まだいけない_onda_mystery

番茶も出花暗示の結末は(容姿コンプレックスOrigin10)

予言はある意味当たってしまい

 「17歳ぐらいになったら、番茶も出花というのが来るから、そのときに求婚されたらさっさと婚約をしてしまいなさい」
(詳しくは過去のnote:番茶も出花は呪いの言葉(容姿コンプレックスOrijin5 https://note.mu/syndi/n/nf7fd56e061cc )

 この、母の呪いのような予言は、しかし、ある意味当たっていました。
 件の注目男子は結婚という言葉を口に出していたからです。
 チューニングを完璧にしてコミュニケーションを取ってみた結果、「これは相性が悪すぎなのではないか?」という結論に・・・どうしても行き着きそう、という予感を秘めつつもってことだけど。

あたしたち、17歳でした。
高校生のくせによお。

 「何?やっぱりこれが出花なわけ?」
 「ここですかさず婚約ってのをしておいたほうが人生安楽なのか?」
 「器量の悪い女はこれ以降どんどこ不利になっていくだけなのか?」

・・・と一瞬思ったんだけど、あのね、よく考えてみたら、出花が出てる時に求婚してくる人は一人きりであるとは限らないんだよね。
 一人きりではなかったんだよね。実際。

 それから、そんな時期に男の人を選ぶ能力があるかどうか、わかりゃしないではありませんか。普通、ないんじゃないかなあ?どうすりゃいいわけよ?その場合。
 
 だけど、注目男子の求婚というのはとりわけやたらと具体的で、何年も先に至るまで計画されており、子供の数とか、その男女の別まで決めてあったりして、こちらを非常にあせらせるものを持っていました。

 おい、そこまで決めておいたら窮屈だろうが!
 そんな細かいことを設定していないで、まず君にとって「結婚」とは何か、定義してみよ!「子供」とは何か?「家庭」とは?「男」とか「女」も定義しなおせ! あたしが日本語をチェックしてやるから!きっと、また日本語が狂っているのにちがいない。

 そのように思いつつも、あたしは控えめに応対していました。もしも、これがほんとに母の「予言」の時の到来だったら恐ろしいからです。
 だけど、皮肉なことに、彼の結婚観があたしのそれとズレズレにズレていたことが、結果的にあたしの頭を冷やして行ったのです。

 頭が冷えるのに、かくも時間がかかったところに、母の”呪いの言葉”の恐ろしさがよくあらわれています。
 普通だったらここまで話がズレる人と2年以上付き合ったりしないよな。あたしフツーじゃありませんでしたね。

さよならはお礼の言葉

 あたしたちはもう大学生になっていました。それぞれの大学に行っているから、週末しか会えません。
 だんだんチューニングがしにくくなっていきました。
 それから、彼の暴力的に具体性のある”計画”は、二人がまじめに話しあえばあうほど、がったんがらがら、こっぱみじんなりました。

 思えばあたしは彼の”ことば”をことごとく破壊していたのです。繰り返し繰り返し、壊していました。
 彼は何度もそのかけらを集めてはもう一度組み立てなおしていました。通じるように。もっと通じるように。わかり合えるように。

 あたしは、それをまた壊してみせて、壊れていることを彼にわからせるために、彼の周波数にあわせて発言していたのだと思います。「それでは通じないよ」と。
 でも、ずっとその周波数で暮らすことはできません。
 そんなに苦労しなくたって、分かり合える人間関係がいくらでもあったからです。

 あたしと会うまでは、彼は自分のことをずいぶんと頭のいい男だと思っていたそうです。頭がよすぎて人と通じ合えないと思っていたのでしょうか?
 だけどそうじゃないことがわかって、「真人間」になった、と、また不思議な日本語で語りました。これはお礼の言葉だったんだろうけれども、お礼なんか言われちゃったってどうすりゃいいわけ17歳のの女がさ。

 真人間になった彼はあたしと別れることを決心しました。
 別れることに異存はなかったです。
 あたしも多くを学んだし、力をつけていました。
 自分とは異質な人間と真剣に向き合ったために、自分ってものの、どうしても譲れない一線みたいなものもわかりました。
 チューニング能力だけでなく、自分にあった男の人を選ぶ目も、格段に発達していたかと思います。
 彼のほうも、そうだよね。

 しかし、こういったストーリーを彼と共有できたとは思っていません。
 彼には彼の物語が独立してあったのだ、と思っています。
 それはあたしの物語とあんまり重なっていないのかも知れない。あるいはまったく重なっていないのかも知れません。

 そして、彼と、彼と過ごした時間は、やっぱりあたしの抱えていたコンプレックスを癒すものではありませんでした。
 あたしはひとりになって、とてもとても不安でした。

 まだ続く。

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