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2022年上半期のめちゃくちゃ面白い映画3本+オマケ

 読書に続いて社会人になってから週2ぐらいで映画館に通う習慣が増えました。映画館自体、運が悪いととんでもないキチガイにサンドイッチされながら2時間拘束される地獄になりますが、それを差し置いてでも見に行く魅力やメリットがあるので個人的には映画館で見るほうが好きです。
そんなことをしてきて約半年、見るジャンルも徐々に広がってきてオモシレッ、オモシレッスワァ……以外喋れない程心惹かれる映画にあたることも増えてきたので、いったんまとめとして書き出します。
ちなみに最近は映画館近くの喫茶店で本読みながら頭を物語読解モードに切り替えてから見に行くのが休日の恒例になってます。

流浪の月

 湯川のいない容疑者Xの献身に近い。
家出したクソガキと匿ったせいでロリコン認定された男文と、当のクソガキである更紗が大人になってからの時間を描いていくのが本筋。
見ててきついのは主役二人に対して理解が浅いというより、自分の常識で測っている同性相手や恋人の二人。世間では拉致されてボコボコにされたウルトラマンのような扱いの更紗やロリコン認定されている文ではあるけど、当人たちはむしろお互いの居心地の良さを自覚しています。方やDV気質の横浜流星、方や映画ではほぼいないモノ扱いの多部未華子なのでこちら側はどういう視点で見ても主役サイドに同情しやすくなっています。次点でセックスアピールしても一切手を付けられなかった多部未華子に同情しやすいです。
こういう何とも言い難い心地悪さを抱えながら進んでいくわけですが、亮(横浜流星の役どころです)のDVの緊急回避で更紗が文の隣に引っ越して以降は鬱屈な空気はなく唯一の心地よさが残る時間が始まります。というより過去回想含めて、この二人だけが同じ空間にいるときだけそうなるのが余計にこの映画の全体的な毒を強くしています。
あまり晴れ晴れした話でもなく、洋画で言えばバッドマンに近い空気感なのもあって異常なぐらい長い間が設けられています。上映時間が長いのは9割そのせいです。
本当に何の救いもない、悩みやキツさを吐き出して出した分だけ厳しさが上乗せされるシンプルなバッドエンド映画です。ただそこまでの過程ややり取りの綺麗さは印象深く、邦画らしい邦画って感じなので今年の中ではお勧めしたい一作です。

死刑にいたる病

 元々の話のパワーに映像としての見せ方も加わってより記憶に残る。
連続殺人犯として捕まった榛村に手紙で面会に召集された筧井が唯一榛村が手をかけていない殺人の真実を突き止めてほしいというお使いをこなすのが本筋。
結構褒められているのは殺人鬼としての阿部サダヲの演技ではありますが、本当に榛村にハマる様な印象を持つタイプの人なので際立っているというより溶け込んでいるといったほうがしっくり来る感じです。
根本の話自体は主人公ポジの筧井が榛村の依頼通りお使いをこなしていく構成なわけですが、淡々と事件の謎を紐解くようなイメージで見ていた我々思考弱者はしっかりと罠にハマってしまいました。登場人物にはフックになるわかりやすいイメージを各人1つは持っているんですが、それに対するアンサーと話の本筋への関わり方が綺麗。わかりやすいフック部分がフィーチャーされるので、あらすじすら頭にまともに入れないで見たときは特に起きる名前を覚えにくい問題があっても理解が追いつきやすいです。なので終始話の速度が理解の速度を追い抜く現象は大半の人には起こらないだろうつくりになっています。
映像面でも意外とホラーチックな要素は強く、身体の破損部分がぼかしたり隠したりせずハッキリと映しているのでそういうのが好きな人は満足度高めだと思います。序盤から榛村の爪剝がしもカメラアウトすることなく写したり、拷問シーンの連続カットも見ごたえあるキツさになってます。ホラー描写がいまだに苦手ですが、しっかり心臓が3ミリ縮むぐらいビビらせていただきました。
原作力(チカラ)が強いだろう一作ですが、邦画の性質と合っているのと演者に恵まれたのもあってめちゃくちゃ満足度高いです。

ナイトメア・アリー

 ギルレモ作品らしい不気味な雰囲気で、ホラーといいつつもノワールの色が強い。
父親を葬ったスタンの経緯をショービジネスの才能として詐欺師に近い技術を身に着けていく前半、都会へ出てショービジネスを生業にし始めた後半に分けて見ていくスリルホラー映画。
1時間強毎に、前後半でハッキリと場面が移り変わります。前半で出てくる獣人や見世物小屋の装飾が手癖としての魅力以上に、話の展望の期待を膨らませるような不気味な雰囲気をより一層強くしています。特に大きく起伏することはなく、タワーオブテラーで言えばキューラインに並んでる最中に一回見せられるハイタワー3世の経緯を説明される時間までが該当するような感じ。後半の見せどころのためにじっくりと下地を作るための魅力的な時間になっています。
前半では口達者な一面で上手く立ち回っていましたが、後半でのショービジネスで稼いでいる場面からは主人公のスタンに明らかな驕りが見え始めたり、会話でもあまり優位な立場で進められているような印象が薄くなっていったりとラストの結末をふんわりと頭に浮かばされてくるような場面が続きます。で、終盤はしっかりとスタンが痛い目を見ていくわけですが、それまでのスタンの選択は勿論、一緒にショービジネスを始めたモリーの態度も相まってとことん痛い目に合うように導かれていくのは見ている最中でもあぁ…と同情が混じる声が漏れる程。清々しいぐらい前半の全てがフリとして機能しています。
特にラストシーンは印象に残っています。少し原作より手を加えているらしく、その場面が後から思うと後味の苦さをより強めているなと。スタンの間が見ている側に何もかもを悟らせた後にエンドロールに入るので、映像作品だからこそって感じの毒々しさがして好きです。
2時間半と長めではありますが、むしろ映画館で椅子に縛り付けられていたからこそじっくりと没入しながら見れた良さが多い一本だと思います。

(オマケ枠)

 Swallow
結論だけ言うと多分オタクはおもんないって言いそうなタイプの映画。フランシス・ハとかと同じ系統。配信のみなのでオマケ枠。
ただ個人的に導入になる「どうして異食症になったか」の経緯描写が面白くて、夫側一家による環境面でのストレスから陥ったのはあるんですが直接の原因はお義母さんから渡された自己啓発本に則った結果、手始めにビー玉を飲み込んだことになります。結局は夫側がしっかりとハンター(主人公)を追い込んだというのが徹底されているのがなかなか面白いポイントになります。
異食症を中心にホラーチックに描いているというより、母親の一歩を歩み始めた女性の話、という感じなのでキャッチーな宣伝文句は信用しないほうが良いです。

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B093G2CL94/ref=atv_dp_share_cu_r

 チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ
30分アニメでやっていたレスキューレンジャーズの映画、という体の好き放題やるキチガイ。これも配信のみ。
ディズニーは王道真っすぐを出してくるイメージが強いと思いますが、真っすぐを貫けるからこそ上手い外し方を熟知しているのを思い知らされる一作です。わりかし見慣れたキャラが出続けてるしずっと自分好みのギャグテイストが散りばめられていたので配信形態でも集中が切れずに楽しめました。
ディズニー作品どころか他社作品のキャラクターが大量に出てくるし、ネタの突き所が(日本人目線では)かなりディープになっています。配信当初によく言われていたのは実写ソニック、ただそれ以外にもカメオ出演として多数の懐かしいキャラも出てきます。アニメ版スマブラというより、昔pspで出たサンデー版スマブラとかそういうオールスターゲームを大乱闘スマッシュブラザーズっていうパッケージのゲームに集約させたような映画です。
キャライメージを損なう描写がジャブどころかストレートに何度も出てきますが、ハンドルを振り切りすぎてるせいで元のキャラと同一視は難しい気もするんで、マロタで終わらせやすいと思います。
ディズニー+独占アニメで一部オタクは呆れや怒りを見せていますが、MARVELやこういう独自作品で面白い作品は数多くあるのでアニメの独占配信を機に見てみてほしいです。MARVEL作品もアニメはあるからね。



 オタクがよくやる10選では①マイナスイメージも追加で言わないと選出しきれない②10個は単純に多すぎるというのもあって3本に絞りました。
正直6時間前後の1クールアニメやドラマより2時間前後の映画のほうがまとまりや筋の通りやすさは上回る点が多いと思うので、個人的にはアニメ見るよりも映画一本見るほうが話のインプットはしやすいと思います。
マジで下半期は札束に4本脚が生えた化け物に人が跨って走らせる競技や魔法で鉄球に変身した1万円札を打ち飛ばす小汚い機械で遊ぶ時間があったら娯楽作品を楽しむ時間に費やそうと思います。


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