フォーマットとしては悪夢というしかないKindleの固定レイアウト(電子書籍)
「電子書籍といえばKindle」という状況ですが、ちょっと違うんじゃないか!と思うんです。
「固定レイアウトのKindle」という悪夢
「電子書籍といえばKindle」という流れが定着しつつあります。ひとくちにKindleといっても2つのタイプがあります。
リフロー型:中身はHTML、利用者がフォントや文字サイズ、行間などをコントロールできる
固定レイアウト:すべてが画像
後者の「固定レイアウト」のKindleは、すべてが画像になっているため、次に挙げる電子書籍のメリットをまったく享受できません。
書籍内のリンク(目次、本文=ブック内リンク、索引)
テキスト検索
音声読み上げ
テキストのコピー&ペースト
外部サイトへのリンク
100歩譲って「目次から該当箇所にクリックで移動できない」なんて悪夢でしかありません。
なお、ここで言っているのは「技術書」に限った話でマンガは別(もちろん、目次からのリンク程度はあるに越したことはありません)
出版社が用意しているPDF版
インプレス、技術評論社、マイナビなどの出版社は自社サイトにてPDF版の電子書籍を販売していますので、そちらを利用するのがオススメ。紙版よりも、少し安く買えることもあります。Amazonが消滅してもPDFなら読めます。
直販で売った方が利益率も高いハズなのに、なぜか、どの出版社もアピールされていないようです…
なお、PDF版がすべてOKかというと、ファイル容量を減らすために画像を圧縮していることがあり、小さい図版を「拡大してもよく見えない…」ということもあります(Kindleよりはマシ)。
軽いのが欲しい人、キレイなのが欲しい人がいるので、2バージョン用意している出版社もあります。
DRM(デジタル著作権管理)
Kindleの固定レイアウトという俗悪な形態が定着する前に「PDF」がその地位を得ることもできました。
PDFにはサーバーソリューションがあるのですが、当時アドビはAdobe Digital Editionsを普及させかったため、二の足を踏んでしまったのです。
ちなみに、PDFのサーバーソリューションを用いると、「パスワードによる制限」のほか、次が可能なんです。
読者を限定できる
閲覧期間を限定できる
コンテンツをアップデートできる
テキストのコピー、印刷不可などの制御
その一方、DRMを重要視する出版社が選んだのがKindle。選んだというよりは、流されてしまったというニュアンスです。
〈Adobe Digital Editions〉って何?
InDesignでオーサリングしたコンテンツを特別なフォーマットで書き出し、アドビのアプリで読めるというもの。「ADPS」と呼ばれていました。
書籍も出ていました。
アドビのサイトでも、ひっそりと消えつつあります。
URLに「/jp/」がついているのに英語だし…
読者目線での不満(なぜ、2倍?)
出張が多いこともあり、出先で参照したい場合、紙版と電子版の両方を購入することが多々あります。「コンテンツにお金を払っている」つもりなのに、紙版と電子版で2倍払のは腑に落ちません…
インプレスや技術評論社(など)が「紙版購入者向けに、PDFをダウンロードできる」という試みを行っていましたが、そもそも知られていないし、定着しなそうです。
電子版の落とし穴
Kindleに限らず、電子書籍を扱っているストア・サービスがクローズすると、数年内に読めなくなります。
次のような可能性がある場合、紙版での購入が吉です。
繰り返し読む
10年後にも読み返す
アプリケーションの解説書のように「旬」があるコンテンツはよいとしても、長く読みたいものは紙版で残しておくのが吉。
紙の優位性
紙の優位性はランダムアクセスに優れていること。
次のようなときにフィジカルに探すのは、ある意味、検索よりも速かったりします。
右ページの上のあたりにあった図版
書籍の中盤あたりだったような…
絶版の書籍こそ電子版を!!
たとえば『About Face 3 インタラクションデザインの極意』という名著があるのですが、現在、5万円近くになっています。
このような書籍がそこそこの点数あり、こういう書籍こそ、電子版で出したらいいのに!と思いますよね…
出版社に聞いてみたところ、(特に翻訳物は)権利関係などが面倒なようです。最悪スキャンしたものでも読みたいなと思いますが、全員に不幸な状況です。
まとめ
ここで憂いていても何も変わらないのかもしれませんが、まとめておこうと思いまして。
コンテンツの消費のされ方は変わり、コンテンツ自体も変わるのが常です。
ちなみに、自分の場合、次のように利用しています。
Kindleの無料サンプルをダウンロードして中身(や目次)をざっと見る
基本的には紙版を購入
持ち歩きたい場合にはKindle版も購入
出版社がPDFを用意している場合にはPDFを優先