お姉ちゃんの結婚式にわがまま申す
お姉ちゃんの結婚式が迫っている。
わたしの3つ上のお姉ちゃん。入籍して旦那と暮らし始めたのは1年以上前だけど、結婚式は今年の9月にあげる。準備がけっこう大変そうだけど、別にわたしはすることがないので、ぼけっと見ている。
披露宴では成長の過程みたいなものを振り返るコーナーがあるらしい。披露宴あるあるみたいなんだけど、わたしは結婚式ビギナーなのでよくわかっていない。まあそういうわけで、お姉ちゃんが実家に写真を選びにきた。ちょくちょくお姉ちゃんとは会っているので、顔をみるのも3週間ぶりくらいで、たいして感動もなかった。ここ最近ビリーズブートキャンプをやっているからか、お姉ちゃんに「ちょっと腕細くなった?」と言われて、わたしの機嫌はすこぶるよくなった。
わたしも一緒に写真を見ていた。選びはしない、ただ見ては野次をとばしていただけ。当たり前だけど、わたしと一緒に写っている写真が多かった。
今、仲がいいのがうそみたいに、昔はけんかばかりしていた。写真に写っているわたしたちはもちろんにっこりの笑顔で、けんかなんかしていないんだけど、写真に写っていないところで、数えきれないほどのバトルを繰り広げた。
なのにどうしてだろう、わたしはお姉ちゃんのことを嫌いになったことがない。うざいと思ったこと、ずるいと思ったこと、羨ましいと思ったことはあるけど、心の中でずっとずっと好きなのは、お姉ちゃんしかいない。こういうことを言うと親不孝だと思われるかもしれないが、わたしがいちばん好きなのは、今も昔もお姉ちゃんだ。
披露宴で流される写真は、どれも姉妹仲がよさそうなものばかり。でも、わたしたちの感情は、関係は、そんなに単純なものじゃなかった。なんなんこいつとお互いに思いながら、ごめんもなしにいつも通りになって、そのうちごめんの状況もなくなるくらいに、お互いを思いやれるようになっていった。大人になるまでの時間を、わたしたちは一緒に過ごしてきた。
わたしは思う。この感情を、この関係を知っているのは、妹のわたしだけでいい。結婚式を挙げたら、お姉ちゃんはいよいよ完全に巣立っていく。わたしと一緒にいた時間よりも、長い時間を別の家族と過ごしていく。
だから一緒にいた時間を、仲良し写真の裏側を、妹にひとりじめさせてほしい。これは、わたしとは違う場所で幸せになるお姉ちゃんへの、最後のわがままだって、お姉ちゃんならわかってくれるでしょう?
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