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第48期最高位決定戦1日目第1戦


10月22日、第48期最高位決定戦が開幕した。

最高位戦は全国で7つの本部支部を構え、約700名の会員が所属している。その誰しもが憧れる舞台、A1リーグ。3月に開幕した48半荘の戦いを終え、3人が現最高位竹内元太への挑戦権を得た。

最高位戦配信対局を構成する一つのコンテンツとしての地位を確立したオープニングムービーが流れ、対局が開始した。多くの麻雀ファンが待ち望んだこの瞬間。しかし、誰よりも楽しみにしていたのは他でもない対局者の4名であろう。

「よろしくお願いします。」
静かなスタジオ内に熱のこもった挨拶が響き渡り、今年も決定戦が始まった。

「雀風」という打ち手を定義するために広く使われる言葉がある。何を狙い、何を重視し、どういった選択するか。
例えば、門前派か鳴き派かという分類。
これに関しても、ドラの役牌をポンして聴牌なら門前派であっても鳴くし、鳴き派といえどメンタンピン三色一盃口のイーシャンテンからチーテンを取ることはないだろう。鳴くか、鳴かないか、どちらか微妙な選択を迫られたときにその打ち手のタイプが出る。そういった一つ一つの微妙な選択の違いが個性となり、その集合体が打ち手を構成している。この決定戦もそれぞれ個性が異なる4名が集まった。

Youtubeの動画はこちら↓
第48期最高位決定戦 オープニングMovie
https://youtu.be/sHKGtLWOuDU?si=TNm2c9K-BB_FHSvY
(無料で観られます)

【麻雀】第48期最高位決定戦 第1節
https://youtu.be/eGLa_6DzrmM?si=l8CCFX1ac5wTUmKn

東1局。
開幕からいきなり3者の手がぶつかる。

親番の村上。
筒子が多めの手牌で孤立役牌が2種。役牌を重ねて筒子のホンイツを狙う手もあるが、村上の選択はションパイ役牌の中。「リーチ超人」と呼ばれるほどリーチ主体のスタイルである村上は平和イッツーなどのリーチ手順を目指す。雀頭がないので平和効率で役牌の中よりもオタ風の北残し。

村上淳
35期、39期、42期と3度最高位に輝いた。それだけにとどまらず、2度のClassicや2度の新輝など数々のタイトルを勝ちまくっている村上。輝かしい麻雀プロ人生を歩んできたが、今年は5年間所属したMリーグの「赤坂ドリブンズ」を退団するという悔しい出来事もあった。4度目の最高位の栄冠を手土産に、輝かしいあの舞台への復帰を目指す。

その一方で、ひと際目を引く手牌になっていたのはこちら。

絶好のペン3pを引き入れ、2巡目にしてホンイツや役牌、イッツーといった高打点がみえるチャンス手が入った。村上とは対照的に鳴きも駆使する竹内は、ここからマンズのリャンカンに手をかけ、まっすぐホンイツに向かう。6p、8p、東は迷わず鳴いていく構えだろう。

竹内元太
3期目のA1リーグにして初の決定戦に進出し、見事優勝を果たした現最高位。4人の中で一番の若手ではあるものの、今年はチャンピオンという立場で挑戦者3人を迎え撃つ。

3巡目、ドラで自風の西が1枚浮いているが、平和やタンピン一盃口など、大きく育つ可能性もある手牌。こういったドラの扱いは難しく、打ち手の個性が出る瞬間である。自身の手牌が十分に戦える形になってからリリースする者もいれば、戦える「可能性がある」タイミングで手離す者もいる。「ドラの切り時」という一つの個性が出る瞬間だ。この手牌はドラを使わずとも「将来性がある」と判断し、このタイミングで切っていたのはこの男。

坂本大志
第44期最高位。今期は序盤から手牌にも恵まれ着実にプラスを積み重ねていき、8節目を終えた頃にはその貯金は486ポイントに到達していた。その後はそのリードを活かしつつ、危なげなく堂々の首位通過で竹内元太への挑戦権を手にした。「麻雀生徒会長」とのキャッチコピーが付く坂本の競技麻雀への情熱は凄まじく、麻雀の勉強会のために全国各地に飛び回るほど。A1リーグでの勢いをそのままに、4期ぶりの復権に向け、情熱を燃やす。

3巡目に東を暗刻にした後、孤立の發も重ね5巡目にしてホンイツのターツが足りたイーシャンテンは竹内。坂本の西に合わせるような形で安牌の北を残してドラの西を切っていく。

一方、坂本は3巡目に早々に手放したドラを5巡目、7巡目と立て続けに引き、ドラが3枚河に並ぶ格好になる。

9巡目、先制テンパイを果たしたのは親の村上。絶好のカン8mを引き入れて25mのリーチ平和のテンパイ。おなじみのリーチ発声とともに牌を横に曲げる。切る牌は5pか8p。基本的には外側の8pを切ることで捨て牌の情報を少しでも出さないようにするのがセオリーだが、下家竹内の5pに合わせる形で5pを切ってリーチとした。下家の竹内はカン8pと36pのイーシャンテンが入っており、8pを切っていたら高め満貫のテンパイを入れてしまうことになっていた。早速村上の丁寧な選択が光る。

5pを切って竹内のテンパイは免れたものの、リーチの一発目に引いてきた牌は8p。当然竹内のチーテンが入り、いきなりの真っ向勝負の形になる。

そして坂本も竹内と同巡にテンパイ。リーチの現物の6sをそっと河に置き、カン5mのテンパイを組む。「将来性がある」と見込んで早々にドラを切った手牌を、しっかりと価値のある手牌に育て上げたが、親リーチと、その親リーチに対して一発目から無筋の4mを押していった竹内がいる以上、ここはあがれれば御の字といったところか。

開幕からいきなり迎えた3件テンパイ。このめくり合いを制して今期の決定戦初アガリをものにしたのは親の村上。坂本の待ち牌でもある5mを力強くツモリあげ、裏ドラも1枚乗せて2600オールという快調な滑り出しとなった。

一牌の後先

東1局1本場

役牌の北を重ねて、マンズのホンイツも見えるような手格好ではあるが、ション牌の中切り。門前重視、リーチ主体の競技麻雀の王道と言っていいスタイルで、基本に忠実に、まっすぐに手牌を進めていく。

太田安紀
今期で2度目の決定戦進出となる太田。去年のリーグ戦では苦しいポジションから最終節に+130.8ポイントのプラスを叩き出し、降級ボーダーから5.5ポイント差という奇跡の残留を果たした。上記の画像にあるポイント推移のグラフにもある通り、今期も序盤は苦しい状況からも、後半4節だけで+374.9ポイントの大爆発。降級も見える位置から一気に決定戦最後の椅子をもぎ取った。初の最高位戴冠に向け、静かな男が虎視眈々と熱い情熱を燃やす。

しかし、前局と同じく今局も太田以外の3人のぶつかり合いとなる。

6巡目にドラ表示牌の8mを切り、次巡の6sも切る形で対子手に比重を置いたが、ここで順子が完成。自己都合ならドラの重なりも見て9sを切る一手だが、村上はここでドラ切りを選択。安全度の高い9sを手牌に留めた。この4者で見ると竹内・坂本は比較的ドラの見切りが早く、村上・太田はぎりぎりまでドラを使った高打点を目指すタイプだが、3巡目に3p、その後カン7sターツを払った竹内に対して安牌が0になるのを嫌った格好だろうか。

実際、竹内には5巡目にしてイーシャンテンが入っており9巡目に先制リーチ。

そして前局と同じく、同巡に坂本が追いつきリーチ。こちらはメンタンピン一盃口の勝負手だ。

2者のリーチに対して1発目、村上はドラを切ってまでホールドしていた安全牌の9sで凌ぎ、次巡ツモり三暗刻のテンパイを果たす。あのときドラを残していたら2者に対して共通の安全牌はなかったため、手牌を崩さざるを得ない状況になっていたかもしれない。たった1牌の切り順の前後が活きる形となった。待ちは悪く、2件リーチとめくり合っても勝率は悪そうだが、ドラ表示牌の8mが4枚見えで、ドラの9mも2枚見えと二人ともドラがなさそうであることも後押しし、ツモったときのリターンを見てリーチを敢行。

咳払いを一つして、力強く2mを横に曲げる。

しかし、勝ったのは竹内。

裏ドラを1つ乗せて5200点とリーチ棒2本の大きなアガリとなった。

「慎重」な竹内と「積極的」な坂本

次局、役牌が2組対子の楽しみな手をもらった村上。ソーズのホンイツを目指して手牌を進めていく。

それに対して坂本は8s2s、上家の竹内も3sというソーズのホンイツに対して先に処理しておきたい牌を河に並べていく。

赤が入っていない競技麻雀において、ドラがなくても高打点を目指しやすいホンイツという役は非常に重宝される役で、多少遠くても積極的に狙っていく局面も多い。狙うことが多いからこそ、周りのホンイツへの対応する機会も多い。役牌やその色の数牌などは鳴かれたり危険牌になってしまう前に先に処理していくのが常套手段だ。

上家から切られた場に2枚目の3pをチーして坂本はタンヤオに向かう。打点は2000点でテンパイまでも少し遠く、安全牌も確保しづらい手牌のため鳴かない打ち手も少なくなさそうだ。しかし、このドラそばの急所を処理できなければほぼアガリ放棄と同じと判断し、リスクも承知で前進していく。積極的な坂本らしい仕掛けだ。

親番でこのイーシャンテンの竹内。上家の村上は2副露で2枚切れの白が余ったところだ。ホンイツの進行度をはかる上で、河に置かれた牌は重要な指針となる。ホンイツは基本的に
「別色の数牌」

「3枚切れや2枚切れの字牌」

「ション牌や1枚切れの字牌」

「ホンイツの色の数牌」
という、ホンイツのターツを作る上で必要な牌ほど後に処理され、それがどれくらい余ったかで速度を測る。一般的にはその色の数牌が余ったらいよいよテンパイしていることが多いと判断される。今回、村上はまだ2枚切れの白が余っただけで先ほどの基準でいえばまだテンパイに遠いと判断しても良いが、竹内は9sを打たずにドラの2pが埋まったときだけ勝負という構えにした。門前派の村上がホンイツに向かったということで、一般的な基準よりも整っていることが多く、また、9sが放銃になるときはチャンタやイッツーなどが絡んで満貫になるケースがある。いくらテンパイしていないケースが多いとはいえ、ドラのカンチャンが残ったこの手では少しの放銃抽選を受けるのも見合ってないという慎重な判断だ。

しかし、ドラを引けば話は別だ、ということで9sを切って先制リーチといった。

その親リーチを受けた坂本。まだくっつきのイーシャンテンでテンパイしたときに出ていく牌も危険牌。筋の8pを切ってベタオリというルートもあるが、ここは9p切り。竹内の河に目をやると4巡目に7pが切られている。序盤の牌の外側とはいえ、両面を固定しているケースも十分にあるが、7pを切った巡目で9pはすでに2枚切れ。将来的に苦しい待ちになる可能性があるのにここを両面固定はしないだろうということで9pをプッシュ。

読みと気合で踏み込んでいく、これが俺たちの学校のリーダーズ(生徒会長)である。

手牌を崩さず踏み込んだ結果、36pの現物待ち両面テンパイを組むことが出来た。これなら勝負する価値アリと8mをプッシュ。

竹内の親リーチに対して太田、村上も安全牌を切りながら粘りこむ形で手牌を維持しており、終盤に4人ともテンパイを果たすも、太田はリーチへの無筋を引かされてやむなく撤退。結果的にはハイテイで村上の当たり牌を坂本が掴み、2000点の放銃となったがテンパイ料との差し引きを考えればやむなしか。

東3局、東4局はそれぞれリーチ者の一人テンパイで流局となり、南入。
ここまで先制が取れるような手牌が来ず、受ける展開が続く太田。安全を担保しながら終盤に粘りこむような進行をするも、当たり牌や到底切れない危険牌を掴まされ撤退という我慢の時間が続く。

後半(南場)へつづく

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