Chat GPA (2)

大学生はchat GPAなるものを手に取ると、そこに表示されている数字を見た。

“0.3”

大学生は苦笑した。たしかに、このまま大学にも気が向いたときにしか行かず、昼間から居酒屋へ行き、駅中をふらふらと歩き回っていると、このGPAは妥当であった。
「俺はどうしたらいいんだよぉ」
大学生は搾り出すように声を漏らした。すると、chat GPAの画面が切り替わった。

“西に向かえ”

大学生は博士に尋ねた
「これはなんなんですか!西に行けばGPAは上がるのですか!」
しかし、博士は
「仙薬を…、仙薬を…」
としか言葉を発しなかった。病気である。
「もう俺にはこれしかない…」
大学生はchat gpaを持ち出すと、わずかな希望を胸に、ラボのドアを勢いよく開け、太陽の沈みゆく西へと走り出した。走る必要はもちろんないのだが、無我夢中であった。自分の中の何かが変わる、大学生は漠然とそんな気がしたのだ。大学生はとにかく西へと向かった。少しずつ沈んでいく太陽の10倍の速さ、いや、数千年に渡る喫煙の弊害、ヤニに侵された肺にそこまでのスピードを出すことは到底無理であったが、彼の中では10倍いや、100倍ものスピードで走っている。彼は気づくと山の中にいた。木々、枝々をかき分け、破竹の勢いで進むと、彼はとうとう崖にたどり着いた。これ以上は進めない。大学生は落胆した。落単もしている。
「俺はここまでなのか…」
大学生は崖の下の景色を眺める。遠くに彼の通う大学が見えた。もうすっかり暗くなってしまった。しかし、大学の窓からは蛍のようにぼんやりと光が見えるのがわかった。大学生は胸の内にある熱い心を自覚した。
「みんな、頑張っているんだな…」
大学生はハイになっていた。走り切ったという達成感があったのだ。そして、彼は決心した。
「明日は大学に行くか」
大学生はchat GPAを起動した。

“0.5”

数字が上がっている。
大学生は己の決意と嬉しさにただ震えていた。

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