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或るラガーマン

これからしばらく、過去の当社ブログ「ミラトモ!」に公開された記事の中からいくつか投稿してまいります。
このブログの筆者はすでに在籍しておりませんが、再掲するにふさわしい記事がいくつかありますので、厳選して公開してまいります。

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※この記事は過去にシン・エナジーの公式ブログ「ミラトモ!」に公開された2018年6月の記事の再掲です。内容はすべて当時のものです

関西に来た10年余り前、「ラグビー、見に行かないか? 神戸製鋼すごいぞ」と友人が誘ってくれた。
ルールも知らないし、たまにテレビでやっていても別のチャンネルに切り替えていた。
友人には「残念、用事があって無理」と断っていた。

しかし、そのラグビーをiPS細胞開発の山中伸弥・京都大学教授が神戸大学医学部学生時代に夢中になってやっていたことを知り、ラグビーに対する見方が少し変わった。

転職前の会社で山中教授に講演の依頼のため数分間だけ話せる機会を東京で得た。
iPS細胞が世界で初めて作られたのが2006年。
私が講演依頼をしたのは2008年で、世界との研究競争に負けないように少しでも多く研究時間を作りたい、と話していた時のことだった。

「関西で生まれたiPS細胞という技術について関西で話していただけないでしょうか」

自分の思いを2分間に凝縮して話したとき、その場で講演を引き受けてくれた。

講演当日、同じく基調講演をお願いしていた京都を代表する企業の会長を山中教授に紹介すると、会話はすぐに弾んでいた。
相手を尊敬する姿勢に人間としての魅力を感じたのは私だけではなかった。
ラガーマンなのに、西洋のスポーツなのに「礼に始まり礼に終わる」剣道の高位有段者のような落ち着きと静かさを感じた。

その山中さんと同じラガーマンの平尾誠二さんとの交流が本となって出版されるなど、二人の信頼関係は厚かった。
平尾さんのよく知られた話で人を叱るときの心得がある。
「プレーを叱り、人格まで傷つけない」「後で必ずフォローする」「他人と比較しない」「長時間叱らない」というもので、胸に刺さる。
こうした人間味を感じさせる平尾さんのファンは本当に多い。
残念ながら2016年10月に亡くなられた。

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ノエビアスタジアムで6月16日に開かれた日本代表対イタリア代表戦に「平尾誠二メモリアルマッチ」というもう一つの名称がつけられていた。
ノエビアスタジアムに来た方の中にも平尾さんが活躍当時の写真展示を見るために来られた方もいた。
当日、試合は午後2時からなのに午前10時前にはファンが次々と訪れ、試合中には2万人を超えた。
ラグビーに対する関心が確実に高まっていることを肌で感じた。

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日本代表にはフィジーやトンガ、ニュージーランド出身者の方もいて頼もしい。
日本のスポーツが選手構成の面からみても国際化してきていることを歓迎したい。
大相撲の「栃ノ心」を見ているといつしか「ガイジン」という気がしなくなって、日本に来てくれてありがとう、と思うようになったのと似ている。

試合は前半こそ3対12という厳しい点差で日本は折り返したが、その国際派の活躍もあって後半勢いを盛り返し、トライのたびに球場が喜びに揺れた。
最後は22対25で日本は敗れたが、満足そうに帰っていく観客の姿が印象的だった。

※シン・エナジーは同日の試合に、マッチスポンサーとして協賛しました

(2018/6/21 シン・エナジー広報/元日本経済新聞記者 府川浩・記)