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地道に“山登り”するより、パラシュート式がいい

以前、正規表現について、こんな記事を書きました。

伝えたいのは正規表現の基本ではなく、正規表現を避けてきた過去の自分に対し、敬遠せず、少しずつでいいからはじめてたらよかったのに!!!ということ。

そして今週。
とあるセミナーでIllustratorでのスクリプトを取り上げたのですが、およそ半数が未着手という状況。

  • 使ったことはない(わからない):565人(40.7%)

  • 主にほかの方の書いたスクリプトを利用している:387人(27.9%)

  • 試したことはある:243人(17.5%)

  • 使ったことはない(怖い):146人(10.5%)

  • 自分でも書いて使っている:37人(2.7%)

  • その他:10人(0.7%)

「こんなことまでできるなら、使ってみる!」という反響が多い反面、「全然わからなかった」「スクリプトなしでがんばる」という意見もチラホラ…

(今の)自分は「使わないとう選択肢はないよね」というスタンスなので、プレゼンとしては失敗でした…

これについてツイート(ポスト)したのですが、いかんせん、温度感が違うな…と、ちょっと掘りさげて考えてみました。

実は、私自身、スクリプトには拒否反応があり、どんなに「使うと便利だよ」と言われても聞き流していました。アクションやプラグイン、Illustratorの進化の範囲内で仕事をしていこうと考えていたんです。
手が早いこともあり、チカラ技での操作も得意なのですが、日々、細かい作業を繰り返すなかで「もうちょっとラクできるんじゃないか!?」と少しずつ取り組んできた結果が今なんです(7年くらい)。
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「20時間の仕事を3時間で終わらせるために、準備に10時間かける」みたいな感覚ですが、長いスパンで考えると、むちゃくちゃインパクト(差)が出ます。
速く仕事を進めることは、ミスを減らすことにもつながり、経営視点でも人的リソースを軽減できますので、取り組まない理由がありません。
まず知っておきたいのが「使うだけなら、スクリプトの中身への理解は不要」ということ。私自身、コードの中をみはじめたのは最近ですし、ボンヤリとしかわかりません。
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使い込んでいくステージとコードへの理解を表にしてみましたので、ご参考までに。

https://twitter.com/swwwitch/status/1707059410760294716

マスターする(マスターできる)という幻想

正規表現やスクリプト、Keyboard Maestroなどについて「今年こそはマスターしたい」「〜について極めたい」という表明を耳にしますが、(失礼ながら)「いや、ムリだよ…」と思ってしまいます。

正規表現にせよ、Illustratorのスクリプトにせよ、なんならIllustratorでさえ、「すべてを理解し、マスターする」なんてありえません。
視点を変えると、所属先や担当する案件によって必要とされる機能(用途)は異なり、日々の仕事をこなしていければ十分です。

正規表現に関しては体系的に解説することを試みた良書もありますが、「理解できること」と「業務で必要とされる正規表現を書けること」には大きな差があります。

「知識として体系的に理解する」という考え方は、いわば学校教育の“影”(ダークサイド)、いわば、幻想です。どんな学校でも授業の回数/時間という制限があり、扱えるのは一部でしかありません。

これに加えて愚直なトレーニング(繰り返し操作)や創意工夫を、膨大な時間をかけてはじめてものになりますが、「学校を卒業すれば、それなりの戦力になるだろう」と期待している人が多いようです。

どんなスクールであれ、カリキュラムとして作成したら、次のターム(期)まで変更できません。しかし、その間にも世の中は動いていますので、カリキュラムは必ず陳腐化していきます(もちろん、先生・講師によっては授業内で最新動向について補足されているとしても)。

パラシュート勉強法

野口 悠紀雄さんが書籍『「超」勉強法』(1995年)のなかで提唱したパラシュート勉強法をご存知でしょうか?([第四章]数学の「超」勉強法)

数学を道具として用いる大部分の人にとって、厳密な理論や証明は不要である。「基礎をきちんと勉強していないから使えない」と、罪悪感やうしろめたさを感じる必要はまったくない。

高山のすばらしい空気や眺望が目的なら、ケーブルカーでも一向に構わない。ケーブルカーがなければ、飛行機でその高さまで連れていってもらって、パラシュートで降下してもよいのである。

さすがに正規表現については基礎的な知識が必要ですが、スクリプトにいたっては、ある段階までソースコードを見る必要はまったくありません。
つまり、「ブラックボックス」であってもツールとして利用さえできればいいんです。

一方、「マスターする(マスターできる)という幻想」にとらわれている方ほど、挫折しやすい傾向があるように思います。一向に頂上すら見えない山登りを続けるのは誰でもイヤになってしまいます。

大切なのは、日々の仕事のなかでトライ&エラーを繰り返し、ワークフローを少しずつ最適化していくこと。これしかありませんが、少なくても数年はかかります。

“つまみ食い”や“雰囲気”程度でもよい

「がっつり取り組む」や「きちんと向き合う」という姿勢はもちろん重要ですが、“つまみ食い”的に情報に触れることの重要性を主張したい。

  • こんなことができるんだな〜

  • こんなアプローチもあるのか

などなど、書籍でいえばパラパラめくる程度でOK。

「読まずに積んでよい」と言い切った書籍『積読こそが完全な読書術である』が話題になりましたが、そのくらいのスタンスでもよさそう。

必要になったときに「あ〜、なんかやり方あったな〜」と思い出せたり、極端な話、「抜け道がある」ことがわかればいいんです。

別のパラシュート

この記事を書くにあたり『「超」勉強法』を読み返していたら、「パラシュート勉強法」について大きく思い違いしていたことに気づきました…

自分にとっての「パラシュート勉強法」はこんなイメージ。

まずは思い切って、飛行機から飛び降りる!
そのままだと落下して死んでしまうので、無我夢中でパラシュートを開き、生きて着地する。

得てして仕事では「取り組んだことがない」ことや「自分のスキルでは、ちょっとムリ目」なことが生じますが、そんなとき、基礎から勉強している時間はありません。

その場面では“付け焼き刃”的な対応でも、必要にかられ、“だましだまし”実践して仕事としてやり遂げること。
それを繰り返す結果、あるタイミングで点と点がつながるのです。

アンテナを立てる

年を重ねるごとに、新しいことを覚えたり、別のやり方をするのが億劫になります。自分も同じです。

ついつい後回しにしたいところですし、「まとまった時間ができたらやろう」と思いますが、まったくノータッチのままだと、気づくと何周も取り残されてしまいます。

ニュアンスとしてはこのくらいで十分。

  • 流し読み

  • ちょっとかじる

  • チラ読み

  • ブックマークしておく

特に今はAIの出現で、仕事のやり方・あり方が劇的に変わっていく折り返し地点を過ぎたところ。

いつもアンテナを立てて、少しずつ。
意識的に「おもしろがる」ことで楽しみながらキャッチアップしていきましょう!


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