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川を眺めながら
野暮用を済ませた帰り道。
せっかくだから川に沿って帰ってきた。
周りは、桜やたんぽぽ、菜の花、つくし、と春を感じるものばかり。
”気持ちがいいな”、と思った。
ふと、川の方を覗き込むと鯉が泳いでいる。
すごい量の黒い鯉。
しかも、丸まるに太っている!
(こんなに鯉っていたっけな)
そんなことを思いながら、ジーっと眺めていると私の方へ寄ってくる寄ってくる。
その時は、鯉の餌となるプランクトンや虫などがいるのかな、と思った程度。
また少し歩いて、
(鳥がいるな)
と覗き込んだら、先ほどのすごい量の鯉たちがこちらへ向かってくるではないか。
”この鯉たちは餌付けされているのか…”
そう気づいたのは、ちょっと後。
同時にこの鯉たちが”怖いな”、と感じた。
餌付けするのは別に構わないと思う。
”怖い”、と思ったのは、
この鯉たちは人を見て餌をくれる、と認識していること。
それは、つまり…
”自分たちの力で餌をとることはしないのかな?”それとも”自分で餌を取りに行けないのかな”と想像してしまったことが、”怖かった”。
丸まるに太った鯉たち、
人が近づけば、パカパカと口を開けて寄ってくる。
少し歩けば、同じように口をパカパカ開けて追いかけてくる。
(どこまで歩けば諦めるんだろうか…)
++++++++
さらにずっと歩いて、静かな場所に入ってきた。
散歩をしたりジョギングをしたりと、すれ違う人たちはいるが民家などはない。
ここでふと川の方を見たら、鯉が数匹、カルガモと小さなシラサギがいた。
(ここの鯉も近寄ってくるのかな)
そう思いながら覗いたら、全く持って見向きもせずに泳いでいる。
時々深く潜って、岩についているプランクトンを食べて、また道と並行して泳ぐ。
カルガモも自分で潜って餌を取っている。
小さなシラサギはまだ子供なのだろうか、細くて小さくて、でも尻尾にフワっと抜けた白い羽が1本くっついていた。(かわいい)
そんな小さなシラサギもチョイチョイ歩いては、岩を突っつく。チョイチョイ歩いては、また岩を突っつく、の繰り返し。
自力で餌を取っているように見えた。
(ここの鯉は自分たちで餌を取るんだなぁ)
さっきの鯉とこちらの鯉。
私だったらどっちがいいかな。
そんなことを思った。
この川を、例えば自分の人生として例えたら、私はどの辺の位置で過ごすのが幸せだろう。
餌付けされてる鯉は、その場その場で生きているように見えた。
与えられた場所で、じっとその場で働いて、言われるがままの人生。
でも餌に困ることはない。
ただ私には、口を開けた鯉たちが、
受け身的に見え、うつろな目をして生活してるようにも見え、
意識的に動き回っているようにも見えないので、不健康で不衛生なようにも見えた。
”こんな人生で良いのかな”
そう考えると少し寂しくなる。
別のその鯉たちが悪いわけじゃないんだけど、ちょっと意識的に別の場所に行けばそんな窮屈な暮らしをしなくてもよいのになぁ。苦しくないのかなぁ。こんな不衛生な場所でみんな固まってたら背びれや尾びれなど曲がってしまわないだろうか。
逆に、餌はもらえないけど自分たちで取るのはどうなのだろうか。
毎日餌をもらえるわけではないから、食べられない日もあるだろう。
日によっては、食べられずもう少し違う場所に移動をしないといけないかもしれない。
でも静かな場所で、鯉たちも少なく、のびのびと泳げそうだ。
餌を取るのに多少困るかもしれないが、時々他の鯉が横に並んでいる。
生存確認的な挨拶にも見えて、面白かった。
この鯉たちも実は立派に大きくなっていた。
もう長いことここにいるのかもしれない。
大量の鯉がいるわけでもなく、時々カルガモやシラサギが通り、自由に泳いでいる。
集団が苦手な私には、多少餌に困るかもしれないが、こっちの方が過ごしやすそうだな、と思った。
安否確認程度にお話しできる人達がいれば。
餌付けされる環境だと、エサ取り合戦が始まり居づらくなる。
もしかしたら、弱肉強食で食べられないかもしれない。
身体が傷つくかもしれない。
周りが鯉だらけなので、適度に運動が出来ないかもしれない。
そんな自分は嫌だなぁ。
静かな場所は、大漁の鯉たちがいた場所に比べて水が綺麗でゴミも少なかった。
一人で黙々考えるのが好きな私は、こっちの方がいいな。
時々カルガモやシラサギが声をかけてくれたら幸せ。
場所がいづらくなれば、さらに進んで落ち着いた場所を探せばいい。
自ら動いていた方が、自分の考えで動いてる感覚があるので自信が持てる。
たとえそれが、餌の無いところ、危険な所だったにしても、自分で決めたんだから納得は良く。
少なくとも、自分で考えるという行動を奪われない所の方が、活き活きしそうだ。
++++++++++++++++++++++++
と、まぁ、くだらないことを考えながら戻ったのである。
それにしても小さいシラサギはとてもかわいかった。
尻尾に乗っかってる、フワっとした一本の羽。
この子が大きくなったらどんな子になるのかな。
たどたどしい歩き方だったけど、自分で一生懸命餌を取っているようにも見え、私の気持ちを温かくしてくれた。
今日は、川を見ながら今後の自分について見直すきっかけをもらった。
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