オンライン1on1を「声だけ」にしたらメリットしかなかった話。
「まだオンライン1on1、Zoomでやってるの?」
大袈裟にいうとこんな一言を謳い文句に、とある「1on1」の手法を提唱したい気持ちでいっぱいになったのでこのnoteを書いています。
提唱したい対象は「1on1」を積極的に実施する側、マネジメント・リーダーシップツールとして使う側の「リーダー・マネージャ・上司」向けです。
まず結論から書くと、ウィズコロナ・オンライン前提のコラボレーション時代において1on1は「音声通話」でやった方が以下のメリットがあると思うに至っています。
1. 視覚からのバイアスが無くなり「声のトーン」で調子の良し悪しに気づける
2. 「絵」を共有しないので、いつでもどこでも何をしていてもお互いリラックスした状態で実施できる
3.「声」だけだと準備が楽で、実施のハードルが下がり継続性が増す
もちろん時と場合によりますが、意外と良いぞ、音声だけも!というノリで最後までお付き合いください。
1on1のマインドセット
ここでいう「1on1」は広義の「メンバー・部下との定期面談」という意味合いではありません。もっと「1on1」の本質に沿って位置付けると
・100%メンバー・部下のために設ける時間であること
・目の前の仕事の障害になっているものを取り除いてあげること
・問題があれば解決策を一緒に考えること
・問題・課題に対して自分にできることが無いか手を差し伸べること
・必要に応じて適切・的確なフィードバックを与えること
・勇気付け、励まし、やる気を引き出すこと
こう言った事が目的の時間です。決してマネージャ・上司が業務の指示をする時間ではありません。
コロナ禍の原体験
今年の春、緊急事態宣言によってリーダー・マネージャー陣は本当に苦労、気苦労が多かったと思います。完全出社しない前提で、とは言えメンバー・部下のケアは継続して続けなければいけない。
私も週に3〜4本は1on1をしているので、当然全てをオンラインに切り替える中で、せっかくだったら散歩・ランニングしながら1on1しようと思い立ち、「コロナ禍の運動不足解消問題」との連立方程式の解としてFacebookの音声通話のみで1on1を実施することにしました。
「画面」を共有するというのは、思った以上に構えるものですね。勝手知ったる仲ではあるものの、さっと音声で繋ぐ簡易さと比べた時にその小さなハードルがクリアに課題認識されました。人によってこのハードルの大小はあると思いますが、これが取り除かれるのは素直に良いなという実感です。
そして当然天気の良い日は散歩、軽いジョギングでリラックスしながらメンバーとの会話に向き合えた(少なからず私は)貴重な時間だった気がします。
その後週に1度、毎週火曜日に出勤するようになってからは1on1はその日に集中して入れることにしました。やはり直接合って面と向かって話すことにこしたことは無いなと思っています。とは言えやり方は、基本的にウォーキング(散歩)1on1でこちらも「対面」よりも「併走」スタイルの方が本音で話やすいのでオススメ。
そんな中、1名は遠方の仙台のメンバーなので今でも継続して音声通話での1on1を実施し続けています。ここでの学びも含めて、最初の結論に繋がっています。視覚情報が無い分、声のトーンの変化に敏感になります。音声だけの方がかえって会話に集中できます。他の情報や感覚で補完することができないので、じっと声に集中する・聴き入るという感じです。音声だけなので移動中でも気軽にサクッと実施する事ができます。結果、毎週30分しっかり継続して実施することのハードルがグッと下がりましたし、何よりしっかり「寄り添う」ことができているように思います。
コロナ禍における1on1の重要性
「1on1」の定期的な実施、もっと言うと「質の高いコミュニケーション」の維持・改善はここで深くを語るまでもなく、その重要性が高まっています。
はたらく環境の変化でリーダー陣が把握できない現場のストレスが増加し、「必然の業務オンラインコミュニケーション」が中心となり「偶然のカジュアルカンバセーション」が希薄となっています。緊急度の濃淡含めて、シリアスもカジュアルもひっくるめて全リーダー陣がメンバー・部下と定期的にしっかり向き合うこと、困った事があればヘルプすることの徹底はこれからの健全な組織運営において日に日に重要度が増していると思います。
いや、今までも十分にその必要性があったのですが、全リーダー・マネージャー陣はもう逃げ場なくそういったリーダーシップを自らのワークスタイルに取り入れないとチームマネジメントを誤魔化しきれなくなってきているわけですね。
そんなニューノーマルなワーキングスタイルの環境下で、マーネージャ・上司が「1on1」というツールを活用する時に大前提としてひとつ重要に思うのが
「短い時間でも頻度高く継続すること」
だと思っています。個人的な感覚は最低でも週1回30分の定期スロットで実施すること。それほど話す内容がなければ、5分でも10分でも打ち切れば言い訳です。逆にそのスロットで収まらなければ延長する。また、投げかける問いのフォーマットは固定にした方が良いです。そうやってなるべく定期、固定、フォーマット化することでマネージャ側の実施ハードルを下げます。かつフォーマット化というのは「1on1」の質を一定ライン以上に保つことができるんですね。個人的には最近「型」を離れてフリーフォーマットでやっていますが、好んで使っていたのは前職の同僚に教えてもらったこんな3つの問いです。
1. Please tell me your current "Happiness Rate"
2. Why do you think so?
3. What can I do for you?
"Happiness Rate"とは1〜10でつける「今週の点数」で、絶対数字よりも前後の変化が大事なわけですね。過去、前週との差分があれば、次の「なぜそう思うのか?」で深掘りしていきます。部下・メンバーの内面的変化にしっかり寄り添うためのフォーマット。
そして何より最後の質問が一番大切。「私にできることは何かありますか?」という質問で毎回、繰り返し上司・マネージャとしてのスタンスを提示し続けます。いつでもあなたの力になりたいと思っている。業務上、取り除かなければいけない問題・課題があれば一緒に解決していこう。そういうスタンスを都度投げかけるわけですね。
時に上司・マネージャにとって難しいボールが帰ってくるわけですが、だからこそこの質問から逃げない。1on1から逃げない。実施自体のハードルを極力下げてでも、必ず定期的にこのスタンスで部下・メンバーと向き合うことが全てのリーダーにおいて求めらていると思っています。特に日本ではプレイングマネージャが多いですから、最後の質問から逃げがちですが、ここを徹底できるかで組織全体の質が大きく変わってくると思っています。ココが言わば「1on1」のセンターピンですね。
あらためて思う「音声通話1on1」のメリット。
「1on1」のそもそも論へ深掘りしてしまいましたが、あらためて今回書きたかった「音声通話1on1」(Phone Call 1on1 / PC 1on1とでも言いましょうか)のメリットを紹介したいと思います。
声だけによる「集中」のメリット。
私、昔からラジオが大好きでした。このnoteを読んでくださっている人でラジオが好きという人も多いと思います。当然ブラウン管を通じて観る「絵」で補完されるものもありますが、あのパーソナリティとの「距離」の近さというのは「音声」ならではだと思うんですね。「テレビ」という装置から、インターネットによって「スマホ」の上にYouTubeなどで動画が溢れるようになりましたが、「音声配信」の良さというのは「発信する側」のスタンス自体が自然体で柔らかくなるフォーマットなのだと思います。
そんなことをとある雑誌のラジオ特集で、キムタクのインタビューを読んで思いを深めたんですね。かれこれ25年以上ラジオで番組を持ち続けている彼はこう言っています。
今は、例えばYouTubeだとか、動画付きのコンテンツも多くありますが、カメラがあると、見てもらう/見られてるって感覚が生じると思うんです。僕の予想ではありますけど、"見られる用"の言葉だったり、顔だったりになるんじゃないかなって。でも、ラジオは本当に音だけ。むしろ視覚というものが省かれいることで、声だけでどれだけちゃんと意思が伝えられるかっていうことに集中できる。
また、別の機会に知人からコーチングで有名な「コーチ・エィ」の講習スタイルが「電話」だということを聞きました。調べてみるとサイトにも次のように説明しているんですね。
※コーチ・エィでは以下のような理由から、電話を学びのツールとして採用しています。
①オンライン通話ツールと比べ、音声の遅延・停止などのトラブルの発生が少なく安定した学習環境が整いやすい(コーチングの学びにおいて、言葉や声は重要な要素と考えています)
②視覚情報がないからこそコーチングで最も大切な聞くスキルを高めることができる。③クラスメイトの見た目・年齢・役職などの情報に影響されず、対等な立場で学ぶことができる。
④視覚情報がないことにより、学びを自分自身のこととして捉えやすく具体的な行動変容に繋がりやすい。
>> 参照元リンク
また、個人的な感覚としては画面越しだと「Face(直面する、相対する)」感じになるのですが、音声だけだと「With(共に歩む、併走する)」というイメージなんですよね。どちらも試してみた、極めて抽象的な印象なんですが、この差分・感覚が凄く大切な気がします。
何をしながらでも良い「リラックス」のメリット。
天気が良ければ、パソコンの前から離れて外の新鮮な空気を吸いながら散歩をする。ちょっと身体を動かしたくなって小走りする。好きな公園、カフェでゆったりくつろぐ。
「音声」のみだと、どんなスタイルでも実施できるのがこの1on1の良いところ。画面を共有して説明が必要である。厳しいフィードバックを受け止めてもらう。そんな時はパソコンで画面共有したり、もしくは直接対面で「1on1」を実施する必要がありますが、それ以外であればとにかく「自由」で「リラックス」できるのがこのスタイルのメリット。その人、その時によってどこでどう実施するかは「個別の最適解」があるので、そこに個性が出るのも面白いですね。毎回、会話の始めは「お互いが今どんなシチュエーションなのか」をアイスブレイク的に話せるので、カジュアルな「1on1」が苦手な人でも会話のネタがあって良いし飽きないです。
実施ハードルが下がる「継続性」のメリット。
繰り返しですが、リーダー側の視点に立つと「1on1を継続実施すること」が何よりも大事です。そこは「コーチング」の機会であり、「問題」発見の機会であり、一緒に「課題」に立ち向かったり、「障害」を取り除いてあげる、時にはリーダーとして「宿題」を持ち帰り次の「1on1」までに確実にDONEしておく。
それは個々のリーダーにとって時に「慣性」に背くベクトルだったりするので、どうしてもストレスになったり継続性が難しくなったりします。故に、「英語学習」と本当に相似形だと思うのですが、やると決めたら(やらないといけないのですが)
・目的を明確にする
・習慣化のために定期的な予定に組み込む
・実施のハードルを下げる
・何よりも続けることを大事にする
ということです。忙しくて部下との時間が取りづらくても、「音声」だけにすればプライベート含め「他のタスク」と同時に実施することができます。「絵」を共有する必要がないので、人によって時と場合によっての準備が最低限で済みます。そうやって1on1実施のための「不要なストレス」を極力排除し、「本当に必要なストレス」だけを受け止められる状態を作り続けたいですね。
最後に
「縦ライン(上司<>部下)のコミュニケーションの質を上げること。」
ニューノーマルに健全な組織運営を考えると、ここが本当に大切に思えます。オフィスという物理空間は、偶発的に横や斜め(同期や同僚など)から「やる気」の補給が適切に、偶発的に行われる構造になっていました。そんな構造に頼れない新しい組織においては、今まで以上に「1on1」というフォーマット、ツールの質や実施率を上げ続ける努力が、組織デザインのレイヤーに強く求められていると思います。
こちらも参照に。
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