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これが「番茶も出花」なのか?(容姿コンプレックスOrigin6)

これが出花なの?

 高校生になり、番茶も出花のプロローグを迎えたあたしの混迷、のつづき。

 このころ覚えているのは、”新入生女子を品定めする上級生男子の儀式”です。お顔に自信のない女の子にはうんざりな現象ですが、どこの学校でもたぶんあるよね。彼らは入学式の集合写真を手に入れて、あれやこれやと集団でさわぐのです。

 その高校には、あたしの出身中学の先輩で、中学時代に「何でも出来て運動が抜群で優しくて面白くて」これ以上はないというぐらいにモテモテだった男子がいました。その人が写真にあたしの姿を見つけ、「この子がマブイ」という、極めてうっかりした発言をして、みんなに「えー?なんでこれが」と一斉ブーイングを浴びた、という噂がどこからか伝わってきました。

 ああ、先輩ったらバカ。

 その人は小さいときからあたしを知っており、何かとかわいがってくれていたのです。同じ学校になって単にうれしがってくれたのでしょうが、彼の発言は女子の注目を集めるのです。
 彼が言ったんでなければそんな発言は「蓼食う虫も好きずき」ちゅうことで、みんなも忘れて通り過ぎたでしょうに、ご丁寧にあたしのところまで伝わってきたわけです。「ブーイングを浴びたのに、あくまでマブイと言ってがんばった」という解説つきで。

 言っておこうか。
 伝えた人も意地悪だと思います。

 
ついでに何人か知らない人があたしを見に来て、「ありゃ、ほんとにブスじゃん」と言う態度で安心して(?)去っていく、ということまで・・・・って、あれはそうだったんじゃないのかしら?というようなこともありました。もちろん確かめたわけじゃないから、自意識過剰系の勘違いかも知んないです。ふん。ごめんね。ひがみっぽくて。

 相変わらず母の不満足がグリーンチリソース並みに効き、自分の姿形に自信がなかったあたし。しかもこの高校で一週間も過ごしたあたりで、もっとヤバイことに気がつきました。

 「もしかして、ここには、あたしよりばカな人は、ほとんどいないのでは?」

 当時の進学校の現状を考えると、この洞察は正しかったかと思います。
 あたしはもうすでにやたらと絵を描いたりものを書いたりする立派な変人へと成長していました。相対的に成績は急落しまして、進学校においては、所詮”なんちゃって優等生”だったのね、ってことが白日の下に曝されました。(バカ女が嫌いな父はしばらくの間怒り狂っていました。ごめんなさい。パパ)
 
 もはや色の白さやパッチリしたお目目やすらりと伸びた肢体の代りとしておばちゃんたちが引き合いに出す美点(?)「お勉強ができる」も無い。
 この危機の中、母の「番茶出花予言の刷り込み」もその邪悪な根を張ったままでした。

 あたしは怯えていたのだと思います。
 「どうするのさ。頭悪いこともばれたし、ピアノもやる気がなくなった。絵だって、あたしよりうまい人が学年に2人(独自調査)ぐらいはいるじゃんよ。こんなんでおそろしい世の中を渡っていけるのか?もはやあたしには出花しか残されていないのか?」

男女はあっさりと平等だったのに

 世の中は進み、「女性をモノのように扱うのはけしからん」という雰囲気にシフトしていたし、校内ではほんとに全くあっけらかんと男女平等が成立していました。
 男性の友達は女性の友達と同列でした。あたしはもともと、男子の友達には数も質も非常に恵まれておりました。 


 それでも、というかそれだからこそ、怯えはおさまりませんでした。
 「いい男は全部友達だぞ。友達は異性とはちがうから、あたしも恋したりしないし。っていうと、あたしの出花の相手ってどういう奴?」
 
 親戚のおばちゃんたちは、相変わらず、「器量さえよければ逃げ場があるけどねえ」といった価値観をもって、こちらをぐいぐい押して来ていました。逃げ場。せこい言葉だ。
 「女の小利口っていって、少しぐらい賢くてもかえって嫌われるんだから」とか。ああ、嫌な想念だ。嫌な言葉だ。女の小利口。
 あたしの体重はもはや標準の域でしたので、「もうちょい」といった態度のおばちゃんもいました。

 それらは悪魔のささやきですね。今から思うと。
 たとえひとりでも生きていける世の中になり、それを選択する力があったとしても、女性は耳元でこうささやかれるのです。
 「男と競争するより美貌にモノを言わせるほうがラクよ」と。(ラクってどういう意味?)
 「かわいいだけで、一生食べさせてもらえるんだから」(ほんとかよ?)
 「美貌がなくても、”番茶も出花”があるから」(謎)
 括弧内は、あたしの抑圧された素朴な疑問です。

 こうした中で、突然あたしに恋が訪れました。今から思い出しても、とんでもなくアホーなきっかけで始まりました。
 あたしが影響を受けまくっていたクラスメイトの女の子が、とある男子に注目していたのです。あたしは彼女につられて注目を始めました。

 そいつは、珍しく、全く友達になれそうもないタイプの男子でした。

 どの程度書こうかと迷いながら一応まだ続く。

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