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悪夢への抵抗の仕方

 最近かなり夢見が悪い。なので、夢の内容を日記という形で残すことにした。
 ということを書くと、即断即決の男、ナイスビジネスマン! と時は金と認識し仕事に時間をかけない決断力の塊というような現代的な褒めを受けるわけではなく、夢を言語化するって何、意味わかんない、キモ。と、真っ当な侮蔑を受けることになるだろう。そんなことをするぐらいならうどんの出汁って何が一番うまいと思いますか? という問答をしたほうが建設的だし、誰しもが理解できる話題で盛り上がれるというもの。つまり、夢を具体的な言語として残すこと自体、意味不明な行動なのだ。しかし、それを理解していながらも僕は書く。というか、書きたい。なぜか。夢を書き残すことが細やかな抵抗になると考えているからだ。
 夢見が悪いと温和な表現で濁したが、最悪な夢ばかりを見ている。絶叫している猿に追い回されて暗い山中を逃げまわる夢や悪い詐欺師に騙されて貯金を全て吸い取られ通りで真っ裸にされる夢など、列挙するだけで最悪な気持ちになる夢ばかりが続いている。B級ホラーマニアであれば両手を挙げて喜びそうな内容ばかりなのがなんとういうか腹立たしい。夢は記憶を基にして構成されていると何処かで聞いたことがあるが、このままだとB級ホラー映画ばかりを見て喜んでいる人間になってしまう。別に嫌ではないが、もっと他の映画を観ている割合が多いのでその映画を基にしてほしい。『女囚さそり』とか。
 経験上、悪夢で発生したストレスを発散せずに抱え続けているとやばい感じになる。嫌な夢を見たなと頭はぼんやりするし、気持ちは常に沈んだまま。眠ることを忌避するようになり、充分な睡眠を取れなくなる。そうなると体調的にも悪い方に向かうし、また精神的にも嫌な方向に沈んでいく。精神的なものが悪くなり体調的にも問題が発生する、最悪の渦が発生するというわけだ。なので、どこかのタイミングでこのムカつく悪夢を発散しないと、回復に向かうことはとても難しい。
 では発散しようと思ってもこれがなかなかというほど出来ない。会社勤めの僕はかなり時間的な成約を受けているため、自由な時間を確保することが難しい。昼は客の対応で頭がアッパラパーになっているし、夕方はいつまで経っても慣れない事務処理で脳が陥没するぐらいに苦しめられている。であれば、夜に酒を飲めばいいでないかと考えるのだが、飲酒という結論はかなり早計なもので、酒を飲むことにより気絶からの睡眠にスムーズに行くのだが、その後の質はかなり最悪なものになる。っていうか、飲酒のせいで悪夢を見ているような気にすらなっている。それでも、本日何を飲もうかと画策しているのだが。
 どん詰まりである。飲酒を止めることができなければ、飲酒以外での発散もままならない。精神が休まることが出来なければ、身体も休まることがない。であれば、どうするべきか。会社を辞めて労働は諸悪の根源だとアナーキズムに走るべきか。いや、そんなことをしてしまっては自身の悪夢を再現するようなものなので元も子もない。であれば、何をするのか。幸いにも僕は連連と文章を拵えている。この文章を利用し、悪夢を文字に起こして日記にしてしまえばいいでないか。悪夢を身も蓋もない物語として昇華することで、嫌なものから別のものへと塗り替える。そうすることで、悪夢を記憶からじんわりと薄めることができるはず。そう、此れは抵抗だ。悪夢に対する抵抗なのだ。くははは、実に妙案。であれば早速悪夢を見ようではないか。悪夢を見てそれを書き起こし改変してやろうではないか。と、意気込み床に就いたところ、文章では書き表せないくらいにどエロい夢を見た。頭の中が白く濁ったもので満たされていった。


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