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複合危機・ジェノサイド~2023年を振返る~


 2023年は、エポックメイキング(epoch-making)な年のような気がしています。

(1)ポリクライシス(複合危機 polycrisis)

① 気候危機

 今年は世界的に滅茶苦茶めちゃくちゃクソ暑い夏でした。世界気象機関(WMO)によれば、2023年は間違いなく記録上最も暖かい年となり、今年の平均気温は、産業革命より前と比べて約1.4℃上昇したとのことです。(参照:NATIONAL GEOGRAPHIC 2023.12.24 「2023年の環境にまつわる重大な出来事6選、希望の光も」⇒ https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/23/121900641/?P=1 )

 もう、気候問題、気候変動、地球温暖化というレベル(level)ではなく、ラベル(label)が変わってしまって、気候危機、地球沸騰化へと飛躍的に地球の危機が深刻化、拡大した年でしょうね。
 自分が子供の頃、まさか地球がぶっ壊れそうになるとは思いませんでした。孫たちの時代の地球はどうなっているのでしょうか?とても心配です。
 資本主義体制が続く限り地球の未来、人類の未来は暗いです。
 斎藤幸平さんを真似ると「資本主義は、人類の住む惑星の物質代謝に深刻な亀裂を生じさせてしまっている」という感じでしょうか?
 資本主義の基本的態度は「大洪水よ、我が亡きあとに来たれ」という超無責任なものです。この表現も斎藤幸平さんの著書『大洪水の前に-マルクスと惑星の物質代謝』(角川ソフィア文庫)からのパクリですが・・・
 人類は脳天気なもので、目先の利益、経済成長を目指して驀進中《ばくしんちゅう》(日本は、掛け声だけ驀進中ですが・・・)です。
人類は「茹でガエル症候群」におちいっています。

② ポリクライシス(複合危機)

 

ポリクライシス

 気候危機だけでも深刻なのに、この気候危機と政治危機、そしてその政治危機の延長線上にある戦争、そしてエネルギー危機、食料危機などが連鎖して、雪だるまのように問題が複合化し深刻化していくポリクライシス(polycrisis:複合危機)へと新次元の危機に明らかに突入してしまった2023年だと思います。

 日本も含め、多くの国で民主主義が衰退し、格差拡大、分断化が進むと、政治は極右化傾向を強め、仮想敵国を作り出し、国内の不満を敵国への憎悪へと転換することに血眼ちまなこになります。
 その結果、例えばウクライナ戦争のような戦争が起き、エネルギー危機、食料危機に連鎖していきインフレが加速し、格差が拡大し、気候危機への対策が遅れてしまいます。そして、気候危機による食糧危機がより深刻になれば、大量の難民が生まれ、その難民が極右政権の台頭を後押しして、さらなる民主主義の危機を引き起こす。 まさに負のスパイラルです。
 2023年は、クソ暑すぎる夏のせいで、気候危機、戦争、新たなファシズム、インフレ、格差の拡大等々、深刻な問題がお互い絡み合って進行していくポリクライシスの時代に突入してしまっていることが誰にでもわかるようになった、エポックメイキングな年だと思うのです。

(参考:TBS NEWS DIG 2023.11.06斎藤幸平氏が警告する「ポリクライシス」イスラエルにロシア…危機が危機を呼ぶ時代とは【報道1930】 https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/819080?display=1

③ ポリクライシスの原因は資本主義

  ナンシー・フレイザーは、気候危機が労働者の権利否認や、社会再生産・ケア労働などをないがしろにする社会的傾向と密接につながっていると指摘しています。

 「不安定な生計や労働者の権利の否認。社会的再生産に対する公的支援の削減や、ケア労働に対する慢性的な評価の低さ。特定の民族や人種に対する帝国主義に基づいた抑圧、ジェンダー支配と性支配。土地や財産の剥奪、追い立て、移民排斥。市民の武装化、政治的権威主義、警官の暴走。これらの問題は明らかに、気候変動と密接な関係にあり、気候変動によって悪化する。」

ナンシー・フレイザー2023「資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか」江口冬子訳(ちくま新書)p138

 そして、この気候変動の原因となっているのが資本主義だと指摘しているのです。

 「資本主義は気候変動の社会的歴史的な推進力であり、それゆえ中核を成す制度化された原動力である。」

ナンシー・フレイザー2023「資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか」江口冬子訳(ちくま新書)p139

 紹介しました、ナンシー・フレイザーの本の英文原題は『Cannibal Capitalism』です。直訳すれば『人肉を喰らう資本主義』です。
 そして、ポリクライシスの原因はこの貪欲な資本主義なのです。

 2023年、この貪欲な資本主義は、ケア労働をおとしめ、社会保障費を抑制しようと介護保険制度の改悪を画策してことが明々白々となりました。

(2) ガザ地区・パレスチナ人へのジェノサイド


2023.11.18 ガザの攻撃(ジャーナリスト志葉玲氏提供)

 今年、とてもショックなのは、温かい部屋でコーヒーを飲みながらネットやテレビでジェノサイド(genocide)を茫然ぼうぜんと観ている、情報を消費している自分に気づいたことです。イスラエルによるガザでのジェノサイドを怒りと共に諦念を持って、他人事として茫然と又は漫然と見ている自分が情けないです。

 アントニオ・グテーレス国連事務総長は『パレスチナ自治区ガザの悪夢は人道的危機を超える人間性の危機だ』とさえ言っていますが、この「人間性の危機」という言葉には考えさせられました。

(参照:CNN 2023.11.07 https://www.cnn.co.jp/world/35211161.html

 ミシェル・フーコーは近代以後に現われた「人間」の時代が遠くない未来に終焉すると予告していたと言います。
 2023年、ガザで起きているジェノサイドはこの「人間」の終焉を予感させるものです。
 ガザの悲劇を寛ぎながら漫然と消費する私にも、「人間」の終焉が忍び寄っているようです。

(3)たとえ暗い時代でも笑いを!

① 2023年はティッピングポイント(tipping point)超えか?

 人類は、他民族や地球と共存できない存在かもしれない、と思わざるを得ないような年だったと思います。
 気候危機に関する用語にティッピングポイントという言葉があります。
 これは、物事がある一定の条件を超えると一気に拡がる現象を指し、一般的には「転換点」と訳されています。要するに、小さな変化や動きが積み重なって、突然、巨大な変化を起こすポイントのことを指す言葉です。
 2023年、人類と地球は、色々な意味で、このティッピングポイントを超えてしまったのではないかと心配しています。
 地球や他者と共存できない人類の未来は非常に暗いように思えるのです。

② 2023年は暑くて暗かった!でも、笑おうよ! 

 私にとって2003年は、気候危機、ガザでのジェノサイド等々、不条理満載で暗い年でした。
 それでも、今を味わい楽しむことが大切です。
 新年を迎えるに当たってチャップリンのエスプリに富んだ笑える話を一つ紹介します。昔々の無声映画の時代の話ですが・・・これが私の笑いネタ・ベストワンでした。

When Albert Einstein met Charlie Chaplin in 1931, Einstein said, “What I admire most about your art is its universality. You do not say a word, and yet the world understands you." “It's true.” Replied Chaplin, "But your fame is even greater. The world admires you, when no one understands you.

Google翻訳 
 1931 年にアルバート アインシュタインがチャーリー チャップリンに会ったとき、アインシュタインはこう言いました。
 「あなたの芸術について私が最も賞賛するのは、その普遍性です。あなたは何も言わないのに、世界はあなたのことを理解しています。」
 チャップリンはこう返しました
「それは本当です。」
「しかし、あなたの名声はさらに大きいです。誰もあなたを理解してくれなくても、世界はあなたを賞賛します。」


Charlie Chaplin with Albert Einstein at the premiere of City

2024年度は良い年となりますように。


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