"鳴る"ライブハウスをつくった vol.2

前回のvol.1に引き続き、今回はSTIFFSLACK LIVE VENUEに導入した機材の面でのお話しを書きたいと思います。

"鳴り" = "アコースティック"

前回はライブハウスの"鳴り"に関してお話ししました。
我々はこの"鳴りや"響き"の事を"アコースティック"と呼びます。
少し音楽演奏する方ならお分かりかもしれませんが、例えばギターで、ケーブルを差さずに"鳴る"ギターを"アコースティックギター"、ケーブルを挿して"電気の力"で音を大きく鳴らすギターを"エレキギター"と言ったりするように、"アコースティック"は生の"鳴り"という事なんです。
このアコースティックな面は、実は我々"音響屋さん"の専門外なので、部屋の設計、施工は専門の会社が入る事がほとんどです。我々はその後、機材の設置、調整で活躍します。

機材と左手は"添えるだけ"

ここまで言った所で、私が言うのも何なのですが、ハコ自体の"鳴り"というのが一番大事なので、正直、機材は本当に添えるだけで良いんです。桜木くん。
その上で、細部までこだわったプランニングをさせていただきました。
STIFFSLACK LIVE VENUEの店長 竹岡(タピ)くんと最初に話していた頃は、ライブスペースの規模が小さくて、今よりも簡易的な音響で進めていました。
大きなCDショップなどで行われる"インストアライブ"みたいなイメージでしょうか。
でもいよいよ図面も出てきて、諸々情報が見えてきた頃、”しっかりライブスペース!”というイメージに変わったので、ガツっと音響組みましょう。と、グイっと方向転換しました。

そこから予算の比重をどうするのかを決めていくんですが、何と言っても一番大切なのはお客さんに届けるためのスピーカーだよね、という事で何パターンかで検討を始めました。
最終的に2ブランドまで絞り、今年3月、出来たての部屋にスピーカーをセッティングし、バンドに演奏をしてもらい、試聴会を開きました。
CDを流して聴くだけだと、大体のプロ用スピーカーは"良い音"というイメージで聴けます。実際にバンドに演奏してもらうと、その場で演奏するバンドの音と"どう混ざるか"や、"ステージの中のアーティストはどう感じるか"など、実際の営業をした時のイメージがつきやすく、また、とてもハッキリと各ブランドで違いが出ます。とても贅沢で有意義な試聴会でした。

試聴会を経てSTIFFSLACK代表の新川さん、タピくんと改めて悩んだ末に決めたのが、今回導入したのがdB Technologies VIO X15/SUB918というスピーカーです。(輸入代理店のTASCAMさんのWEBページで、導入事例として取り上げていただきました)

dB Technologies VIO X15 / SUB918

dB Technologiesというブランドは比較的最近のイタリア発のブランドで、このモデルは昨今主流である”アクティブスピーカー”という種類になります。通常スピーカーを大きな音で鳴らすためには、音声信号を電気的に増幅させる”パワーアンプ”というものが必要で、これまではパワーアンプとスピーカーは機材として別々に用意するという事が定番でしたが、最近は一体型が増えています。さらにはDSP(Digital Signal Prosessor)という頭脳を搭載しており、少々雑に言うと”イイ感じにスピーカーが鳴るようにアンプや音声信号を調整してくれるヤツ”です。
これらがスピーカーにオールインワンされている事で、そのブランドの個性が出やすく、音に統一感があり、更に効率よく音を出す事ができるわけなんです。そして何よりコストダウンに繋がります。

また、LANケーブルでPCと繋げば、全てのスピーカーの設定や、どれだけパワーを使っているか、どれだけ熱を持っているか、などの管理が可能です。

そして肝心の音ですが、良い感じに”今っぽく”ないんです。
昨今のPAスピーカーは解像度が高く(音の再現度が高い)、音の分離感が良い(一つ一つの楽器の音がハッキリ聴こえる)、スムーズな高音と豊かな低音。という感じですが。dB Technologiesは一体感のある中域〜高音にパンチの聴いたロー感です。"洗練されたワイルド"と言ったところでしょうか。

このハコで鳴らすことを考えた時に、ステージ上の音とPAスピーカーが混ざった音をお客さんは聴くので、”バンドの生音との馴染み感”はとても重要だろうと。そうなるとこのキャラクターはバンドの音より前に出過ぎる事がなく混ざり合い、さらにバンドサウンドの芯となるボトム(主に低音)の音を補強してくれる音になるだろう、という事です。

スピーカーを設置する台もオリジナル物を製作

そしてこのコロナで時間が有り余ったのでオリジナルのスピーカースタンドも製作しました。(あたかも自分が作ったように言ってますが、K&N AUDIO 上原さんの設計、製作です。ありがとうございます!!)これにより更に低音〜高音の一体感が生まれ、(いつか)お客さんがパンパンに入ったとしても、後ろまでキッチリ音を届けられるように設置できました。

画像1

ケーブルにもコダワリ

更に細かいコダワリなのですが、スピーカーに繋がる音声ケーブルにだけ、ハイエンドなケーブル SOMMER CABLE GALILEO 238 Plusを採用しました。これにより音の輪郭がクッキリと出てスピーカーのポテンシャルを更に1.3倍くらい向上させていると思います。(私はこの*SOMMERの信者でもありますので、信じるか信じないかはあなた次第です。しかも定番のケーブルの7倍も高価なんです…)

*SOMMER  CABLE…ドイツのケーブルメーカーで、弊社がライブ現場用に所有しているケーブルのほぼ全てがこのブランドです。

続きはまた次回

ここまでがお客さんに直接音を届ける"スピーカー"についてでした。
一番予算も割き、吟味してこだわった部分でしたので、これだけでも思わず長くなってしまいますよね。

次回はその他の、ライブハウスの音を作っていく機材たちを紹介したいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?