ペディキュアの先の先まで
8月らしくない涼しさが街を覆えば。
8月らしい重たい暗雲が街を覆えば。
ただそこにある重い冷たさがサンダルの先、真っ赤なペディキュアの、少しだけ剥がれたすっぴん部分を襲う。
セミが鳴かなかったら、鳴かなかったらきっと私たち夏を少し頭からほっぽりだして、早々訪れた秋に咽び泣くことすらできた、のに。
わたしそろそろ薄めてしまいたい関係性があるけれど、どろどろ、どろどろとした心の内で彼女のこと、考えてしまってるあいだは薄まってなんかないだろうよ。この、真っ暗に近いブルーの気持ちの感覚、ホワイトで塗りつぶしてやりたい。それができっこないならそれで、薄め液とかダイソーにでも探しに行くから。
8月らしい重たい湿度と8月らしい圧縮された暑さが戻ってくるときに、きっとまた真っ暗に近いブルーは漏れ出て、それは私を染めるけど、わたし爪の先まで染めさせやしないわ。セミは夏の間中、鳴き叫んでいた、けど。
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