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#31. 勘違いしてはいけない「そのままの貴方で良い」の意味

今日は、世で、都合良く解釈されがちな「そのままの貴方で良い」という言葉について考えてみたいと思います。
この言葉を言われたらとても心地良いし、対話において信頼関係を構築する素敵な言葉だなと私も思います。
しかし、それを「成長する必要も無い」「努力する必要も無い」「他人に嫌な思いをさせてしまう自分もそのままで良い」と受け取られたら困りますよね。
実際、そう受け取られてしまい困った経験をした人材育成に携わる方も多いのではないでしょうか?少しばかり乱用されがちなこの言葉について再考しましょう。

そんな風に受け取られるのには、幾つかの理由があります。
1. この言葉を聞いた人が、現状に満足している場合、それ以上の成長や変化を求める必要性を感じなくなる。

2. 変化や成長には努力が必要であるにも関わらず、努力を避けるためにこの言葉のまま「そのままで良い」と解釈し、自己成長から目を逸らしてしまう。楽な方に流れてしまう。

3. 自己受容は重要ではあるが、「そのままで良い」という言葉が、自己受容と自己改善のバランスを誤解させてしまう。

また、このメッセージは、パフォーマンスコーチングが必要な相手とセラピーが必要な相手では、異なる意味を持っています。

1. パフォーマンスコーチング: 自己受容を基にした上で、自己向上を促すメッセージです。自分の強みや独自性を認識し、それを活かして目標達成やパフォーマンス向上を図ることを指します。コーチングでは、個人の持つポテンシャルやリソースを最大限に生かすことを重視し、自分自身をより良く発展させる方法を探求します。

2. セラピーの視点では、「そのままの貴方で良い」というのは、自己受容と心の癒しに重点を置いたメッセージです。トラウマや心理的な問題、内面の葛藤に対処する過程で、自己の本質や感情を認め、受け入れることが重要です。セラピーは、自己理解を深め、内面的な平和や精神的な健康を取り戻すプロセスをサポートします。

つまり、パフォーマンスコーチングは「現在の自分を受け入れつつ、更に成長するために」という意味合いが強く、セラピーでは「自分自身を深く理解し、心の問題を解決するために」という側面が強調されます。

しかるに、人材開発に携わる方は、この言葉を使う際には、相手が今、どんな状態にあるのかをしっかり見極めた上で、適切にその背後にある意図や文脈を明確に示すことが重要です。
また、個人の成長と自己受容のバランスを取りながら、ポジティブなフィードバックと建設的な批評を組み合わせて伝えていく必要があるのです。

仏陀は、同じ質問なのに、人によって違うメッセージを発していたそうです。一見、一貫性が無いとか二枚舌と思われるリスクを感じますが、受け取る側の状態を把握した上での、相手にとって適切な伝え方をしていたのだろうと言う事が察せられます。

自己実現を目指せるステータスに在る方に対しては「既に頑張っていらっしゃる。その能力を使ってプラス1パーセントの努力を積み重ねる事で人生が飛躍する」とか「貴方の存在には役割がある」事を伝え、癒しが必要な方には「そのままの貴方で良い」と共感を伝えるのが良さそうだと私は考えています。

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