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冬眠できない?𓆏帰るところのないカエル

先ほど帰宅した際、アパートの部屋までの敷石を歩いていたら、
暗いから最初気づかなかったけれど、
なにか違和感のあるものが、靴に触れた気がした。

思わず目を凝らしたら…「わっ」と声が出た。
手のひらサイズの、でっかいカエル。

別に嫌いじゃないから、カエルに驚いたわけではない。
こんな時期に、地上にいたから驚いた。

…危うく踏むとこだった…

手足を投げ出したようなかっこうで、ベッタリと這いつくばって、死んだように微動だにしない。

12月なんだから、普通は冬眠の時期のはずだけれど、今年は妙に暖かいから、
日中に起き出して土から出てきてしまい、
夜になって気温が下がり、寒くて動けなくなっているのかな。

「どうしたの、こんなとこで。寒いでしょ。早く土に入らないと。頑張れ、頑張れ」

田舎育ちだから、都会近くの住宅地に住んでいても、小さな生き物が友達みたいに思えてしまう。 しばらく手のひらの熱であたため、
土や草や落葉のあるところまで運んだら、
やがてのそのそと、草かげに消えていった。
「また春になったら会おうね」

数年前までは、うちの近辺にも、側溝もあったし、庭のあるお宅も多くて、このテのカエルはいっぱいいたけれど、
近年、家も庭もつぶして、アパートや駐車場にした土地が多く、側溝もなくなり、
セミも鳴かなくなったし(土の中で育つうちに、掘り返されたり、建物に埋められたりしたのだろう)、カエルも見かけなくなった。

たまに、ずっと変わらずにある、うちのアパートの通路に、一匹だけ見かけるカエルがいたものの、そういえば今年は見ていなかった。
のに、夏でなくて、本来は冬眠してるはずの師走に出会うとは。

ところで、「また春に会おうね」と言ったものの、実は、私が住んでいるアパートも、老朽化で取り壊すかもしれない話が出ている。
私も早ければ来春には、強制的に出てけとのことで、引っ越さねばならない事態になるかもしれない。
今、そのことで少々もめている。

私も、長く馴染んできた部屋を追われ、
かろうじて土のあるここに住んでいた虫やカエルたちも、とうとう居場所を無くすことになるのだろうか。

「帰る」場所を失う、私たち。


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