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【感想66】バービー

いくつものパロディがあったり、ノンストップで進んでくれるコメディ調のテンポだったりと純粋なエンタメ映画としても楽しかった。
作品外のガヤがとんでもないことになってるけれど作品自体が悪いわけじゃない、阪神タイガースと阪神タイガースファンみたいなもんだから。

他人に勧めやすい ★★★★☆
個人的に好きか  ★★★★☆

名前ぐらいなら誰でも知っているぐらいのビッグIPであるバービーを使った映画化。巷ではフェミニズム映画の文脈で語られているけれど、実際には男女関係なく各個人への啓蒙になっている。

バービー人形自体、女の子向けのおもちゃというのもあって「バービーが主役」「ケンはバービーを映えさせる役割」「バービーは女の子に夢を与える偉大な立ち位置」という認識がバービーランド側の常識というのがガッツリ描かれる。
言ってしまえばひと昔前までの男社会の性別逆転した社会を描いているようなもんで、ライアン・ゴズリングのケンをはじめとして男が介入する余地がない社会を形成しているのがバービーランドになっている。

そこからどう動くんだ?というのがケン目線だと、バービーランドを異世界転生の俺TUEEができる社会に塗り替えました、というのが近いと思う。
バービーが各職業や地位を網羅している中で、ビーチにいる事とマーゴット・ロビーのバービーとより近しい関係という事以外の役割がなく、それに縋る以外のできることがないケンが実は別の世界では圧倒的権力を持てる属性なんだと言われるんだから、そりゃあウキウキで男社会を持ち込むよ。

結論としてはマーゴットバービーもライアンケンも、お互いに持っていた役割や地位への固執から解放されて改めて自分自身を見つめ始めるというスタートダッシュを描く。
提議した問題自体、答えを明確に出せるわけがない(あったら社会問題になってない)ので気付きを与えるきっかけとしてもいい映画なんじゃないかなと思う。
現にマテル社CEOは反省の色は出してるけど根の思想は一切変わってないので、進展としてはバービーランドの住民の自己認識の向上がほとんどを占めてる。これは字幕でもハッキリ提示されたところ。

ただBGMもなく女性としての怒りを熱弁されるシーンは正直胃もたれするくどさを感じてしまったり、パロディが多分に含まれるおかげでついて行けない人が多かったり、ラフな気持ちで見に行くと日本人としてはかなり難しい部類の作品だなとは思う。

それでもアイデンティティの発掘というテーマは20代に特に刺さる部分ではあるので、いろんな人に見てほしいなとは思う。そのテーマに気づけるのかは怪しいけれど。

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