【感想139】ラストマイル
やっぱり得意じゃないタイプの邦画だったな。て感想以上に「これで問題提起に…なれてるか?」ていう薄っすらとした不安が残った。
『アンナチュラル』『MIU404』は見ないまま行ったけれど、医療や警察の現場でそれぞれ顔なじみある人が出てきたなーぐらいの関連なのであんまり事前に見てる見ていないの影響はなかったと思う。
なので誘われたら別にドラマ見ておかなくてもいいよ、面白いと思ったら見よう、でいいんだと思う。
他人に勧めやすい ★★★☆☆
個人的に好きか ★★☆☆☆
シェアード・ユニバース、と銘打って国産でMCUの踏襲を行う試みだけれど、今作の舞台はかなり良い設定だなと思った。
物流現場でのままならない関係性を中心とした映画で、ドラマ2本で展開した2つの異なる現場に無理なく関われるという点と、接点を持ちつつも深く介入はできないのでドラマ勢が深く関係することが難しい、の2点のおかげで単作の映画として機能している。
そのうえで上記の社会問題をテーマとして抱えているので、MCUフェース2辺りの作品と構造としては全く同じになる。
おかげでこの映画だけ見るのでもいいですよ、気に入ったらドラマも見てね、ていうスタンスで送れるのは現在のMCUが直面している「予習しないといけない、と観客が思っている」ていう部分をうまく避けている。実際、俺もそういうものかと知ったから見に行ったので、効果はちゃんとあるんだと思ってる。
その口コミと同時に多く目にした映像としての面白さについては、映画だからとか抜きにして「映像作品として駄目だよね。」ていうのが観終わった直後の感想。
テレビ番組や動画サイトでCM/広告が挟まれるけれど、あれは集中をいったん切っていいですよ、ていう向こう側からのメッセージだと思ってる。
そういったものが挟まれない映画では映像の緩急もあると思ってて、例えばミュージカル映画だと各楽曲が歌っていたシーンを思い出すキーになりつつも、シナリオへの理解に使う力を休めて音楽を楽しむことに舵を切らせる。
ただ『ラストマイル』内ではこういった緩急や印象に残るショット、受け取り手になる観客が面白がれる絵が特にない。
例えば予告でも出ている、ある人が演じる人物が身を挺して倉庫の機能停止をもくろむシーンも、飛んだ、の印象が強く残っていて、かなり特殊な構造の倉庫を活かしたイメージの埋め込みはあまりないなっていうのが初見時を振り返った時に思った。
他にも12個ある社訓のうち1つを説明するシーンでは、対象になる社訓の1つのみ焦点を当てて、残り11個はフレームアウトしているものすらある。なので物語に必要な要素だけピックされて、それを補強できる(いわゆる考察のネタになる)要素を観客が勝手に拾えるような工夫がないのはつまらないことするなとは思った。
褒められている脚本部分も、社会問題への切り口をエンタメ作品として昇華するためのロジックが巧いとは思いつつ、物語としては微妙に乗り切れない展開だったのでボルテージが上がりきらなかった。
なかなか難しい塩梅だけれど、ロジック以外で面白いところが特にないのは映画というより物語としては厳しいなってのが本音です。
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