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一年

  沖縄に逃げ帰って一年経ったらしい。逃げ帰って得たものといえば、体重と健康くらいだろう。いいね、健康。誰しもが望めど、絵に入ることができない健康を手にしている。目には見えぬが、確かに感じる誰かの羨みを背負った気分で飲む酒は美味い。
  帰ってきた一年間で様々なことがあった。市役所に行けば住民税に苦しんだり、奨学金の事務所に足を運んでヘラヘラしながら頭を下げたり、元日に会った顔も覚えていない姪っ子に金をせがまれたり、散々な目にあった。
  して、沖縄に帰ってきて自身がいた時代と比べてどうだろうかを考える。以前は、沖縄のオーバーツーリズムに関して嫌気が指して沖縄を出ていき様子を見ていたが、流行り病・コロナを通して観光業に頼る経済は綱渡りみたいなものであると証明された。その様子を見ながら、経済の脆弱性に落胆を覚えたものだ。しかし、流行病はいつか流行りでなくなる。病が落ちついた今、周りを眺めてみるとまたもや観光業に頼るような姿勢を取っている。その様子を見て、またも愛想をつかす日は近いだろうなと冷ややかな予感を感じている。
  なんだっけ、沖縄に戻って一年経ったって話か。やはり、慣れ親しんだ場所で暮らすのは大変気が楽である。故郷というのは僕の自我を形成した分、故郷から離れて暮らしたとて、故郷の記憶に縛られるものである。僕が関東で暮らし結局沖縄に戻ってきたのも、その縛りによって戻ってきたのである。あな、おそロシア。

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