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あなたに似合うマスキングテープ

友達が引っ越す。ある期間を過ぎてから(期間中も毎日会っていたわけではないが)特段毎日連絡を取るわけでもなく、タイミングが合えば会うという付き合い方をしていた、一緒にいるのが心地いい友達。

それでも顔を合わせると毎回と言っていいほど話し込んでいた。自分の思考、感情を吐露できる相手だ。そんな人が近所にいるのは大変ありがたい。約束しなくても、ふと会って話ができるのだから。

そんな友達に手紙を書いていた。今までお世話になった感謝と、これからもつながっていたいという想いを込めて。

書き終わったあと、便箋を封筒に入れて宛名を書いた。
なんともシンプル。殺風景。ちょっと寂しいかな、何かデコレーションしたいな、でもイラストもそんなに上手くないし時間もないし。そうだ、マスキングテープにしよう。

あなたに似合う色は何だろう。あのとき教えてくれた好きな色にしよう。これまでの共に過ごした時間の蓄積で、私の中のあなたの輪郭がはっきりとしてくる。

好きな人たちのことを想う時間があるのは豊かだ。贈られた相手は気づかないかもしれないけど、この色にはこんな意味があって、あなたのこんなところをイメージして選んだよ。と、伝えなくても、それを考える時間が、私は好きだ。きっと、相手も笑顔で受け取ってくれると信じて。

傷つくけど、人が好きだ。つながるあたたかさや楽しさを知ってしまったから、傷つくと分かっていても、それでも人間社会の輪の中に入っていくことをやめられない。むしろ、自然に、つながりたいと思う。

距離や状態によってグラデーションはあるかもしれないけど、好きな人と、心地のいい関係を続けていたい。

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