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食べたいなぁ

食べるだけで

ちょっと元気になってしまう味がある


お世辞にも おしゃれとか高級と言えない

夕方に赤ちょうちんが 何個も灯る

ごちゃごちゃした街の

狭っまい 焼肉屋


美しい光に引き寄せられるのとは

また違う引力で

赤ちょうちんに

惹き寄せられて

気づいたら カウンターに座っていた


カウンターの中に 小さな店主がひとり

ぜんぜん嫌みのない でもホッとする

やさしいやりとりで

カウンターの外の

惹き寄せられた 腹ペコなお客さんの

流れるような注文を

指揮でもしているかのように

柔らかく すっきりとした手つきで

サラサラと取っていく

その姿は 正直めちゃくちゃかっこいい


きっと 腹ペコ達にはわからない

いろいろなこだわりや

情熱のこもった手つきで

ただただ

静かに肉をさばいていく


年季の入った網の上で

下に構える 立てられた炭に

少し多く見える

塩タンの塩が溶ける


口に運べば 倒れそうなほどおいしい

その塩タンを頬張ると

“幸せってこんな感じだった”って

目尻は下がり 口角は上がる


思い出しただけで もう…


あぁ 食べたいなぁ

小さな店主がくれる

口いっぱいの 幸福感




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