酒を控えざる
最近、酒を飲むことを控えている。と、書くと頭の中に住まうもう一人の僕が「お前、あんだけ酒を飲み腐る飲みくさると書いておきながら実態はこのザマか。嘘つき嘘つき。お前お前お前、お、お前。置いていくな、俺を置いていくな」と呻きながら胸倉をものすごい力で掴んだ後、僕の頭を前後左右にブンブンと振り回しながら詰め寄ってくる。それに対して、僕は毅然とした顔でこう答えるのです。「最近、酒を飲んだらなんかヤバくてマジでヤバイ」と。
ダッサー。身体がに何か異常を感じるからと言って、酒を飲まなくなるとかマジでダッサー。だったら、始めから酒なんかに頼らずに暴力に頼り、自身の周辺にある物質全てを破戒す尽くせばいいではないか。お前は資本主義が嫌いなんだろう。と、内に住まう僕から反論が来そうだが、そんな暴力に頼るみたいなことはしないほうが良いと思う。あと、資本主義が嫌いかどうかはあまり関係がない。
酒を控えると言っても完全至ったわけではない。頻度を減らしたと言うだけの話だ。断酒ではなく節酒。週8で飲んでいた酒を週4とか週3に減らしただけの話だ。つまり、未だ酒は飲んでいるし、今も飲み腐ってやりたいなと思いながら此れを認めている。それも、素面で。スバラシー。
もともと酒を飲むには理由が存在しいている。酒が好きだし、飯と一緒に合わせると食の楽しみが広がって見識が広がった。あちきはミネルヴァのフクロウじゃ、菅原道真公じゃ、知と学の化身也。といった崇高な理由ではなく、単純に素面でいる世界に耐えられないから、一刻もはやくわすれてしまいたいから酒を飲んでいるのだ。『人はなぜ酒を飲むのか』の大設問に対しては「現実がものすごく辛く忘れたいから」という正答が用意されている。つまり、酒は現実から逃れるための手段であり、現代のストレス社会を生きる人にとって無くてはならない存在になっている。
と、書くと両手を上げて「酒を飲むやつは心が弱く、なにかに依存しないと生きていけいない馬鹿」とニヤついた顔で非難する人間が現れるが、そういう人は大伴旅人や吉井勇を知らないただのお馬鹿さんである。お勉強が足りませんので、回れ右をしてインターネットで検索するなどして賢くなった気分に陥るように。と、書く僕も馬鹿なのである。あががが。
それは横に置き、現代人のマストアイテムとも言えるべき酒をなぜ控える様になったのか。冒頭でも述べたが、最近、酒を飲むとなんかヤバい感じになっているのだ。何がヤバいのか。眠れないのだ。
酒を飲んで眠れなく。これは非常にヤバい問題である。なぜか。現実が辛く忘れたいと酒飲んでいると右で述べたが、それはつまり、意識がある状態を保つことが嫌と言っているようなものだ。酒を飲んで前後左右上下縦横が不覚の状態になり、目の前の景色がボンヤリしてきて時々現れる幻覚と取り留めのない会話を重ねることが飲酒の本懐であり、現実の自分とはかけ離れた時間を過ごすことができる。そんな時間を過ごしながら最終的に意識がなくなり机に突っ伏した状態で眠るのだが、最近はてんで眠ることが出来ない。これが本当にヤバい。
眠れなくとどうヤバいのか。現実からかけ離れた状態からどんどん素面になり、また辛く忘れたい現実を抱える状態に逆戻りするのだ。此れが猛烈にヤバい。現実を忘れたいから酒を飲んだはずなのに、また現実という振り出しに戻される。全く持って酒を飲んだ意味が無くなるのだ。「でもそれって酒を飲んで寝て起きた翌日、つまり次にやってくる現実と何が変わるんすか」みたいな真っ当な疑問を投げかけてくる人物がいる。それは心に住まうもう一人の僕だ。ここで反論しておきたいのは、酒を飲んで意識を失い起きた翌日という現実①と、酒を飲んで眠れない夜の現実②というのは全くもって別物と言っていい。
現実①は仕事とか趣味とかに没頭していると意識を紛らわせることができるのだが、現実②は酒を飲んで前後左右上下不覚の状態なので紛らわせる事柄に没頭することができず、ただただ粛々と辛く忘れたい現実を受け入れざるを得ないのだ。これがものすごくヤバい。して、さらにヤバさを加速させているのは、この現実②を受け止めるためのキャパシティがないために、また酒を飲み始めるというスパイラルが発生するのだ。始め週8で酒を飲んでいると書いたが、それは冗談でもなんでもなくこういう唐突なイベントが発生するせいである。
そういうヤバい状況になっているのであれば、なにか改善案が必要になってくるのは当然である。どうするべきか。酒と睡眠サポート飲料『ネルノダ』を割って永眠サポート飲料とか作って飲むべきであろうかとも考えたが、そんなのは意味がないような気がする。っていうか、薬なんかに頼りたくない。ただでさえ酒を飲むのに忙しいのに、薬物を導入できるほどの隙間存在していない。では何をするか。酒を控えたら良いのではないか、という当たり前の結論に落ち着いたのだ。
端的に言って、週8は飲み過ぎである。やりすぎである。多分、この飲酒ペースがかなり問題になり、現実から逃避する手段を阻害しているような気がする。であれば、このペースを乱し素面の状態を強制的に作り出すべきではないか。そうすることにより、なにか改善に向かうかもしれない。あくまで願望でしかないが。
そう考え、本日は週末というのに素面で過ごしている。そのお陰かなんなのかわからないが、大変に気分良く過ごしている。多分さっき買ったハーゲンダッツが効いているのだろう。バニラが猛烈に美味い。美味く感じるのはウイスキーをかけたせいだろうか。
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