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コロナ禍、人肌に飢える人々の群れ〜国家が推奨する検疫セックスと仮想化家族〜

1.経済の次に深刻な孤独/孤立と家族の崩壊の問題


コロナ禍は複数年続くという見通しが広がる中、医療崩壊、経済不況以外にもう一つ重大な社会問題が発生している。

日本では話題になりにくいが、人との交渉/接触の問題、孤独の問題だ。

既にコロナ前の時点で首都ソウルの出生率が0.69だった韓国では、4月の婚姻率対前年比20%減、出生率10%減。

結婚にこだわらないカップルが増えているのかもしれないし、単に今の状況下で婚姻届を遅らせているだけかもしれない。

ただ、このまま構造的に出会いが少なくカップルが減ると、家族といった社会の最小限の基礎単位にも影響が出かねない。

非接触社会が長期に継続し必要な人同士の接触が減り人々の生活の孤立化がさらに加速するとそれはそれで深刻な問題だ。

2.ロックダウンが引き裂いた人との触れ合い

日本でも最近はそうだが、欧米では18歳すぎると独り立ちをする、させるのが標準で、若い層は経済力つけば同棲や結婚するまでは一人暮らしになるか、フラットシェアをする。つまりカップルやファミリーを形成していないと一人暮らしになる。またはシングルペアレントになる。
そして個人主義が行き渡った今孤独の問題は、例えばイギリスでは担当大臣が就任するくらい深刻な問題だ。

ロンドン大経済政治学院(LSE)が17年発表した研究によれば、「孤独」がもたらす医療コストは、10年間で1人当たり推計6000ポンド(約85万円)。生協などの調査では、孤独が原因の体調不良による欠勤や生産性の低下などで雇用主は年25億ポンド(約3540億円)の損失を受ける。


既に孤独が大きな社会問題となっていた中で、今回のロックダウンが欧米の単身者やシングルマザー/ファザーを直撃した。

ロンドンに住む友人たちに聞くと、子供がいないシングルの40代、50代の男性でも単身ロックダウン生活はかなり精神的に参っていたようだ。デートアプリで真面目にパートナー探していた人たちが、ロックダウンでそれできなくなり、ヴァーチャルデートが流行って、場合によってはバーチャルセックス(なんだそれ)に至るケースも増えたらしい。

人との握手やハグも含めて他人との日常的なふれあいが少ない日本人には想像しにくいのかもしれないが、欧米人にとって接触禁止は精神的に相当参ることらしく

”Skin Hungers(人肌に飢えている人々)”

という新語もできた模様。

(代わりにペットを飼う人が増え、ひよこが馬鹿売れしたとかも聞く。)

オランダでは国立公衆衛生環境研究所(RIVM)が、極めて親切に具体的な対策のガイダンスを発表している。

「独身者が肉体的な接触を望むのは当然のことです」
「適切な予防策を講じていれば、他者と会って”我慢することのできない性的欲求”を満たすことは問題ありません
「性交渉を行うためには、どのようにすることが最善であるかをパートナーと一緒に話し合ってください。例えばあなたが感染していなくて、肉体的または性的接触を持つために、抱擁のパートナーやセックスフレンドといった同じ人と会うならば、そのパートナーとの間では、お互いが他に何人の人と会うのか、ということもきちんと決めておきましょう。それぞれ会う人が多ければ多いほど、コロナウィルスを感染する(させる)可能性は当然ながら高くなります」
「自分自身で行うことや、バーチャルやオンラインのように他の人との距離を置いてのセックスは可能です。」
“Sex with yourself or with others at a distance is possible (think of telling erotic stories, masturbating together).”

政府通達文書としては中々に過激な内容だ。

「独身者は、積極的にQuarantine Sex Buddy(検疫済の性行為の相手)を探せ」とは、政府国立研究所の感染防止対策ガイダンスとしては踏み込んでいる。

(もっともSex Buddyという直接的な表現は5/16に削除されて今はない)

ニューヨークでも同様のガイドラインが出たと聞く。

ただ、日本で同様に国立感染症研究所の脇田所長や政府の分化会の尾身会長が、こういう私的な性生活まで感染予防の新しい生活様式として発表している姿は想像しにくい。

3.国家による孤独解消と接触制限の同時解決=バーチャルファミリーの可能性?


そうしたなか、イギリス政府は、孤独の解消に今回「サポート・バブル」という制度をスタートさせた。


新型コロナウイルス対策の制限緩和の一環として、イングランドの単身者を対象に、別の1世帯の家での滞在を認めるというもの。(家族でなくても、助け合うバブル(シャボン玉)の中に一緒にいる存在をと)

基本的には単身の親を気遣って訪問するというケースが多いと思うが、独身の男女も、ステディな関係なら彼氏彼女と積極的に会えるというもので、先のオランダのQuarentine Sex Buddyのガイダンスにほぼ近い。だだし、

「サポート・バブルのメンバーに症状が出たら、その全メンバーが世帯隔離に関する通常の助言に従う必要がある」

具体的には14日のお互いに自主隔離生活が求められる。
そういう意味では、昔の5人組の様な連座制の運命共同体だ。

政府は第2波を恐れ適応範囲は非常に限定的に設定している。
夫婦で暮らしている祖父母や、ルームシェアなど同居人がいる人、同居しているカップルは対象外。

あくまで、孤独による健康被害拡大と、それが招く医療費の増大や医療崩壊、引いては孤独死の防止を目指している。

愛情を感じる事ができない孤独状態は精神面健康面での被害を生むためそれは避けたい。但し以前のような自由な人的接触を認めて再びロックダウンとなったとしたら経済的な被害は甚大だ。(おそらく全国規模ロックダウンはもはや世界中どの国も不可能だろう)

先のオランダのケースもそうだが、そうした中、

欧州各国の政府が編み出しつつあるのが「愛のカップル自主隔離作戦」だ。

たまたま、ロックダウンのタイミングで付き合い始めたラブラブカップルはオフィスに出社しなくても良くなり、どちらかの家で愛の巣篭もり生活を送ったと聞く。

ただステディな彼氏彼女がいなかった場合は、デートアプリで出会うこともできず、一部は先程のzoomでバーチャルセックスという状態だったらしい。

4.サポートバブル、例えば、こういう状況はあり得るのか

サポートバブルの状況下、制度的に強制的に擬似家族の関係になる。そんな状況を想像してみる(下記は、登場人物も俳優も筆者の完全な妄想)

ジョン(27) 出演:ジャック・レイナー(仮)

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© Imagecollect

イケメン、ウーマナイザー(女たらし)、ピックアップアーティスト(ナンパ師)交友関係が派手で有名だったため、コロナ感染が疑われ多数のカールフレンドが一気にゼロになった状態でロックダウン生活突入、人生初めての状態にうつ病になりかけ

メアリ(32)  出演:グレタ・ガーウィグ(仮)

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© 2015 Lily Harding Pictures, LLC All Rights Reserved.

オタク女子(実は美人)アニメ好きステイホーム引きこもり生活満喫、リアルに彼氏いない歴32年

ジョージ(49)  出演:イーサン・ホーク(仮)

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© Paper City Magazine

3度の離婚の結果、6人分の多額の養育費を払い続けてる売れない小説家。極度の女性不信。

カレン(42)            出演:シャリーズ・セロン

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© Imagecollect


3度の離婚後、子供3歳の育児とステイホームでの仕事の両立に必死のバリキャリシングルマザー。仕事を最優先し過ぎて、友人家族とは疎遠。極度の男性不信。

それぞれ同じアパートに住んで挨拶くらいはするだけのそれぞれ孤独な4人がそれぞれの事情から、サポートバブルの家族パートナーが見つけられない状況

お互いタイプがあまりに違って嫌いあってたのが、長引くロックダウン生活の孤独のなか、やむを得ず、ジョンはメアリと、ジョージはカレンと少しづつ会話をするようになりサポートバブルのファミリーパートナーとして暮らすことに。

ロックダウン生活を互いにすれ違いながら愛とは何か、家族とは何か、つながりとは何かについて気づいていく、、現代版のラブアクチュアリー
“Love actually 2020 under the COVID-19 pandemic lockdown”

世界中がそんなラブコメディ映画を笑いながら観る日が来るかもしれない。

(いや、全てが超高速化している今、すでにNetflixが脚本を書き上げ、撮影に入っているかもしれない。)

家族には定位家族、生殖家族という2種類の家族が存在する。

定位家族は実の父・母・兄弟のことで、自分が生まれ育った環境の家族のことを指す。そして結婚・出産によって築いた新しい代の家族のことを生殖家族という。

世界中でどちらのこれまでの従来型の家族もマイノリティになりつつある。

日本においても「イエ」制度の崩壊、核家族化からさらに進んだ単身世帯は増加しており、生涯未婚率は男性23%,女性14%(2015)だ。

個人主義が極まった英国は、単身者にたとえバーチャルファミリーでも任意に運命共同体を形成することを社会の安定と健康のために促している。

“Love actually 2020 under the COVID-19 pandemic lockdown”(妄想)
の結末では、髪ボサボサのボリス・ジョンソンが全く新しい発見のようにビデオメッセージでこういう。

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「家族というものがまさに存在する」

"There really is such a thing                              as family after all."

家族の形態がどうであれ、社会がどれほど非接触、外出制限を要求しても生き延びる為にプログラムされた我々の接触依存症は避けられない。

”社会的交渉は、私たちの祖先が生き残るうえで非常に重要になった。それゆえヒトの脳は、社会的交渉への依存症状態になりやすいように出来上がったのだろう。つまり、人と接したいという根源的な欲求を乗り越えることは、何百万年分の進化的プログラミングに抵抗しようとすることと同じなのだ。”

生き物として我々日本人にも身体接触の欲求がないわけはずだ。ただ個人の問題としてむしろ恥ずかしい事として内側に閉じ込める傾向がある。
性行為は欧米では厚生労働省管轄なのに対して日本では警察管轄なのが象徴だ。
またその抑圧が日本的な隠微な陰影礼讃的な性に関する文化を生んできた。
今回は完璧なロックダウン状態でなかった。東京でも、自粛による身体接触不足の抑圧は欧米に比べると一定割合ベント(減圧)されていた。

長期化したり、また強い自粛生活に入った場合、この語られない身体接触不足の抑圧が新たな日本人の陰影礼讃を生むのか、個人的にはそこも注目して行きたい。

5.接触と孤独の新常態(まとめ)

・日本ではあまり触れられる事はないが、コロナ禍で接触制限され、孤独の問題が進むことは医療・経済問題に並んで深刻な問題だ。

・人々の社会的交渉(性的パートナーを求める事含む)への依存症(人肌依存症)は、人類の生存本能としてプログラムされたもので避けがたい。

・欧米では接触的にSocial Distanceと性行為についてガイドラインを政府が出したり、仮想家族を設定したり、政府が積極的に「社会が非接触を目指す中での必要な接触のあり方」を模索している。

・ITやロボット等を活用した非接触社会の実現を目指すだけでなく、人間が接触・交渉を求める存在である事実にも目を背けずに新常態を切り拓いていく必要がある。


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