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【感想40】バビロン

現状今年1番好きなのはこの映画かもしれない。


サイレンからトーキーへ移行する映画史の栄枯盛衰を描いている。
『雨に唄えば』での大筋とは全く同じではあるけれど、それとは描かれる人物の視点や伝えたいこととかは真逆に位置づけされる。

とは言いつつも、実は『雨に唄えば』を見ておかないと理解に苦しむようなシーンがあったりするので一応抑えておかないと一回の鑑賞で十分理解するのは結構難しい。
『雨に唄えば』へのリスペクトはないと方々では言われてはいるものの、かなりあてがきとして描写しているシーンはあるので意識しているのは間違いないし、尊敬というよりは好き好んでいるものを取り込んだうえでの表現というのが近い。

序盤の最盛期を描いている派手なシーンの連発から打って変わって、トーキーの躍進からは一気にサイレンで成り上がった役者たちが下り坂を転がり落ちていくのを眺めるだけになるので、勢いにブレーキをかけることになってたのがつらい人にはつらくなるなと。3時間あるうちの折り返しからこうなるので、乗り切れなかった人はここで軒並み心がへし折られる。

後半でのトーキー製作ではかなり娯楽作品を考えながら見ていないと理解するのは難しいところではある。
ブラッドピッド演じるジャックが自分主演のトーキーの試写を覗きに行ったら客が全員爆笑している(ここも『雨に唄えば』からきているシーン)というのも、ピンとこない人は多分そこそこいるんだと思う。
サブカルでの例えだと、アニメでの表現とラノベ漫画での表現で同じにしたら逆に滑ってしまうような感じとか。
『かぐや様は告らせたい』の赤坂アカや令和あたりに出始めたラノベ作家なんかは太字で面白ポイントやボケ部分を強調するけれど、個人的にはそれがうざったく感じて冷める。だけれどアニメでは太字にするなんて手法自体取れないので、アニメ化したのを見ていても本来冷めるポイントにすら気づかずに楽しめる。ていうのが一例。


描写云々の前に、どれだけ描かれていることに肩入れして見れるかっていうのが賛否分かれるポイントだとは思うので、とりあえずデイミアン・チャゼルのあの感じが好きならハマれると思う。
『雨に唄えば』や『グレイテスト・ショーマン』は正のパワーで満ちてるキラキラした映画だったけれど、この映画みたいに負のエネルギーが漂う陰険な映画は個人的に居心地の良さを感じるのでいい3時間を過ごせた。好みのの話で言えば今年のトップ5入りは確実だなと思えるぐらい合致する内容だったし、もう一度見に行きたいなあと思いながら1月経ってた。
ちなみに際どいシーンにモザイクがかかっている映画館とかけていない映画館で分かれているらしいけれど、シネマシティは後者だったので流石だな~と思いながらパブサで出てきた感想を読んでた。

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