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塩分という厄介な必需品

朝ラー(朝食にラーメンを食べる)の習慣がある青森県は、全国最短命県(寿命が最も短い県)として、ここ数年不動の位置を確立し、一方、県を挙げて“減塩”に取り組んだ長野県は、最長寿県となりました。また、それにならい、減塩に取り組んだ大分県は健康寿命を大きく伸ばしました。これほど寿命というものに大きくかかわりを持つ「塩分」とは、、、


塩の魅力

海の中で生命が誕生して以来、生き物はみな、ナトリウム(塩)を使って命を維持する仕組みをずっと受け継いできました。その後、陸上に上がった我々の祖先は、陸上に存在するわずかな塩分でも感じ取ることのできる超高感度の塩センサーとしての「舌」を装備し、そして、体内から塩を逃さない「腎臓」を作り上げました。この「2つの武器」によって、 “わずかな塩でも生きられる体”へと進化したのです。甘味であれうま味であれ、そこに少しでも塩分が伴っていれば、「舌」からの報告で脳をより強く刺激し、「おいしい!もっと食べろ」と促す仕組みが備わったのです。その後、事件が起きます。8000年前のことです。人間が自分たちで塩を作り出す(自然界のものから取り出す)ことができるようになったのです。その後の人類は、塩分の摂りすぎによる病に苦しむことにもなってしまいました。
肥満、夜間頻尿、高血圧症、脳卒中、慢性腎臓病など塩分と大きくかかわる病気はたくさんあります。日々の生活に「減塩」を取り入れ、健康寿命を延ばしましょう。
塩は植物由来でも、動物由来でもありません。科学が発達した現在でも“塩”を人工的に作り出すことはできません。“塩”の成分は我々の体には必須のミネラルです。つまり、人間が生きていく上で絶対に必要なものであり、代用の利かない、世界に唯一無二の食品が“塩”なのです。精製塩・食卓塩と言われる塩化ナトリウムと天然塩は別物です。日本の天然塩の多くは海水から作られ、マイクロエレメントと言われる微小かつ貴重なミネラルが豊富に含まれています。
塩は、身体の血圧を保ち、食物の吸収を促進し、脳からの指令(神経伝達)をスムースに行い、筋肉の伸縮を安定させるなど様々な役割があります。塩をしっかりとらないと身体の安定は得られません。一方で、塩分の摂り過ぎは寿命を短くするとの報告を多数認めています。日本の最短命(寿命が最も短い)県は青森県であり、塩分摂取量が最も多い県とされています。一番寿命が長い県である長野県と健康寿命が飛躍的に伸びた大分県は、ともに県が“減塩”を積極的に指導・支援した結果です。病気に対しては、高血圧の方の4割は減塩が効果的とされています。現代病と言われている慢性腎臓病に対しても、減塩は腎機能維持に有効とされています。また、減塩によって“夜トイレに起きる回数が減る”ことが証明されています。
過度の塩分制限はよくありませんが、病気などで食事制限の必要がない方は、1日10g程度を目安に塩分摂取を行いましょう。

減塩のコツ!

頻尿や夜間覚醒の原因になったり、腎臓病、高血圧症などにも悪影響を与え、脳梗塞、心筋梗塞の発症率を上げ、ひいては健康寿命を短くするといわれている“塩分”。
現在の日本人の塩分摂取量は、男性:11.0g、女性:9.3gですが、
推奨摂取量は男性:7.5g、女性:6.5gとなっています。
つまり、男女ともに“約3割の減塩が必要”と言われています(2020年:厚生労働省)。

そこで、いかにして上手く塩分を摂取するかを考えてみました。
①   「かける」ではなく「つける」:刺身、お漬物、とんかつなどに、しょうゆやソースをかけることを避け、調味料を小皿に出し、少量つけることにより塩分の摂取を抑えることができる。また、その際、“減塩しょうゆ”などを用いるとより効率的である。
②うまみ成分や香辛料を活用:減塩はおいしくない、味がしないなどの印象がありますが、旨味成分のある食材(かつお節、昆布、煮干し、干ししいたけ、トマト、チーズ、酒、香味野菜)や香辛料(コショウ、わさび、マスタード)を用いることで美味しくいただくことができ減塩も進むようです。
③   食物繊維をたくさん摂る:食物繊維には腸内で塩分を吸着し便と一緒に排泄する働きがあります。結果的に塩分の体内への吸収が減少します。全粒穀類、野菜、芋類、こんにゃく、きのこ類、海藻類、果物などを活用しましょう。

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