見出し画像

「徹底から調和へ」Withコロナ時代のカフェ運営ガイドライン

みなさんこんにちは、S・Yワークスの近藤陽介です。

いよいよ本日、緊急事態宣言の全面解除が実現する見込み。

前回はスターバックスのイートイン再開を見て、カフェの役割とは何だったのか、ということについてまとめましたが、

ダッシュボードを確認すると、200名以上の方に読んでいただき、直接「参考になったよ」とメッセージをくださった方もいらっしゃいました。本当にありがとうございます。

今回は、緊急事態宣言が解除になるタイミングでもありますので、withコロナ時代のカフェ運営ガイドラインについてまとめたいと思います。


◆現状、カフェのコロナ対策はバラバラ

カフェの定義は様々ではありますが、お酒を出す居酒屋等とは異なり、カフェ業界にはなかなかガイドラインというものも示されずに来ましたので、当然、現在各社でとられている対応策もバラバラです。

今回、数日間に渡って仙台市内のカフェ(規模は様々)を視察してきましたが、コロナ対策としてお客様から見える対策としては10項目ありました。12店舗視察した段階でこれらの10項目をそれぞれの店舗でどの程度実践しているかをまとめたのが下の表です。(※前回記事のスタバは含まれていません)

画像1

①アルコールの設置②現金授受のトレー設置③スタッフのマスク着用は全店舗で実施されていました。しかしそれ以外の項目は各店バラバラです。

取り組みが最も少ないL店は全国チェーンで、8割が半個室タイプの席を持つカフェです。ほぼ満席となっていましたが、他のお客様との距離感もあり、正直、不安な気持ちになりました。マスクをしていないお客様の比率も、最も高かったように思います。

一方で、最も取り組みの数が多いA店は、仙台エリアで複数店舗を持つ喫茶店ですが、このお店は、コロナ対策を強く訴求し過ぎる余り、居心地の良さが損なわれてしまったのに加え、後述しますが、それをやってしまっては…ということをやってしまっていました。

いずれにしましても、社会の状況に合わせて、私たちは柔軟に対策をシフトしていかなくてはなりません。

◆第2波を想定し、切り替えの基準を定めておく

社会の状況に合わせるとはこういうことです。緊急事態宣言下にある期間のコロナ対策と、緊急事態宣言解除下にある期間のコロナ対策は、当然違っているべきだということです。

画像2

各国のシンクタンクが、今回のコロナ対応について大きく3つのフェーズに段階を分けています。

フェーズ1は感染が拡大中で、その拡大を何としても止めるということに国民が集中しなければならないフェーズです。日本では緊急事態宣言下の状況がまさにこのフェーズになります。

フェーズ2は、感染拡大が抑制され入院患者数も減少傾向にあり、経済活動とコロナ対策を両立させるフェーズです。つまり、今日緊急事態宣言が全面解除となる日本もこのフェーズに入るということです。

フェーズ3は、これはまだまだ先のことですが、集団免疫を獲得する段階、つまりワクチンが普及する段階です。イギリスでワクチンの生産が9月から始まると一部報道がありましたが、真偽は不明ですし、まだどの段階で日本人が摂取できるようになるかはわかりません。

私たちは当面、フェーズ1とフェーズ2が“行ったり来たりする“ことを想定して店舗の運営を考えなくてはなりません。現段階では、フェーズ2がこれからずっと続くと考えるのは危険です。良い悪いにかかわらず、政府からまた宣言が出ればフェーズ1に強制的に戻るわけですから。

大事なことはそれぞれのフェーズに合わせて、店舗での対応をしっかりと決めておくことです。この“決めておく“ということが重要なのです。

◆フェーズ1:緊急事態宣言下=「そこまでやるか!」

フェーズ1、つまり緊急事態宣言発令中のコロナ対策は「そこまでやるか!」が合言葉です。どれだけ対策をしてもお客様から反感を買うことはほぼありません。お客様から「そこまでやるか!」と言われるくらい、注意喚起の意味も込めて対策を徹底するべきでしょう。先ほどの表で言うと、手袋着用も含め全て実践するべきです。それらの対策が物理的に難しい店舗は、テイクアウトオンリーの決断も検討しなくてはなりません。

このフェーズ1の段階は、残念なことですが、カフェの基本機能である「居心地の良い空間で、素敵な時間を過ごす」が、制限されても仕方がない状況と言えます。もちろん今後研究が進み、効果的な対策と効果のない対策も明確になるでしょうから、その都度柔軟に対策を進化させていきましょう。

◆フェーズ2:withコロナ=「安心と基本機能の調和の実現」

フェーズ2の段階では、徹底から調和へと対策をシフトさせます。注意しなければならないのは、この段階でフェーズ1の対策を続けてしまうと「そこまでやるか!」が「そこまでやるかあ?」と懐疑的なものになる可能性が高いです。

前回の記事で、スタバのイートイン再開について書きましたが、私がその時感じたのも「そこまでやるかあ?」でした。だったらテイクアウトオンリーで良いではないか。もちろん評価は様々あると思いますが。

いずれにしましても、フェーズ2では、適度なコロナ対策を実施しお客様に安心してもらうこと、そしてカフェの基本機能である「居心地の良い空間で、素敵な時間を過ごす」という2つの目的を調和させて実践していかなくてはなりません。

では“適度なコロナ対策とは?“ということで、基本対策と3つのポイントを下記にまとめました。

①フェーズ2での基本対策

画像3

①アルコール:設置は必須です。

②トレー:今のところ必須。使用後も現金授受後は必ずアルコール消毒を徹底。

③アクリル板:今のところレジ前は必須といえます。画像は仙台のカフェモーツァルトさんですが、タクシーのドライバーを守るためのガードのように、物騒なイメージを与えるものではなく、このように木を台に使うなどして柔らかく表現する工夫をしましょう。※いくつかの店舗でこのアクリル板(もしくはビニールカーテン)に「コロナ対策実施中」のシールを目立つように貼っていましたが、これは不要です。コンビニで実践しているのでもう一般化されていると考えるべきです。

④窓・入口の換気:必須です。※夏場の温度管理方法については現在調査中です。

⑤マスク:スタッフは必須です。1枚単価が30円程度まで下がれば、お持ちでないお客様にお渡しすることも検討したいところです。

⑥席配置の配慮

ここが最も大変な判断と作業になります。1つ目の判断は、会話ができる配置にするか。2つ目の判断は使用しないテーブルの扱い方をどうするか。

私は会話ができる配置にするべきと考えます。「ソーシャルディスタンスを約1m」というのはある程度世界共通の基準になっているのは間違いありません。しかし、2名以上のグループでの来店でお客様のそれぞれの距離を1m離すのは、先程来上げているカフェの基本機能を著しく制限しますので、フェーズ2の対策としてはそぐわないと考えます。4名様席を通常よりも減らす、グループ毎の距離は基準の1mよりもひろくあけましょう。5名様以上の来店の場合は2グループに分かれてもらうことが現段階では賢明と思います。

そして使用しないテーブルの扱いですが、片付けてレイアウトを組み直すのが最善です。また、片付けられない場合でも張り紙で「使用禁止」を告知するのはフェーズ2では避けましょう。

画像4

Aの店舗は全国チェーンの1つですが、使用しないテーブルの上には画像の張り紙が全席に設置してあります。一方でBの店舗では、使用しないテーブルに一輪挿しを設置しています。どちらの方がお客様の居心地は良いでしょうか。もちろん席までご案内するオペレーションをどう構築するか等々ありますが、そこが工夫のポイントです。

そしてまさにこれが“調和“ということだと思うのです。せっかく席数を減らすわけですから、その分居心地の良さを強化できるような取り組みを考えましょう。

②ポイント1:「注意喚起」から「感じさせる」対策へ

フェーズ1は注意喚起も重要な役割でした。しかし、フェーズ2はここまで解説してきたように、コロナ対策を調和させて、感じてもらうレベルにすることがポイントです。「当店ではコロナ対策のためにこんな取り組みをしています」と大々的にポスターを掲げるのもフェーズ2では避けたいところです。既に一般化されている取り組みは、お客様に感じ取っていただき、そのように振る舞っていただくことにチャレンジしましょう。

③ポイント2:店内の全員がやっている=安心感に

安心感はどのようにして培われるか。そのヒントは“全員がやっている“ということです。既に通勤の電車は満員電車に近い状況が生まれてきていますが、その場合に、どういうケースが生じると人は不安を感じるでしょうか。おそらく、ほとんどの人はマスクを付けているのに、1名でもマスクを付けていない人がいる場合ではないでしょうか。

人は、全員がやっているということで安心感を覚えます。今回視察した店舗でそれを上手にやっていたカフェがありました。

入店すると、席へ案内をする前に、とても明るい笑顔で「いらっしゃいませ、どうぞアルコール消毒にご協力ください」と伝えてくれたのです。ポイントは3つ。笑顔。言葉で伝えること。そして入り口でということ。

そうすることで、お客様は不快に思うことなく、むしろ“この店内にいる人は全員がアルコール消毒をやったんだ“と安心することができます。オーダーを先にする場合は、金銭授受直後にアルコール消毒にご協力いただくと良いでしょう。

④ポイント3:スタッフを迷わせない&判断を委ねない

最後に、スタッフを迷わせないということが重要です。フェーズ2は、お客様に対しては感じてもらうことが重要と書きました。しかしスタッフに対してはしっかりとマニュアルを作成し、対策を徹底的に共有しましょう。

今回の視察の中でこんなことがありました。

そのカフェは店舗中央に、象徴的な大テーブルを設置し、通常は8名がけの席としていました。しかし今回のコロナ対策として、両サイド4席あるうちの真ん中1席を使用できないようにするため、「使用禁止」の張り紙を設置していました。

そこに5名様の来店がありました。このカフェは大テーブルを除くと、4名席が最大です。どうするだろうか、と見ていると、なんと使用禁止の席と端の席を入れ替えて、お客様をご案内してしまいました。恐らく、スタッフの方は5名様を同じ場所にご案内していきたいという親切心からそのようにしたのだと思いますが、他のお客様は衝撃を受けていました。「なんのために使用禁止にしているのか…」

やはり店舗の運営方針は特にこういう時期は事細かに共有しなくてはなりません。

◆まとめ

今は間違いなく特殊な状況です。これが絶対的に正しいというものはありません。ただし、やはりこういう時も何のためのカフェなのか。これを失ったら私たちの価値は失われるという“根源的価値“をしっかりと守りながら、これから本格化するフェーズ2のカフェ運営に取り組んでいきましょう。質問やより良い取り組みをご存知でしたら教えていただけますと幸いです!

今回はガイドラインということで長文になりましたが、最後までお読みいただきありがとうござました。

6月、7月はカフェ業界向けのオンラインセミナーも企画中です。また詳細決まりましたらご案内いたします。ありがとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?