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【感想19】ヴィーガンズ・ハム

 菊花賞が予想とほぼ合致する形で的中したのでウキウキで家を飛び出たけど、やることないし3時間あ櫛ってことでパチンコしたら今日の勝ち分の倍負けました。小当たりの2連で終わったし俺もレールガンの台に蹴り入れる権利はあるっしょ。今日は2枚の諭吉が飲まれたから2発分はある。

 で、わざわざ渋谷に出向いて見に行ったのがヴィーガンズ・ハム。
本当は金曜に行くはずが、出社予定が在宅変更+21時まで仕事終わらないでスルーする羽目になったので、焦らされ切った状態で見に行くことに。
まァ~~~~~~面白かった、見てて楽しめました。

 あらすじは『店を襲撃に来た過激派ヴィーガンを殺したけど、隠蔽するために作った人肉ハムを売ったらおいしくて店が繁盛した』ていう出オチ。
これが本当にすべてなんだけれど、これで1時間半通し切るし何ならこのあらすじの内容は冒頭10分ぐらいで消化しきるのに残りの時間も笑ってられるし悲壮な空気もないので上映館が少ないのだけが本当に惜しい映画でした。








 元々は覆面の襲撃犯から偶然一人、覆面を取って顔を確認できた男が運転中に自転車こいでるところに出くわした時に衝動で轢き殺したのを隠蔽するために行ったことからすべてが始まります。
バラバラ死体にすればいいよ→食ったら案外美味い→じゃあハムにするか
という滅茶苦茶な流れではあるけれど、これが夫婦と飼い犬の2人と1匹がそれぞれ行った結果始まってるのがまあ面白い。
連続殺人犯の紹介番組?をよく見ていたソフィー(妻)はそれを参考にしろよとヴィンセント(夫)にすべて押し付ける。バラした時に落ちた耳を拾い食いしたペペール(飼い犬)がもっと寄こせと言わんばかりに吠える。それを見たヴィンセントがハムにした。ていう流れ。
この3者ともに行為自体は最悪なんだけれど、なぜかめちゃくちゃうまい。それを間違って売ったおかげで経営危機が脱出する。
これだけであらすじの内容が全部消化されるし、ここの流れは本当にとんでもなくテンポよく進む。だから見ててすぐ飽きるとかよくわからないとか、マイナスな気持ちが出てくることがないのはすごくいいと思う。

 インターネットではかなり腫物として扱われているヴィーガン、それを思いっきり腐す表現ではあるけど振り切っているせいで余計に面白い。
暴徒じみた冒頭の集団は勿論、気のよさそうな娘の彼氏がヴィーガンと発覚した後に出てくる「肉に近づいたものだから食べない」「乳製品も動物からの搾取で出来てる」「肉を口にした奴とはキスできない」。これが個人の自由って言ったそばから出てくるからすごい。
逆に肉食家サイドもひどい。抗議活動にツイッターで5000RTはされてそうな内容のヴィーガンdisを放っていくし、食べたらうまいというのもあって9歳のぽっちゃり目の子を見て涎垂らしてそうな目で見る夫婦もなかなか酷い。陰茎すら食べれる部分ということになってるのでモザイクなしでしっかりめに陰茎も出てくる。しかも食べるシーンも出てくる。
ちゃんとまとも(穏便であったり押しつけはしない)な人もいるのでヴィーガンに対する90分かけた暴力ではないっていう映画ではないです。

 そもそも話の軸が夫婦関係の再生になってる。それでも大分ネジが飛んだ軸だけれども。
ヴィンセントが殺害から精肉までを請け負っている代わりに、ソフィーはそそのかすだけと元の夫婦のパワーバランスが顕著ではある。けれど経営が上向きになるとこの二人は娘が家を出ていない頃はそうであっただろうぐらい仲良くなるし、そんな仲睦まじい会話をしながらヴィーガンを殺しまくってる。
こういったスプラッター寄りの描写もBGMやシチュエーション込みでギャグテイストを盛り込んでいるので、痛々しさはあんまりない。最近だとブレット・トレインとかが描写の仕方は似てる感じがする。
あらすじからもわかる通り、人体切断や殺人と描写としてはかなり人を選ぶものではあるけれど、軸になっているストーリーや見せ方でかなり和らげているのもあって途中のバッタバッタとヴィーガンを収穫していくところからはヘラヘラしながら見れる雰囲気になってます。

 ヴィンセントは2人目に手をかけるまでにかなり苦悩します。冒頭の清々しさを一気に捲るぐらいウダウダしてる。
ただでさえ人殺しになるし、ヴィンセント自体は目利きもできるのでいい肉にするためにはと考えてしまうのもあって手が止まってしまう。もともと離婚手前だったソフィーは自分が直接手を下さないのをいいことにさっさとやれ、挙句の果てには離婚を切り出してその場で知り合った若者と意気投合して下手すれば帰ってセックスする気満々。でも若者がヴィーガンだと知った瞬間目つきが変わり、精肉する気満々で家に連れてくる。
この一件で思い切りの良さを見せ(てしまっ)たところから夫婦仲が一気に改善され、ヴィーガンに対して思い切りが良くなるほど仲良くなっていくのが皮肉なもんです。


 冒頭からラストまでかなりまとまった展開の仕方とネタの出し方をしているので一作品としての完成度はかなり高いです。
貶したり乏したりとかではなく、単純に不謹慎なネタでキッチリ作り上げた映画になってます。上映館は少ないけれど、笑い声が頻繁に上がってくるぐらい楽しんでみている人が多かったので、今おすすめできる映画館で見たい映画の一本です。

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