始皇帝 中華統一の思想 『キングダム』で解く中国大陸の謎(書評)

総合評価

★★★★☆ (すごくおもしろい)

あらすじ

中華はなぜあれほど広大な土地を統一し続けることができているのか?

その謎は、秦の始皇帝(政)が中国を初めて統一した時代、すなわち春秋戦国時代にあった。

始皇帝ばかりが注目されるが、始皇帝は秦がそれまで作ってきた中華統一への土台を花咲かせたに過ぎない。始皇帝が生まれるずっと前からその道は繋がっていた。

残念ながら秦はすぐに滅びた。しかし、その後も中華は国名を変えながらもほぼ統一状態を保っている。これは世界の歴史上非常に稀である。

なぜそれができるのか。歴史を紐とく。

印象に残った箇所

『キングダム』を読んで、春秋戦国時代に興味を持った人も多いだろう。しかしその中で、現代の感覚だと疑問に思うことがあるのも確かだ。

なぜ秦以外の国は中華統一を拒むのか。中華一の国土を誇っていた楚を初め、猛者どもの揃う国々が集うなか、なぜ秦が連戦連勝を重ねることができたのか。などなど。そして、500年の戦国時代を始皇帝がなぜ一代で治めることができた理由は。

キングダムはそれ単体でも非常に面白いが、この本を読んで時代背景等を知れてより深く楽しめるようになった。この本は春秋戦国時代の中華の歴史の流れが非常に分かりやすかった。

一言で言うと、秦が中華初めての法治国家になり、それを中華全土に広げてたことにより、統一が続いているということだ。

春秋時代は、血縁による氏族制が社会が中華を覆っていたが、秦がそれを破壊し、新たな秩序を構築することに成功した。

それが「法家」の思想だ。キングダムのなかでも政が「法治」による中華を統一すると言っているが、これは政が生まれる100年以上前から激しく動き出していたものである。

政の6代前の君集である商鞅が大きく時代を動かした。

法家を用いた変法を行った。そして、「法の下では、身分は問わずに一律の罰をくだす。唯一の例外は君主ただ一人」というものだった。

これは厳粛に実行された。あるとき王子が法を破ったことがあった。そのときも王子の教育係が罰せられた。君主ではなくてもさすがに王子は罰せられないだろうという思いもあっただろうが、そんなことはないという事を示してたのだ。それほど厳しく行われた。

たしかにこれくらい厳しくしないと、社会は変わらないかもしれない。当時の権力者などそれまでの氏族社会がいいという人も沢山いる中で、法家の考えを取り入れていくのだから。

しかし、秦は新興国で国力もあまりなかったために国を変えやすかった。

反対に当時一番の力を持っていた楚は逆に氏族の数が多くて、反対が強くて法家にはとても変えられなかっただろう。つまり、国の大きさが足かせになっていたのだ。他の中央で勢力を誇った国々もそうだ。

強くて強大なことは時代の流れについていく足かせにもなる。

そして、秦がほろんだあとの漢のやり方も見事だった。秦は法家を中華全土で進め過ぎて反感を買って滅びた。

それにより、漢は法家と氏族社会のハイブリッド政治を行い、徐々に法家に移していくことにした。

それにより、何百年という秦よりも非常に長い期間の統一に成功したのだ。

やることは厳しく、反発のあるところは調整する。

その辺のさじ加減が見事だと思う。

こんな人にオススメ

歴史の流れを知るのにいい本だ。

・歴史が好きな人

・春秋戦国時代の大まかな流れを知りたい人

・キングダムの時代背景を知りたい人

にオススメしたい。

漫画がきっかけで、歴史に興味を持つ。

歴史を知ると時代を読める。旅先でも歴史に思いを馳せながら観光することができる。

例えば、函谷関は何も知らずに行っても、なんか小さい門があるなくらいにしか思わないだろうが、合従軍が何十万もの大群で攻めてきた場所だと思うと、それだけで感慨深いものがある。

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