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【感想38】かがみの孤城

 辻村深月が原作、A-1制作とちゃんと面白いに決まってる布陣でちゃんと面白かった。
正直原作を読んだ方が理解度が上がるシーンがあるんだろうなっていう部分が多いけれど、初見でそう思わされるぐらいには根本の縦軸についてのお話はしっかりしているし、アニメだからこそ見せられる写し方であったりがいくつかあるので見てよかったな~~って思う部分はたくさんあった。
特に初週の特典であった「その後」についてがエンドロール後に見れるのは今だからこそ見れるいい映像だし、駆け込みでも見に行くのお勧めです。


 7人それぞれが個人にしか理解しがたい事情を抱えていて、それに対するヒーリングの意もあるけれどそれ以上にその点を描く姿勢だったり、大人側の返答の仕方はすごくいいなっていうのが見ていて一番思った。
昨今増えてきた逃避を一番に薦める寛容さじゃなくて、当人の取れる選択肢を明瞭にする形は親御さんに恵まれているなぁとフィクションながらも喜んじゃうようなシーンだった。
不登校に対して「嫌なら学校なんか行かなくていいから、転校しよう」というのはあんまり好きじゃなくて、「行く気持ちになるよう学校に最善は尽くさせるけれど、本当にダメなら転校してもいいよ」ていう、周りの大人が味方になってくれるだけじゃなくてちゃんと子供のために戦うよ、というのを示しているのは個人的にすごく好きな所。多分現実でも理想論とはいえ最適解だと思うので引っかかる様なモヤモヤもなく見終えられたのは何気に凄いことだし、本当にいい作品だっていう証なんだと思う。
原作部分に関する褒めだから映画で見る意義を勧める面としては弱いけれど、見ていて真っ先に挙がった感想がこれだったので仕方ないんだろうなとも思う。

 全体のつながりとしても映像として見ているとヒントになる様な描写がさりげなく映っていたり、後から見返すとより理解できるシーンが多いのも見どころだった。
言ってしまえばご都合主義というか、綺麗事の「正しい物語」ではあるんだけれど、核の部分では甘やかした答えは出していないのでロングラン上映や本屋大賞受賞なんかの肩書に相応しい作品になっている。


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