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邦題がまあまあわからなくもないプアン【感想7】

 たまたま入った銭湯のことを調べたらフレームアームズガールのことが出てきて、よくよく考えたら立川が舞台だって気づいきました。
見たのも4年前にはなるし、立川なんて行く機会ないわ…と思っていたら自ら僻地に移住したんでね。最近じゃ家の周りより映画見に行ったついでに散策してる立川のほうが土地勘ある気がします。

 で、なんとなく気になって見に行ったプアン。タイ映画はたいして知らないのでロードムービーってことにだけ惹かれた感じです。ただ見終わった後は22年下半期どころか今年見た中でもなかなか面白いじゃん。(二枚目少女漫画キャラ)と明転とともに自然と腕組みしている自分がいました。

バレなしのさわりと感想

 ストーリーの入りとしては白血病で余命が限られていうウードが、ニューヨークでバーテンダーをやっているボスに「元カノに返しに行きたいものがあるから、付き添いしてほしい」といった感じの連絡をして2人で旅に出る。ていうロードムービー臭が強い内容。
ウードの亡くなった父親がやっていたラジオ番組をカセットに録音しており、それを流しながら車で旅をしていくのでカセットを用いた演出も挟まってきます。このカセットの演出もなかなかセンスがあるというか、あるシーンでは見ていて久々に「うわッ、めっちゃいいじゃん...」てな感じに唸らされました。
本筋でも少しシニカルな目線は入ったものの、個人的には結末はロードムービーとして大変好みな仕上がりなのでしばらくはこの映画をお勧めしていると思います。




バレありの感想

 割と序盤で元カノへ返す件は終わりますが、元カノは一人なわけがない、とチー牛が悲鳴を上げる掌返しによって話は継続していきます。
一辺倒な流れかと思いきや3人ともそれぞれ別々の流れというか、最初の元カノ以外はろくな別れ方をしていないせいもあってこれ絶対現実だったら嫌われたまま終わるじゃろ…とやや引いてしまうぐらいの展開が2連続できました。
3人目のところは結構理解が遅れましたが、娘とウードの窓越しでのやり取りで夢オチだったんだろうなとなんとなく掴み切れました。あえて避けた理由は明言はないけれど、シンプルに喧嘩中に会う約束したけど仲直りしてやっぱ会うのヤバイじゃろ…とコッソリ掌返しした感じでしょうね。1,2人目と比べるとあまりにも大味すぎる感じはしたので少し焦りました。マ、そういう所がいいんですけどね。(ツンデレベタ惚れ女)
余命が短い、ということを隠していることもあって三者三様でそれぞれ尾を引きそうな別れ方になっていたのも面白いですね。このあたりの後日談がパンフレットとかにあったら読んでみたいです。

 上の話をやっている最中は元カノの名前が書かれたカセットを入れ替えることで話の転換を示唆していたのもかなり好きです。この辺りはいいっすねぇ~~と呑気に見ていましたが、先述のカセット演出で「うわッ、めっちゃいいじゃん...」ポイントが来ます。
カセットにA面B面があるように、この映画の話の大きな転換としてカセットのA面B面を切り替える演出があります。それぞれをウード/ボスに見立てているので元カノ行脚をしていたウードを軸に据えていたところから散々背景簿化されていたボスの人生を振り返っていく内容が軸に代わります。映画全体がカセットを使った表現で構成を伝えているのがめちゃくちゃ好きですね。

 このボスの昔話の掘り下げが旅の目的としても話の本筋としてもゴールになってきますが、第一印象としては「昼とか夕方に流し見するドラマみたいな三角関係じゃん。」が9割です。本当にそういう感じなんで…
感情移入ができるかどうかは本当に人次第ですが、ウードがつけこんでしまったりイケると思って押しまくったりは男目線だとめちゃくちゃわかる気はします。ニッチな共通点があって家に何日も泊まって嫌悪感ないならいけると思っちゃうじゃん、普通。元カノ行脚も、多分最ボスへのカミングアウト前に最後に味わう友達としての旅なんだろうなとも思います。
実際、ウードが運転できるようなカットが最初にあるのに運転できるとバレずに運転手役として動いてもらったり、それ知らないってなんでだ?と思うような部分も実は付き合いは深くはなく、同じ国籍でたまたまきっかけがあって知り合っただけなんですよね。

 はじめこそあらすじにある様な話だと思っていましたが、そこから少しずつ過去にさかのぼりながら根幹の話を持ってくるので、終盤はかなり入り込んで見ていられました。結末としてもロードムービーらしさがあり、個人的には結構好きな一本になりました。
本編でも言われてた「他人の人生に勝手に入り込んで邪魔をしているだけ」というセリフは額面通りに受け取るとそれはそうという感じのラストではありますが、何かしらきっかけがないと人は変わらないのも事実だしそれがあったからこそ、というような結末をそれぞれの登場人物は迎えたと思っています。
ミニシアター系での公開であんまり見れる場所はないけれど、かなり強めにお勧めしたい一作です。

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