見出し画像

【感想136】ブルーピリオド

 先に言っておくと、少年漫画原作としては上位クラスの「ようやっとる」枠。
原作をそのまま踏襲するわけじゃなく、矢口八虎の藝大受験の道のりに絞って描いていくことで初見の人が見ている間に何の話か迷わないようにされているし、八虎自身の成長にマストなシーンはしっかり抑えられたうえでマイルドな展開にされていたりと、かなり初心者用作品として巧く調理されていた。

 イメージを損ねないで他メディアへの入り口になってくれそうな作品になった、ていうだけで十二分に良い作品だと思う。直近に見たのが大胆な詐称をしていたせいでそう見えたかもだけれど。

他人に勧めやすい ★★★★★
個人的に好きか  ★★★★☆

 見に行く前には「原作をダイジェスト化されている」「努力(八虎)vs天才(世田介)になっている」というのを見た(後者は記憶曖昧だけれど)けれど、そんな感触はなく見終わった。

 まず八虎の物語として削られていた部分がかなり精神的にキツくさせるわりには共感を得られるかが怪しい場面なので、カットもやむなしという気はした。
その甲斐あってかラストは純粋な受験サクセスストーリーとしての感動のピークがあったし、お母さんへ志望校を白状するシーンや鯉ちゃんとの進路のことを話すときのシーンが真っすぐにいい話として見れたのはすごく良かった。
特に予備校に通っているときの葛藤の仕方や気分の浮き沈みは見ていて全然スカッとする展開にはつながらないし、ならわかりやすく成長のターニングポイントを押さえていこう、ていう方針で描かれるのは納得した。一応、単行本分は一通り読んだうえでの所感です。

 あとはキャスト陣の頑張りは腐すところがないぐらい良い。
あえて言うなら愛想の良さを抜いて陰がある雰囲気を強くした八虎のギャップがあるぐらいだけれど、龍二を演じる高橋文哉君にはガワを除いても頭が上がらない完成度。脚本的にもサブ主人公レベルの関わり方をするけれど、喋っていても動いていても役者本人が変な浮き方をしないのは良かった。

 ただそのうえで原作通り過ぎてマイナスに見える部分もあって、そこが個人的にずっとモヤっとしていた。
橋田と桑名マキは今作で一番割を食っていて、初見だと「いつの間にか八虎と仲良くなってるモブ」ぐらいしか情報がない。特に桑名は姉の存在に縛られる窮屈さを抱える側面の描写はなしで技術的な説明は順位付けでトップにいるぐらいしか情報がないので、唐突に一緒に飯食ってるぐらい仲いいシーンに写られてこっちが驚かされた。
正直、藝大進学以降は今作でカットしたような展開ばかりで続編を作る気はないだろうし、思い切って二人の扱いはもっと極端な振り分け方をしてもらった方が良かったかもしれない。


 多分想像してるよりは楽しめる作品にはなっていると思う。
夏休み期間でオススメできる、マイルドで掛け値なしに面白さを保証できるのは『インサイド・ヘッド2』とこれかも。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?