オーストラリアでプロ野球観戦!
オーストラリアで人気の球技ってなんだろう?
この国はなんたってラグビー、オージーフットボール、おっともちろん本家のサッカー、といった「フットボール」が盛んだ。
ところで、野球ってやってるの?
こないだのWBCを見てもわかるように、やっていることはやっているのだが、この国では野球の最大のライバルスポーツがある。
クリケットだ。
この人気がとにかくすごく、なまじ似ている競技だから(野球の起源はクリケットらしい)、どうしても野球は継子扱いで日陰者だ。
かたや、日本人で野球に全く関心がない、という人はそうそういないと思う。
勝手な憶測だけど、野球のルールを全く知らない、という日本人は人口の2割以下なのではなかろうか。
さて、そんな日本人がオーストラリアに来ると、野球禁断症状になるかもしれない。
「く~、野球場行ってビール飲みながらひいきのチームを応援したいぜ!」
と思うアナタ、実はオーストラリアでもそれができるんすよ!
ABLとは?
オーストラリアにも、プロ野球リーグがある。
Australian Baseball Leagueといい、略してABL.
シドニーを始めとするオーストラリア主要都市を本拠地にする6チームで構成されている。
ただ、シーズンはかなり短く、11月の終わりから翌年1月の終わりまでで、合計で40試合することになる…のかな?
つまり、ABLはウィンターリーグのような位置づけで、北半球のリーグがお休みの時に開催される、ということになる。
選手層
選手は、もちろんオーストラリア人が主流で、そのうちの一部はアメリカのチームに在籍している。といっても、マイナーリーグで、今現在はオーストラリア人のメジャーリーガーはいないようだ。
最近の目立った動きとしては、日本や韓国のチームから派遣されている選手が増えてきている。
日本では以前から、主に若手の選手がメキシコやプエルトリコのウィンターリーグに行って修行する、というケースがあったが、それにオーストラリアが加えられてきている。
ラテンアメリカの国のほうが野球のレベルは高いと思うが、それ以外の生活環境や治安という面ではオーストラリアに軍配が上がると思うので、良い海外修行の拠点となるのだろう。
さて、ここからは先日行ってきたシドニーブルーソックスの試合体験記を書いていこう。
シドニーブルーソックス
シドニーのホームチームは、シドニーブルーソックスという。
MLBにはホワイトソックス、レッドソックスというチームがあるので、それにちなみつつ、この州のカラーがブルーなのでこういった命名となったのだろう。
ちなみに、マスコットは余り可愛くない…。
チケットを購入するにあたっては、満員になることはまずなさそうだから、当日窓口で買ってもいいが、その際は$5ほど値段が上がるので、球団ウェブサイトから購入すると良いだろう。
バックネット裏のキャッチャー真後ろあたりが$30、その少し上が$20と、まあお手頃価格。
一番安い席は$10とかなり安いが、屋根が付いてないのでご注意を。
球場
球場は、ブラックタウンという町の外れにある、Blacktown International Sportsparkの一画にある。ここは野球場の他にもサッカー、陸上、オージールールフットボールのグラウンドもある複合スポーツ施設である。
シティからは電車に乗って1時間ほどでこの駅に着き、そこからバスでいかにも郊外の住宅地、という場所を通っていくと、やがてだだっ広いエリアがやってきて、そこのバス停で下車すると、球場はすぐそこだ。
野球場のゲートで入場券を見せ(チケットのQRコードを携帯にダウンロードして、それをスキャンするだけだったので、プリントアウトする必要はなかった)、簡単な荷物のチェックを受けた。たぶん、アルコールや瓶の持ち込みは不可なのだろう。
さて、スタンドに向かおう。わくわく!
ただ、ここで100回くらい強調したいのだが、日本のプロ野球のスタジアムを想像してはいけません。
いや、地方球場すら想像してもいけません!
こんな感じです。
観客席は内野にすら届いてないし、外野フェンスの向こうはなにもない。こういう球場、アメリカのマイナーリーグなどでよく見る。まあ、選手を近くで見られるし、アットホームな雰囲気がたまらない、とも言える。
気になったので調べたら、最大収容人員は1200名ということだった。満員でもそれだけか…。
もちろん、こんな球場でもサイズは国際規格。両翼は98メートル、バックスクリーンは122メートルと、日本のプロ野球のスタジアムと比べても引けを取らない…というか、横浜スタジアムより広いじゃん。
この日は日曜日のデーゲームということで、少年野球チームのキッズとその家族が観客のほとんどを占めていて、とてもにぎやかだった…っていうか、キッズは試合そっちのけで走り回っていたけれども。お前たちは、試合を見て学ぶことがないのかっ!!
そういう「準関係者」ではなくて、とにかく野球が好きでたまらないので見に来た…というモノ好きは余りいないように見受けた…というか、
そういう人、ほとんど日本人だった。
あと、韓国人かな?という人も何人か見受けた(何名かの選手は韓国プロリーグから来ていたので)。
いやあ、ホントにマイナースポーツだわ。
野球観戦と言えば飲み食い!
こんな小さな球場なので、スタンド内には食べ物を売るようなスペースはないが、ちゃんとこのようなフードトラックが球場内に出ている。
球場内の売店では、スナックや飲み物を売っている。ちゃんとビールも売ってますのでご安心下さい!
青空の下で、野球を見ながら飲むビール…至福のひと時ではないか!
また、チームグッズを扱っている売店もあって、レプリカユニフォーム、帽子、キーリング…といったアイテムも、わりあいお得な値段で売っていた。
チームロゴが入ったトレシャツが$19だったので、ランニング用に買ってしまった。
さて、今日の対戦相手は、キャンベラをベースとする、Cavalry(キャバルリー、騎兵隊という意味)というチーム。
日本人選手でいうと、キャバルリーには横浜ベイスターズ、ブルーソックスには千葉マリーンズから数名の選手が参加している。
それ以外にも、MLB(のマイナー)や韓国リーグからも選手が派遣されていて、国際色豊かである。
ウォームアップなどを終えて選手がベンチに戻ったら、観客一同起立して国歌斉唱。このあたりは、あまりオーストラリアのスポーツらしくなくて、アメリカの影響なのかなあ。
ブルーソックスの選手が一人ひとり名前を呼ばれてベンチから守備位置に着き、いよいよプレーボール!
試合の内容
さて、試合はブルーソックスは塁上を賑わせつつもあと一本が出ずに得点できない。
うーむ、こういうパターンは良くないなあ…と思っていたら、案の定キャバルリーの最初のヒットがホームラン。
それまで調子が良かったブルーソックスの先発がこれで調子を崩し、四球、盗塁、ヒットで追加点を取られ、0-2となる。あーあ、1点だけに抑えて欲しかった…。
4回の表も、キャバルリーの先頭打者が大きなフライをレフトポール際に。ファールかな?と思ったら、判定はホームラン。え、ウソだろ?
うーん、ポールに当たったようにも…見える…むむむ。
ちょっと微妙な判定だったので、ブルーソックスの監督がしばらく審判と話していたが、もちろん判定が覆るわけでもなく、これで0-3。まずいなあ。
ちょっと盛り下がったファンを鼓舞するべく、ブルーソックスの応援団長らしき立派な髭をはやしたオッサンがイニング間に観客席を練り歩き、ミニボールを放り投げる。キッズもオトナも大喜びだ。
と思いきや、今度は水風船を投げ始める!これを破れずに取ったら景品をあげるよ!とか言うけど、そんなの無理ですわ。ちゃんとキャッチできても、かなりの確率で風船が割れ、キャッチした人も、周りの人も水びたし。
僕の近くの人も取り損なったので、その余波がこちらにも…まあ暑いのですぐ乾くから全然いいけど。
イニングの合間にすこしスタンドをウロウロしてみたが、とにかくフィールドとの距離が近い!
こんな感じで、選手と目と鼻の距離に行くこともできる。
さて、チャンスを何度も潰してきたブルーソックスだが、流れというものは面白いもので、5回の裏についにチャンスがやってきた。
デッドボール、ヒットが重なったものの2アウトまで来てしまい、次のバッターは3塁ゴロ。
「あ~、またここで3アウトで残塁祭りかな…」と思いきや、3塁手が悪送球!これで2-3と1点差となり、ここで投手が動揺したのか、なんと2者連続デッドボール、そして更に押し出し四球で、同点!
といっても、良く考えてみたらこの回のヒットは1本だけで、あとは敵がエラーしたり四死球を連発したりでの3得点なので、なんとも締まらない点の取り方ではあるが、観客は盛り上がる。
やはり、ここぞというところでエラーをしたり、余計な四死球を出してしまう…というあたりが、トップリーグとの差なんだろうなあ。
この後は、両チーム1点づつ追加点を上げ、4-4となる。
試合終盤になるとリリーフピッチャーが出てきたが、やはりパワーがちがう!
スピードガンがないので何キロ出てるのかは分からないが、バズンバズンという音がスタンドまで届く。これを打つのは難しいわ。
ということで、割合サクッと9回が終了した。はて、延長戦はあるのかな?あるとしたら、何回までやるのだろうか。
延長戦、ありました。
ただ、「タイブレーク制」を取り、10回はいきなりノーアウト1,2塁から開始される。これは、ピッチャーは嫌な気分だろうなあ…いやでも、かえって「俺が出したランナーじゃないもんね」と開き直れるのかなあ。
さてこうなると、先頭打者は当然のように送りバントを敢行し、ワンアウト2,3塁。
次の打者は四球を選ぶ。まあ、この場面で一塁ランナーがホームインするようなことがあればほぼ負け戦なので、守りやすくなるという意味では想定内なのだろう。
でも、これで点が入らないほうがおかしいだろ?エラーとかもしそうだし…とハラハラして見ていたが、ブルーソックスのピッチャーはなんとか次の打者を内野ゴロに打ち取り、10回の表を終了。
こうなると、後攻めのブルーソックスのほうががぜん有利になってくる。
キャバルリーのピッチャーは…おお、僕の地元横浜ベイスターズの徳山選手ではないか(って、あまり良く知らないけど)。
うーん、僕の今の地元であるシドニーブルーソックスには勝ってほしいけど、もと地元の横浜ベイスターズの選手が負け投手になるのも嫌だなあ…と複雑な気分になってしまう。
ブルーソックスの先頭打者も定石通り送りバントをしたが、なんと我等が徳山選手が一塁悪送球!ああ~。
ということで、無死満塁の大ピンチ。
これは、よほどヘマを踏まない限りブルーソックスの勝ちだろう…と見ていたら、案の定次の打者はセンターにそこそこ大きな飛球を上げ、タッチアップから3塁走者がホームイン!
ブルーソックス、サヨナラ勝ち!!(わーい)
(英語では、サヨナラ勝ちのことをWalk Offと言います。まあ確かにその通りだなあ。)
サヨナラ勝ち、しかもこのカード勝ち越しということで選手も観客もかなり盛り上がっていた。
試合後の感想
さて、実際の試合だが、結構…というと失礼だが、ちゃんとしている。
もちろん、短いシーズンで戦うチームなのでプレーの精度、という点ではやや劣るけど、みな当たり前だけどプロ選手だし、オージーは身体能力は高いので、タイミング良く当たると、結構重い音を上げてボールが飛んでいく。ピッチャーもとんでもない変化球を投げるというよりは、ストレートをバンバン投げていく感じ。
また、日本のプロ野球ほど「駆け引き」とか、「間を外す」とか、そういう複雑なことをせず、ピッチャーが「おりゃ~!」と投げ、それをバッターが「うりゃ~!」と打ち返す(または豪快に空振りする)という流れで、リズム良く試合が進む。この試合は延長10回までやったけど、試合時間はほぼ3時間ジャストだった。
コアな野球ファンなら、「あーあ、この守備はいただけないなあ…バッターも簡単に三振するし…」とか不満足になるかもしれないけど、
「日本のプロ野球は試合時間が長くてちょっと…」と思うようなライトなファンなら逆に都合がいいかもしれない。
なにより、きっぱりと晴れ渡ったオーストラリアの空の下で、缶ビール片手にハンバーガーをかぶりつきながら野球を見る…。
これって、とっても贅沢じゃないですか?
また見に行こう!!