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【感想41】フェイブルマンズ

宣伝文句で言われているようなハートフル映画とかスピルバーグの自分語りした武勇伝、というよりも自分が心動かされたりいつまでも頭に残り続ける出来事をベースに構築された物語といった感じ。

フェイブルマン一家の長男サミュエルが、主人公でありスピルバーグの現身のような存在。2時間半かけて家族、主に両親のエゴに挟まれた葛藤の末にどういう道を辿るのかを眺める映画といった感じ。
最後には有名な逸話が入るけれど、それ以前の映画監督としてのキャリア以前を伝えるためだけに注力しているんだなとも思った。


芸術を重んじる母親と科学を重んじる父親、というような立ち位置ではあった。けれど母親は親の影響で芸術という麻薬のような存在には100%漬からなかったので理解はするけれどサムが進む道を示す指針にはならない。父親は早くお遊びにしかならないことはやめろと理解してくれないけれど、サムが進みたい道への指針として助けてくれる。
何から何まで真逆の両親に挟まれた上での悩みという部分でも苦しむし、どっちも優しい言葉をかけはするけれど理解されていないような雰囲気を感じ取れるのが見ていて痛々しく感じた。

あとはサムが撮った映像で真逆の意味合いで撮ったのにかけられた言葉はその意図には合わないという対比できるシーン。
母親の不倫に近い、父親以外の男に惹かれているのがわかる映像をカットした家族ビデオを見て「これこそが本当の私」と言われた時には当のサムは世界が終わりを迎えることを悟ったような表情になる。対してプラムで上映した「おサボりの日」を撮った映画では最後に何か仲良くなるためのきっかけにと、ヒーローのように映したクラスメイトには「こんなのは俺じゃない」と絶望した顔で言われたりするけれど、当のサムは何故そんなことを言われたのかを噛み砕くまでに時間を要していていた。
撮られる側だけじゃなく撮る側にも傷を負う加虐性が込められている事なんかの、映像として残すことの残虐さを気分悪くなるぐらい表している大好きなシーンになった。

家庭が裕福で恵まれている特権階級だからこその悩みという感じではあったり、実体験に沿っているという情報込だと大化けするサクセスストーリーになるうえに、自分の話をエンターテイメントとしてうまい塩梅に昇華しているっていう付加価値的な意味合いでの評価がつけてしまう感じではある。けれど、見ていてつまらないことはないし昨今流行りの「映画の映画」に分類される中ではかなり優しい味になっているので気軽に見に行ってほしい。

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