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【感想95】哀れなるものたち

 SEEDマラソンも終わって無事今期アニメをじっくり見ていたけれど、エロガキ(俺)とガキしか楽しめないクールで始まる2024年が素晴らしすぎて身体中のアニメ筋が喜びの悲鳴を上げてる。

他人に勧めやすい ★★★☆☆
個人的に好きか  ★★★★☆

 ノミネート作品のラベリングに違わない、いい作品だなってのは思った。
個人的には自己探求についての映画だ、って解釈しているので公開直後や日本予告で謳われていた女性のための映画っていうラベリングは一部シーンの抜粋から拡大解釈しているような印象もあるけれど、男女とかの隔たりに関わらずいい刺激を受けられる映画なので映画館で腰を据えて見てほしいなってところ。

 ベラ・バクスターという、身投げをした女性に幼児の脳を移植して蘇生された女性が世界に触れていく様を眺めていく、ロードムービーっぽい映画。
外の世界へ飛び立つ理由が肉欲を知ったばかりのベラが知的好奇心を刺激することを唆されたことが始まりだけれど、動物的欲求しか知らず集団に属する意義を見出していなかったのが他者との交流や旅を経て徐々に交流と体験を重ねていくことでその考えに変化の兆しが見えてくるのが面白いところ。

 R18指定な理由はほぼほぼセックスシーン。娼婦のところでそこそこ尺を割いているのもあって、結構な頻度でちゃんと本番中のシーンが差し込まれてくる。
その辺りからもやっぱり女性性に対するフィーチャーの仕方は見て取れるし、最後にある元々婚姻関係だった旦那との一幕は言い逃れ出来ないレベルでそういった内容に踏み込んでいるのは見て取れると思う。ただそれでもフェミニズム映画という冠を与えたくないのは、男性でも十分に私事として見れる範疇の自己決定プロセスと思考の経路を見れる作品だからだし、そこを見出さなかったとしても女性が扱われてきた歴史を辿るという意味でもいい作品だなっていうのはある。


 経てきたプロセスをもって選択した決定は物語の結末としてもとてもいいものだし、ロードムービーとの帰結としてもある意味邪道でもない正統派な終わり方だと思う。だから意思決定のお話としても歪なものではないし、いち思想としての物語よりはこっちの方が自分はするっと飲み込めるなっていうのは思った。
ただラストで示したある人物の末路は、そういうのでいいんすかね...?ていう不安が拭えないのは正直なところある。かなり痛々しい報復に部類されるし、かなりきついことをした人間とはいえ、それでいいのか?ていう疑問は残り続けると思う。
それでも知ること、考え続けることに光を見出すような映画が消費主義の加速する時代に見れるだけでもうれしいよ。


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