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美貌の代わりになるもの(容姿コンプレックスOrigin 4)

容姿のコンペンセーション

 容姿コンプレックスの話のしつこい続き。

 母方の親戚がお顔の話などするのが好き、という話を書きました。これは、あたしがそう感じるだけで、あるいは普通のことなのかもしれません。
 父方の親戚もその語彙はだいぶ違うけど、やっぱり子供の容姿の話はしていたからです。
 つまり美しい人たちも、そうでもない人たちも、お顔の話などは等しくするわけですね。

 法事などで集まると、おばさんたちはあれこれ子供たちの成長について話あいます。
 大きくなった、キレイになった、だれそれに似てきた、だれだれにもこの辺が似ている、将来が楽しみだ、そのだれそれは若い時はそりゃあキレイだった、だれにみそめられて大変だったもんだ、そういえばあの人だってかっこよかった・・・・・などと果てしなく話は枝葉が伸びていくものです。たぶんそういう話って楽しいのでしょう。

 あたしはあんまり大人の話に割って入らないよう、しつけられていたのですが、そのかわり、よーく彼らの話を聞いていました。それで、ある時気がついてしまいました。

 おばさんたちはお互いの子供の話をする。お互いの子供のことを褒める。いとこたちは、それぞれ色の白さや、はっきりした顔立ち、すらりと伸びた体つきなど、その血族が誇っている特長を褒められているけれど、あたしの話になると微妙にそれがずれるってことに。

 母はあたしが肥満していることを問題視していませんでしたが、いとこたちや、叔父叔母たちはやっぱりちょっと「問題だ」と思っているようでした。なぜなら、そのことには触れないのです。傷つける可能性があると考えていたのかしら?欠点についてはあからさまには言わないのです。基本的にはそれぞれ、いいところを褒めあう、という儀式なのですから。

 それで、あたしについて褒められている事柄は、みごとに容姿からははずれたことばかりでした。
 「○○ちゃんは色が白くて顔がかわいい。かわいくて目立つので、あんまりしっかりしていないのにクラス委員にされてしまったそうだ」という話をしていて、話があたしのところに来ると、
「あの子は勉強ができるからまたクラス委員なんでしょう」
とかになる。

 △△ちゃんが、ますますキレイになっていく、将来は何になるのかしら?という話をしている文脈で、あたしの話が出ると
「あの子はピアノがますますうまくなった。音楽の先生になるかもしれないね」
などの話に”ねじれ”るわけです。

 あたしは、なんかへんだなー?と思うわけです。

 おばさん、どうしてそこにいくのか?
 あたしの見かけには何ら褒めるところがないのかい?
 というか、勉強とかピアノってのは、容姿の代わりになるものなのかね?それは並列に論じていいものなのかね?
 作文とかだと、「流れと関係ないことが入っていますから、段落をあらためましょう」とか言われちゃうネタだぞ、それ。

 こういうことはじわじわとあたしの中にしみてきます。
 たぶんおばさんたちは思っていたのだと思います。「あの子、せめて太っていなければマシなのに」
(それは、後年になって、あたしが痩せてきたときに、従姉妹の一人に「心配してたけど、安心した」と言われたことからもわかります。)
 だけどそれはロコツすぎるし、母を傷つけるから言えない。 それで、何とか褒めようと思うと、そういうわかりやすいネタに行くしかなかったのでしょう。

 だけど、これらの言われようには例の”有名な価値観”から出ているメッセージが潜んでいます。
 曰く、「キレイな女は玉の輿に乗れるからいいけど、売れ残りそうな女は何か能がないと生きていけない。男に食べさせてもらえないんだから」
 言いたくはないけど、当時のオバサンたちが、そういう価値観の残滓を持っていたことは事実だと思います。
 
 大丈夫よ、あの子は器量は悪いけど、能があるから生きていける。
 あたしはそんな風に言われているのと同じでした。
 それじゃ、女というのは、キレイだったら、何にもできなくてもいいと思われているのか?だとしたら、女ってなんなのだろう?結婚ってのはなんなのさ?

 なぜだか女性解放運動のにおいをさせつつ続く。

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