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【三猫物語】<その11> 猫は気まぐれか?いや、ニンゲンがアホなのか?



たまに、こんなことも・・・

猫にも、それぞれ性格というものがあるんだなあと、当たり前のようなことに改めて感心する。

先住猫たる「そら」と、新入りの「ナメコ」。はじめのうちは、互いに距離をとって、からむことはなかった。とくに喧嘩をすることもなかったけれど、いっしょにいることもなかった。なんとなく互いに意識はしてるだろうが、まあ知らんふりのように見えていた。

そのへんは、猫には猫なりの、儀礼やルールのようなものがあるのだろうか?もちろん個体ごとに、性質や性格がちがうのだろうから、いわゆる相性というものが大事だろうということは推量できる。

「ナメコ」をわが家へ迎えることになった理由は、ひとつには「そら」が一人じゃ可哀そうかなあ?連れがあったほうがいいかなあ?というようなことだった。

はじめから、とくに喧嘩することはなかったから、それほど相性が悪いわけではなかった・・・と思う。

けれども、とくに仲が良いというふうにみえることもなかった。猫鍋などはおろか、いっしょのスペースにいることもあまりない。

どのくらい経ってからかだろうか、ときどき「そら」が、「ナメコ」のアタマをちょちょいと舐めてやるようなことがでてきた。

「お!」
「おお!」
「おおお!」
でも、なんだか、それはほんのちょっとで、また、それぞれは、それぞれになる。

もうちょっと仲良くするといいのに・・・そう思うのは、これは人間の勝手。
猫が、人間の思い描くような、あらまほしき行動をするかどうかは、猫には関係ない。

こうあるといいのになあ、つい、そう思い描くのは、人間の病なんだろうなあ?
たぶん、猫は、そういうことは思わないのだろう。

ごはんが欲しいとか、構って欲しいとか、欲求はあるけれど。
「こうあらまほしい」というイメージをもってはいないんじゃないかなあ。
う~ん、もちろん、聞いてみないとわからないのだけれど。

「そら」が、ちょいちょいと「ナメコ」を、舐めてやることがあったのは、あとから考えると、たぶん、まだ「ナメコ」が仔猫だったからなんだろう。

「そら」は先住でもあるし、年上でおねえちゃんであり、「ナメコ」は、おねえちゃんを、ちょっと慕うようなところがみえた。

わかりやすいのは、なんとなく「そら」のいる場所へ、かならず「ナメコ」も行きたがること。

「そら」が二階へあがると、しばらくして、「ナメコ」もまた、トコトコと後を追うように、階段をあがってゆく。

「そら」が食器棚の上にあがると、「ナメコ」が下から見上げる。
しばらくして、自分も、食器棚へ上がろうとする。

ただ、「ナメコ」が上がってからは、かなりビミョウだ。

そのときの「そら」の気分なのだろうが、受け入れて、いっしょにまったりしていることもあるが、なにか気に入らないことがあると、猫パンチで追い払う。

そこの間合いというか、御機嫌の具合というかが、なかなか第三者にはわからない。いや、人間ふぜいにはわからない、というべきか。

それなりの理由はあるのだろうかもしれないが、端から見ていると、ただの気まぐれのようにしか見えない。

いや、まあ、人間同士だって、そういうことはある。気まぐれににしか見えない行動をする人は、けっこういる。こういう比較をすると怒られるかもしれないが、認知症の人が徘徊するというのは周囲の人の誤解で、本人にはちゃんとした行動の理由があるのに、周囲の人がそれを理解できないだけだというのと似ている。

たぶん、当人は、気まぐれに行動しているとは思ってなくて、それ相応の理由にしたがって行動しているのだろうが、他者から見ていると、その理由がまったく見えないので、どうしても気まぐれとしか見えない、ということではないだろうか。

「猫は気まぐれ」というのは、通り相場である。けれども、それは、猫の行動理由は、人間には掴めないということだろう。猫は猫なりの理由がちゃんとあって行動している、そう考えるほうが理にかなっている。なのに、人間は手前勝手で、理解力が足りないから、猫の行動理由を知るすべがない(・・・ともいえる)。

「そら」が猫ベッドで寛いでいると、「ナメコ」が、おそるおそる近づいてゆく。
さて、吉と出るか、凶と出るか?
「そら」は毛繕いに執心している。
「ナメコ」が近づくのを、気にしていないようにみえる。
「ナメコ」は、おもむろに猫ベッドへ入って、そこへうずくまる。
「そら」がちらっと視線を飛ばす。
「ナメコ」は大人しくしている。
二人そろって、ひとつの猫ベッドで、しばらく身を寄せ合っている。
・・・そう、こういうこともある。
・・・たまたま、でなく、まあ、しばしば、ある。
・・・それが、それなりに、続いていることもある。
・・・おお!なんだ、仲良くしてるじゃないか、と感嘆する。
・・・すると、その感嘆も消えやらぬうちに、不穏な空気が流れる。
・・・きゅうにパンチが炸裂して、蜜月は決裂する。

やっぱり、猫は気まぐれ。
まあ、たしかに、そうともいう。


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