"鳴る"ライブハウスをつくった vol.3

第3回目の今回はSTIFFSLACK LIVE VENUEに導入した機材の面でのお話し第二弾を書きたいと思います。
第1回 ライブハウスの"鳴り”について
第2回 機材選定に関して。"メインスピーカー"編

音の"入り口"と"出口"を繋ぐ"ミキサー"

前回は最終的にお客さんに届ける"音"を出力するスピーカーに関してのお話しでした。(特に我々はこのお客さんに向くスピーカーのことを、"メインスピーカー"などと呼びます)
このメインスピーカーは最終的な音の"出口"です。そして、入り口はそう、"マイク"です。
バンドが演奏するステージ上には、1本のマイクで全てを集音しているのでは無く、各楽器、歌うアーティストの口の前に、何本もマイクを立てています。
それらを最終的なメインスピーカーに出力する前に、"ミキサー"と呼ばれる機材に集約させ、各マイクの音質、音量バランス、を調整し、文字通り"ミックス"した状態をメインスピーカーに出力していきます。(我々は現場で"卓"と良く呼んでいます。"コンソール"とも言います。)
ですので、このミキサーと言うのが音の入り口と出口を繋ぐとても重要な機材になります。そしてこの機材をどう触るのかが、我々サウンドエンジニアのスキル、個性、センスにかかってくる部分が大きいのも事実です。

Allen&Heath SQ-6 / 96kHzとは!?

こちらもいくつか事前にデモ機を使わせてもらった上で、Allen&HeathのSQ-6という機材に決めました。とはいえ、実際に触ってみたら即決でしたね。

こちらは96kHzで動いているので、音がとてもクリアで濁りが少なく、原音に忠実という事なんです。この96kHzという数字は画素数的な物と思ってもらえればイメージしやすいと思いますね。テレビでいうと8k!見たいな感じでしょうか。(もう少しちゃんと言うと、今多くのデジタルミキサーは48kHzで動いていて、これは1秒間に48,000回、音を計測してデジタル数値化しています。96kHzはこの48kHzの倍の解像度(再現度)、と言う事になります。ちなみにCDの規格は44.1kHzです)
今96kHzで動くデジ卓(デジタルミキサー)は各社のフラッグシップ(上位)モデルくらいしかなく、とてもとても手が届く機材では無かったのですが、このブランドは下位モデルでもそれを実現させてます。
更に、PCをつないで簡単にレコーディングができたりするとても多機能なモデルです。本当にコストパフォーマンスが素晴らしい。

鮮度の高い音を鮮度を保ったまま出力

ステージ上のマイクの音声信号は、ステージ上に置かれた2つの”StageBox”と呼ばれる機材に入力されます。合計で32回本分のマイクを入力できます。(将来的な拡張も可能です)
そのボックスに入力した段階で音声信号は早速デジタルに変換され、ステージ上から客席後方ミキサーの位置までLANケーブル(SOMMER CableのLANケーブルを採用!)で送られてくるので、音声信号の劣化がほとんど起こらず、鮮度の高い音をミキサー内で鮮度を保ったまま扱う事ができます。

そしてミキサーで調整された、まとめられた音声信号はデジタルのままPAスピーカーの近くまで送られ、アナログに変換され、(前回既出の)ハイエンドオーディオケーブルに乗ってスピーカーに入力され、スピーカーから大きな音として出ます。
入り口から出口までのロスを減らし、鮮度を保ったまま扱う事により、間違いなく再現性の高い、リアルで曇りのない音をお客さんに届けられるシステムなのです。
ですので、この音の通り道の機材やケーブルにギリギリまで予算を割いてコダワリました。

メインスピーカー=お客さん用
モニタースピーカー=アーティスト用

そしてバンドマンとしては重要なモニタースピーカーです。ステージ上の演者が演奏する際に聴くスピーカーですね。

"メインスピーカー"はお客さん用、"モニタースピーカー"はステージ上の演者用。これ、別々に調整してるんです。
お客さん用のメインスピーカーからは当然全ての音が混ざった、バンドの音が出てきます。
一方モニタースピーカーは、例えば…
・ボーカリストには自分の歌声と、音程が取りやすいようにギターの音を大きめ
・ドラマーはステージの一番奥に居るので、ギターとベースの音、ボーカルの音、を大きめに

と言ったように、それぞれのアーティストが演奏しやすいようにモニターバランスをリハーサルで決めているんです。

モニタースピーカーは大定番のパイセンたち

メインスピーカーとミキサーにギリギリまで予算を使いたかったので、モニターは初めから中古を探そうという事で進めていました。
そこで弊社スタッフが私物として持っていたスピーカーと、(有)PAINTBOXさんのパワーアンプをご厚意により譲り受ける事ができました。
本当にこれには改めて感謝です!!ありがとうございました。

バンドのモニターの大定番 ElectroVoice FMシリーズの1202と、同ブランドのEliminater。パワーアンプはCREST AUDIO 4801。もう20年に渡ってこれらのモデルは大定番としてステージの音を支えてきている、間違いない機材たちです。
どんな爆音のバンドでも足元からドラムとボーカルがガッチリ返ってくる、そんなシステムになってます。(ただ、あまりにも爆音で鳴らすと、スピーカーがぶっ壊れるので、常軌を逸した爆音モニターはご勘弁願います…笑)

ここまでの話はあくまでも"プラン"
これからの日々のライブで"音"は創られていく

ここまで散々コダワリをお話ししましたが、本当に正直な話、実際にお客さんが入った状態でバンドが演奏してみないと、本番での音の鳴り方がどうなるのかは我々もわかりません。

実はこんな鳴り方に変わるんだ!と思ったことは何度もあります。
また、ライブをしている時のステージ上の”やりやすさ”などもアーティスト本人たちにしかわかりません。
なので、何度もライブを重ねていく事で、細部を更に改善していきます。

音は常に変わっていくと思います。これがライブスペースの面白さです。

僕自身は東京に居るので、そんなに頻繁にいくことも出来ません。なので、久しぶりに行った時にどう変わっているかが楽しみです。
実際に行ってみたり、出演した方、是非感想をお聴かせください!

コロナ禍に於けるライブカルチャーの未来

なんだか外の世界は一見、元に戻ったかのような景色ですが、我々の周りだけ取り残されてるかのような感覚になる事があります。まだまだ通常の公演、ライブができるまでは遠い道のりになりそうです。ですが必ず来るその時にこれまで以上の最高の経験ができるように、沢山の人たちが準備し続けています。楽しみにしていて下さい!

やっぱり信じてるし、諦める事はできないんですよね、音楽含め”カルチャー"が誰しもの生活に必要なモノで、それが色んな側面で生活の支えになるという事を。

長々とした文でしたが、読んで頂きありがとうございました!

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