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の、ついでに美術館【老舗酒造「出羽桜」が運営している美術館】

成人式(今は二十歳を祝う会と言うらしい)の挨拶のため、地元山形へ帰ってきた。
いつもは落語をやって笑ってもらうわけだが、今日は違う。二十歳のみんなに真面目な挨拶。多少、笑いどころはつくるが、メインはそこではない。いかにして、二十歳のみんなの心に突き刺すことを言えるか。
それを考えすぎたため、多少強気で攻めすぎたのはいなめない。気づいたらこんな事言ってた。

「18歳の頃、僕はこの町が好きじゃなかった」


いなめない、、、

もちろん、これはフリ部分で町が好きになった経緯を話すわけなのだが、ちょっと攻めすぎだろうと反省。どういう風に二十歳の子たちが思ったかは分からない。

会は午前中に終わり、その日に東京に帰るのだが、新幹線の時間は17時。しかもお盆シーズンで乗車変更はできない。

よし、天童へ行こう。
天童市は山形駅から15分。将棋の駒と温泉で有名である。また、水車生そばというお店が有名なのだが、そば屋なのに、ラーメンの方が注文数が多く、というかほぼラーメン屋なのだ。
そのラーメンがあまりにも美味すぎるからである。僕も、何度もこの店に訪れた。

水車生そば「元祖鳥中華」

というか、なぜ天童へ行くのか?
今回は、温泉に入るために天童によったわけでもないし、将棋の駒を買いにきたわけでもない。ラーメンだって違う(時間があれば本当はよりたかったが)。そう、美術館に行くためにきたのだ。

出羽桜美術館

この名前を聞いて、ピンと来る人は日本酒好きだろう。出羽桜とは、山形を、というか日本を代表する酒造メーカーと言ってもいい。そこが運営している美術館なのだ。

noteの他の記事にも書いたが、昨日は蔵王の老舗旅館が運営している美術館「わらびの里」に行ってきた。今回は老舗酒造が運営している美術館である。

さっそく、駅前から将棋の駒である。

そこから歩いて15分。夏の暑さで、とんでもない量の汗をかいた。このあと新幹線乗る時、汗臭いの嫌だなと、そんなことを考えている。さっきまで成人式の反省なんて忘れている。
ようやく着いた。

素敵な佇まいである。

中に入ってみると、趣きがある。 

聞けば、もとは3代目の社長宅であったらしい。

作品は、陶磁器を中心としたものが多かった。
3代目社長、仲野清次郎により設立されたのだが、館内にある「ごあいさつ」の文章によれば、

仲野清次郎は学生の頃から、朝鮮半島の李氏朝鮮時代に焼かれた陶磁器に魅せられ生涯を通し蒐集し続けました。愛陶家の間で親しみを込めて「李朝」と呼ばれるやきものには、見る物の心の安らぎといやしを与えてくれる"温もりの美”があるといえるでしょう。

館内の「ごあいさつ」文より

他にも、この社長の文書で、いかに俺は李朝が好きか!ということを書き記している。それほどの作品の数があり、それをもっとたくさんの人に見てほしい!いや、見てくれ!というその気持ちが強く伝わってくる。まあだからこそ、結果的に酒蔵を営んでいたのに、美術館までひらいちゃったわけだ。

社長の元自宅に、社長が好きだったものが展示されている。正直、僕はやきものはよくわからない。今回も申し訳ないが分からなかった。
だが、好きは伝わった。この好きという気持ちが相手に伝わるか伝わらないか、これはとても大事なことである。落語家においてもそうである。自分が好きなことをいかにして相手に伝えるか。そこにはやはり、熱量が必要なのだ。それが、伝わる出羽桜美術館であった。

外に出ると、隣は出羽桜の会社があった。

この場所で3代目の社長は美味しいお酒を求めて一生懸命働いたのだろうか。そして、趣味として李朝の陶磁器の美術館を開いた。

男のロマンかもしれない。


だが、

奥さんはどう思っていたのだろう。
私にもカミさんがいる。だからこそ、思う。

絶対反対されただろうな。

またよく分かんないやきもの買って!!


言われてたろうなあ‥

好きを貫くというは、いささか力がいる。

会社の隣には仲野酒店。

どうやらここで、出羽桜が買えそうだ。

ちなみに僕が買ったのはこれ。

この2日間で、ちょっと金を使いすぎたので、この大きさ。

成人式の、ついでに出羽美術館に行ったが、出羽桜の歴史と味も一緒に楽しめて、3代目社長の好きがいっぱいつまった場所であった。

人の好きを観れるというのは、自分が興味がないものでも、楽しめるものである。

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