“いじめ予測システム”ではいじめを防ぐことはできない

教育現場でいじめ予測分析システムの導入が進み始めている。大津市が2011年に中学2年生がいじめを理由に自殺した事件を受けてシステムを試験運用している。という記事がありました。

いじめ予測分析システムと呼ぶのは少し語弊を招きます。このシステムは教員が提出するいじめの報告書を元にしてAIがいじめの深刻度を判断するというものです。つまりいじめを事前に察知して予防するのではなく、既にいじめを受けている生徒に対してどの程度がケアをすべきかをシステムがサポートするものです。
正確に言えば、これは”いじめ深刻度チェッカー”なのです。

現在の教育現場では、教員同士の情報連携不足や教員の経験不足、業務時間の逼迫などで、十分にいじめ対策ができていないのが現状だと思います。
たしかにこのシステムを導入すれば、教員の負担軽減や、自殺に追い込む重大ないじめに発展する事を防ぐことができると思います。

しかし問題はこのシステムは、生徒がSOSを出す事を前提としてる点です。システムの分析には、いじめの報告書を対象データとして扱っています。もし、生徒がいじめを受けているという事を教員に伝えなかったら、このシステムは成り立たないのです。
つまり、教員と生徒の信頼関係がないと成り立ちません。嫌いな先生、よく思ってない先生に、人に一番言い辛い悩みを言えるでしょうか。そもそも、いじめられている人は、いじめられている事を人になかなか言えないものです。

そのため、本当に求められるシステムは、生徒からのSOSを待つのではなく、生徒がいじめられてますと申告する前に、生徒たちのデータを積極的に集めていじめを事前に検知してあげる、ささいな変化も察知していじめを未然に防ぐシステムなのです。
プライバシーデータの扱いの問題は置いといて、生徒同士の会話や、LINEでのやりとりをデータ収集する。誰が無視されているのか、誰が誹謗中傷を受けているのか分析する。また生徒の声のトーンの変化を分析して、元気がない生徒を検知するなど、積極的にデータを集めれば多くの事が分かってきます。
こうすれば、生徒はSOSは発せずとも、いじめが大人たちから認知され、いじめの防止や、迅速な対応が可能となってくるのではないでしょう。

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