花曇り

小学校高学年か中学生のときに知った、「花曇り」という言葉。国語の教科書で見て知った。

桜が咲く季節の頃、空はなんとなくぐずつく。冬の快晴続きが嘘だったかのように、どこかの気団の影響を受けて、すっきりしない天気になるのだ。せっかく桜の咲く季節なのにもったいないなぁ、という感じなのだが、そんな曇天を「花曇り」というらしい。綺麗だね、ただの曇り空にも名前がつけば、こんなにも美しくなるのかと、小中学生のわたしは恐れ入った。今でも覚えているくらいには、感動した。たぶん国語の教科書の筆者も、その感動を書いていたような気がする。

桜の咲く季節は好きだけど、あの、ピンク色の何かが道路に落ちている時期は好きじゃない。雨の日に靴の裏につくからだ。わたしは足がスーパー短いので、パンツにもつきそうなのが大変嫌だ。なんなんだ春、花曇りは好きなのに、花が散ったとたんに曇りも雨もすべて憎らしくなる。

その季節をすぎて、全部青々とした葉っぱになると、また好きになる。むさ苦しい夏の空気に清涼感を与えてくれているみたいで(たぶん実際に涼しくなってる)。夏は暑いから嫌だけど、緑の桜だけは好き。桜から花が消えればみんな見向きもしないけれど、わたしは好きだよーと思って近づくと、セミのおしっこ襲来に遭うから、やっぱりそんなに好きじゃないかもしれない。

桜とか、わたしとか、毎日変わっているはずなのに、変化は大きい節目でしか見てもらえなくて。見てもらいたいと思う方が間違いなんだと思うけど、ただ毎日頑張っているということは、誰かに知ってもらいたい。それくらい今は張り詰めている。笑顔を振りまくわたしは本当のわたしじゃないはずなのに、ショッキングな事実を目にすると、なぜか本当のわたしが悲しんでいる。平然と働いている同じ職場の人たちが、何を抱えながら生きているのか聞いてみたい。でも、それをできるような距離にはなれない(なってはいけない)とわかるから、わたしは何かしらの答えを自分で見つけるしかないんだよね、と思う。

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