵垢』という形も存在するが、多くの場合において、自分の素性を知られたくない場合が多い。
それであるにも関わらず、「自分ことをよく見せたい」というバイアスがかかる。
自分の素性もしれない関係性であるにも関わらず、そんなことを気にしてしまう以上、自分という人間を知られている場合はもっとその気持ちは大きくなる。
「自分のことをよく見せたい」という気持ちや態度には、“良く見せる”という曖昧な表現がある。これは、具体的にどのように見られたいのか、明確に答えられる人は、あまり多くはないのではないかと思う。

『成瀬は天下をとりに行く』という作品を読んだ。
この作品の中で、圧倒的な存在感を示しているのは、主人公『成瀬あかり』である。
彼女は、どんなことでも突き抜けている。
地元の百貨店が閉店する時、けん玉、自身の髪型など、具体的な内容はネタバレを防ぐために避けるが(私は多くの人に本を購入して読んで欲しいという気持ちがあるため、極力ネタバレは避けるようにしている。中には古典文学など、ネタバレしても問題なさそうなことはその範囲外のこととしている)、どの行動もぶっ飛んでいると言っていい。
これによって、何が生み出されているのだろうか。
それは、『芯』であり『軸』である。
私たちの多くが、こうした『自分の軸』のようなものを持って生きていない。
何となく生活して、何となく面白そうなことに、何となく取り組んでいる。
中には、「そんなことはない。私は信念を持って生きている!」と強く訴えられる人は、是非ともこの『成瀬は天下を取りにいく』を読んで、主人公と比べてみてほしい。それでも「私の方がぶっ飛んでいる!」と言い切れる人がいたら、その人は自分自身を小説にするべきだろう。

『軸』を持って生きることによって、本作の主人公“成瀬あかり”は、人の言うことに反応しない。こうした“スキル”を現代人は身につけなくてはいけない。

行動がぶっ飛んでいる人には、他人からは心無い言葉が飛んでくる事が多いことを、この小説でも知る事ができるだろう。成瀬もそうした言葉を浴びせられている。
それに、現実社会においても、そうした“出る杭”を煙たがることによって“いじめ”のような事が起こる。
これは学生だけの話ではなく、社会にでても、“いじめ問題”は起こるのだ。
それも、高齢者になってまで、“特定の誰かをみんなで仲間はずれにする”という現象は起きている。少し人と違うから、少し並外れているから、少しみんなができる事ができないから。そんな、たった“少し”のことに対して、みんなで束になって“やっかみ”を持って接する。

こうしたことで、悩んでいる人は、多くいるはずだ。
私の祖母のコミュニティでも、喫茶店で集まっていた友人グループの中から、特定の“少しお金もちの友人”をやっかんで除け者にしていたらしい。祖母はそれに加担する事が嫌になり、そのグループを抜けたそうだ。当然である。

これを本作の主人公、『成瀬あかり』は吹き飛ばしている。
それは、なぜなのかと考えてみるまでもなく、お気づきの方もおられると思う。
「行動がぶっ飛んでいるから」である。
なぜ、ぶっ飛んでいるのかといえば、“没頭するものを常に持っているから”なのだ。
『成瀬は天下を取りにいく』を読むとわかるが、主人公“成瀬あかり”は、次々と目標を決めていく。新しいことにどんどん取り組むのだ。
初めからできるわけではなく、努力をして、取り組んだ先に、自分の目指すべき目標達成が待っている。その結果は、自分の思うものではないかもしれない。しかし、その“没頭する世界”の中から、自分の達成感を得る事ができている。
なぜなら、ぶっ飛んだ行動力であるからだ。

しかしこれは、「誰にでもできる事なのではないか?」と、私は思うのだ。
主人公“成瀬あかり”の周囲には、成瀬に魅入られた友人が集まっている。
それらの友人たちも、目標などを持っているが、成瀬ほどの高みを目指している者はいない。しかし、成瀬に感化されて、目標値の高さを上げて、挑戦するようになる。
「私なんかには無理」そういって諦めていた友人も、「何だかできるかも」という気持ちにさせる。
本書を読み進めていくと、私たちも“成瀬の友人”になったかのような感覚になる。
行動がぶっ飛んだ成瀬の感覚に近づいてくる。

こうした読書体験をすると、行動したくなるはずだ。
「自分の事がわからない」「他人の目が気になる」という人は、まずは“何となくできそうな目標”を持ってみることだ。
そして、その“何となくできそうな目標”に向かって、「これでもか」と言うくらい没頭してみる。
するといつの間にか、あなたも『成瀬あかりの友達』になっているかも知れない。

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