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【感想62】セッション

去年の今頃の時期にたくさん映画を観るようになったけれど、そうなってから見た映画で断トツの1位。そう揺るがないだろうと言い切れるぐらいツボにキレイにハマった。

他人に勧めやすい ★★★★☆
個人的に好きか  ★★★★★ ★★★★★

音楽大学で一流のドラマーを目指すも燻っているような状態だった主人公のニーマンが、一流の指揮者として注目されている教師のフレッチャーに目を付けられるところから始まる。

とにかくこの映画で言われているのはフレッチャーの暴力性で、とにかく怒鳴る。
同じJ・K・シモンズが演じる『スパイダーマン』シリーズのJJJのように嫌味な感じでもなく、ただひたすら理不尽に怒鳴りつける。
ジャズバンドのサウンドを聴くつもりがJ・K・シモンズの怒鳴り声の方が記憶に残りそうなぐらいにパワー溢れるシーンばかりなので、こういうのが苦手な人はまず受け付けないと思う。

ただこの映画の異様な魅力の1つにもなっていて、フレッチャーとニーマンの2人の掛け合いがより際だって異様になってくる。
同じクラスの学生は全員怯えていて、説教が始まるとどんな理不尽な内容でも受け入れている。そんな中でもニーマンは最初100%純粋に受け入れて泣き出したり、挙句の果てには挑発もし始める。
普通の会話シーンでも読み取れる通り、この2人の感性や考え方、目指すものから運命的に嚙み合っている。

それを際立てるのがニコルとのデートやニーマン家の食事シーン。
どちらも故郷やミクロなコミュニティを重視してその話ばかりするけれど、ニーマン自身は世界というマクロ視点で生きているので、流れているBGMのドラム奏者についてのうんちく披露をしたり自慢してくる実績は家族や親せきの外に出てしまえば価値のないものだと言い切ってしまう。
身を委ねてしまえばハラスメントといって違いないフレッチャーから逃れられる2つの場所がニーマンにとっては居心地の悪いようにされている。

youtube上でも公開されている最後の演奏シーンは万人共通の名シーンとして謳われているけれど、個人的には中盤にあるスコアを取りにレンタカーで引き返す一連のシーンが一番好きだし記憶に残っている。
ここを境に、引き返せないほどの代償やのめり込み方をしているのが明確になるので必見です。


100分足らずで非常に濃厚な内容なので、今後10年はこの映画以上に惹かれるものはないなと思ってる。
結末に賛否がある『ラ・ラ・ランド』よりライトではないし、そもそもの評価がよろしくない『バビロン』よりはライト、と中途半端な立ち位置なこの作品。ただ秘めてる魅力は頭1つ抜けていると自信をもって勧められる。

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