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早朝ランのつづき

「見せたい場所がある。」なんと素敵な言葉だろうか。率直に言葉を発せられることは素敵だ。画面の向こう側には、澄んだ風景を背景に、朝日が輝いていた。もしぼくが素直で積極的だったら、ダイレクトメッセージで「今度その風景を一緒に観に行きませんか?」と送っていただろう。恋のエンジンがかかる予感がある。

手に収まる画面の向こうには、淡い光が差し込まれた住宅街やビルの谷間、大きな川の河川敷や海岸線が広がっていた。いま、自分の目の前から出ようとしている日の光と画面の向こうの風景がシンクロする。
そしてだれかが言った、「ぼくたちは、違う場所で同じ朝日を見ている。」

これは、PLANETSCLUBメンバーの企画したイベントの一模様だ。早朝にランニングをして、日の出の時間帯にZOOM上でそれぞれの風景を共有する。そのとき、日本各地の日の出がリアルタイムにシェアされていた。風景だけではなく、空気の音、さざ波の音、鳥のさえずりなどそれぞれの場所の複雑な情報が目と耳に飛び込む。どんな日の出のリポートよりも格別なものだった。


以下からは、京都市の一参加者の記録として記しておく。もし興味があったらのぞいてみてほしい。

5月2日24時就寝。25時頃に、前日に買った登山靴のサイズが気になり確かめる。靴のインソールが変わっていたことを確認して安心したので就寝する。
5月3日4時頃起床。アラームを鳴らして一度で立ち上がると気分がいい。支度をして目的地に向かう。メンバーが教えてくれた日の出の時間に間に合うよう走る。

目的地への道中、国道や、京都市中央市場を横目に通る。市場の早朝の忙しなさを少し感じた後、ほとんどだれも歩いていない暗い道路を走る。空は、薄明るく、滲んだ青い空に月が見える。東側からは、日の明かりが月を空を覆うようにしてもれていた。
早朝に意識的に出るのは久しぶりだ。大学のとき課題に取り組んでいた時、仕事で夜勤になった時、早朝の空を美しいと感じることはなかった。最近は、休日に漫画を読み耽っていると早朝になり、あぁ朝日かという程度の感覚だった。
道路を走る車は少ない。午前中でも、鳥はそこかしこにいて車や都市の雑音によってかき消されていることを知る。早朝は、大通りでもカラスやすずめが意気揚々としている姿が目に浮かぶ。
5時頃、朝日の時間丁度に目的地の桂橋に到着した。我ながらナイスな時間運びである。前日に、ベタではあるが朝日のきれいな場所を調べると、桂川近くがよいと書いてあったので桂橋を訪れてみた。太陽が徐々に昇ってきた。川の水面に朝日が焼かれ、光が流れていく。そして、朝日が東山の頂点から顔を出す。
早朝ランは、いつでも見える風景に朝日が差し込む。その間、生活しているまちをわがままに横断することができるのだ。

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帰り際に早朝の市場を訪れてみた。生の新鮮な魚や肉が溢れている。以前から、早朝の市場で働く人たちの胃袋を握っているご飯に興味があり、市場の住宅エリアにまぎれている定食屋でラーメンをすすることにした。おろしたてのしじみなど魚介類が使われているであろうスープは身体と心に沁みる。ついでにたまごかけご飯を食べてお腹が膨れてしまったので、そこからの帰り道は歩いて帰ることにした。

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