【感想144】SUPER HAPPY FOREVER
今年イチ、というより邦画トップクラスのアンビエンス映画。
じっくりと情景と人情を味わっていき、その答え合わせがされる。
しかも答え合わせ自体が野暮な存在なはずだけれど、何に対しての答え合わせなのか、ていうところに気づいた途端に愛おしい存在に変わる。
なんとなく好きなタイプの映画そうだ、て思ったらここから先のことは読まずに見に行ってほしい。
他人に勧めやすい ★★★★★
個人的に好きか ★★★★☆
やっぱりこの映画で象徴されるのは「カップラーメンでこんなに幸せになれるんだったら、永遠にずっとめちゃくちゃ幸せでいられる」のセリフだと思う。
この台詞が出るシチュエーションとタイミングが物語っているので、実際に見に行った時には少しだけ気に留めておいてほしい。
魅力的なのは、スクリーンに映るものすべてが物語っていて、じわりと意味を理解させられるところ。
雰囲気で言えば『aftersun/アフターサン』が近いものではあるけれど、この映画では主人公3人の背景情報がかなり多めに開示されているのもあって、第三者視点で見てもどういう心境なのかは輪郭ぐらいは掴みやすいようになっている。
そのうえで希望を見出して終われる、後味が程よく良い映画になっている。
複雑さによるわからなさから来る強さではない、作中では苦しんでいた人たちでも確かに希望となる光があって、それを観客だけは信じていけるような終わり方なのがすごくいい。
前半の佐野が振り回すいやらしさと魂が抜けた感じや、宮田の共感しづらいポジション取りもあってあまり心地いい状況ではないし、当の2人はこの物語の後にどう転ぶかは全く想像できないし、どうなるかの示唆も特にない。
なんだけれど、後半からの回想を経ることでそんなどうしようもなさも飲み込めてしまいそうな気になってしまう。
凪が貰った赤い帽子が2人のもとからなくなっても、2人をつないだことには変わらないし、たとえなくなったとしても2人が離れるわけじゃない。そういう小さな希望が眩しいうえに、さらにもう一押しするシーンがより一層希望を輝かしくしている。
これは前半後半が逆でも成り立つし面白そうではあるんだけれど、それでもこの構成にされた意義はあるし、そのおかげで様々な人にそれぞれの形の希望として微かにでも残り続けていくんだと思う。
純粋に、前を向いて行こう、と思わせてくれるいい映画でした。
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