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SOCIAL WORKERS LABとは? | SWLABに関わるひと | Vol.1

SOCIAL WORKERS LAB(ソーシャルワーカーズラボ)は、「ソーシャルワーカー」という概念を介して、多様な人びとが出会い、関わり合い、問い、学び合う社会実験プロジェクト。

そんなSOCIAL WORKERS LAB(以下SWLAB)で活動するメンバーは、学生、クリエイティブディレクター、デザイナー、プランナー、建築家、ライター、コーディネーター、社会福祉法人、NPO法人、株式会社など、福祉に関心があった人からそうでなかった人まで、いろんな分野からいろんな人が集まっています。

SWLABには、どんな人が関わっているのか。プロジェクトの運営メンバーを、今回から3回にわけてご紹介します。

トークメンバー紹介

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SWLABディレクター 今津 新之助
1976年生まれ。大阪出身。大学卒業後に沖縄に移住し、株式会社ルーツを創業。人・組織・地域づくりを手がける多中心のコンテクスト・カンパニーを展開。現在はプロジェクトデザイナー兼コーチとして、人や組織の持ち味が開花するプロセスに伴走し、新たにプロジェクトをはじめたり、局面を転じたり、領域横断し結びつけたりを多数展開。一般社団法人FACE to FUKUSHI 理事、株式会社一級建築士事務所STUDIOMONAKA 取締役など。Art of Coaching 認定コーチ。

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FACE to FUKUSHI共同代表 大原 裕介
社会福祉法人ゆうゆう理事長。北海道医療大学客員教授。北海道医療大学在学中にボランティアセンターを設立し、2007年にゆうゆうの前身となるNPO法人を創業。障がい者福祉からはじまった活動をコミュニティ・レストラン、共生型のまちづくり、アール・ブリュット、農福連携など多方面に展開。NPO法人全国地域生活支援ネットワークの代表として政策立案・提言にも関わる。

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designと 代表/デザイナー 田中 悠介
1985年大阪生まれ。大学、大学院で建築を学ぶも、建物を建てるという手法だけでなく、あらゆる領域の課題に対してニュートラルな視点を持って解決できるようになりたいと思い、デザイナーになることを決意。数社のデザイン事務所を経て、2016年に「designと」を設立。デザインの分野にしばられず、さまざまな領域の課題に取り組む。SWLABにおいては、プロジェクト全体のアートディレクション、デザインを担当。

1、SOCIAL WORKERS LABができるまで

福祉の魅力を
福祉の人が発信できる
福祉の業界へ


今津
:SOCIAL WORKERS LAB の今津新之助です。今日は「SWLABに関わる人たちを紹介するシリーズ」の第1回目ということで、SWLAB発足の経緯や、そもそもSWLABとは何か、どんな景色をめざしているのか、などについて話せたらと思います。
SWLABは、一般社団法人FACE to FUKUSHIがイニシアチブをとって推進しているプロジェクトです。なので、SWLABを知っていただくためには、まず「FACE to FUKUSHI」についてもふれておきたいのですが、大原さんお話しいただけますか。

大原:社会福祉法人ゆうゆう理事長の大原裕介です。FACE to FUKUSHIでは、共同代表を務めています。まずはFACE to FUKUSHIの起こりから話しますね。さかのぼること約10年前。福祉の人材不足や離職率が社会的に見える課題にはなっていないけれど、福祉を3Kと揶揄するようにはなっていた頃。社会福祉法人の若手職員たちが職場を越えてつながれる場をつくろうと、「全国若手福祉従事者ネットワーク」を立ち上げました。
仕事に対する価値観や職場では解決していかない悩みを打ち明け、切磋琢磨しながら福祉課題をぼくらなりに解決しようとしたんです。各地でいろんな勉強会やイベントを開催しながら仲間づくりをし、3,000人ほどのネットワークに成長していきながらも、業界の状況はなかなかよくならず、むしろ悪化するいっぽうでした。現場ではどんどん人が辞めていき、福祉業界へのネガティブなイメージが一般化していく。
この状況を変えるには、徹底的に福祉業界で働きたいと思える入り口に変えていく必要があるのではないか。そう考えたのが、今津さんも理事を務めているFACE to FUKUSHI設立のきっかけですね。

今津:全国若手福祉従事者ネットワークを前身に、FACE to FUKUSHIを発足。そして2014年から今もつづいている福祉の就職フェア「FUKUSHI meets!」を企画したんですよね。
当時開催されていた福祉業界の就職フェアはいかにも行政的で、「これでホンマに若い人が参加したいと思うんか?」と感じざるをえないと同時に、出展する社会福祉法人の魅力が非常に伝わりにくいものでした。
これこそがミスマッチの原因と考え、FUKUSHI meets!では会場選びから演出、広報デザインまで、若者に寄り添うことを強く意識した就職フェアをめざしました。

大原:若者の感度にきちんと響くよう、法人の魅力を発信する。そんな一般企業じゃあたりまえの採用活動を、社会福祉法人もやっていこうと。FUKUSHI meets!の派生として、自法人の魅力発信のしかたや採用力向上の勉強会を行うなど、業界全体にいい影響を与えていく試みです。
ここ5、6年かけてある程度のムーブメントはつくれたと感じていて、じゃあ次にどうスケールアウトしていくのか、という分岐点がちょうど今という感じですね。

今津:FACE to FUKUSHIは今、約150法人と連携し、毎年2,000名ほどの大学生とのマッチングの場に成長。福祉に興味・関心のある大学生と福祉業界をつなげる活動をつづけるいっぽうで、FACE to FUKUSHIとは異なる視点から問題意識をもって取り組んでいるのが、SWLABの領域になります。

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2、SOCIAL WORKERS LABとは何か

福祉の関係人口を増やすと
生きやすい人口が増える


今津
:SWLABが取り組む領域。それは、福祉と関わる「関係人口」を増やす仕掛けづくりです。たとえば、福祉を学んでこなかった学生や異分野・異職種の社会人の方に、福祉の豊かさを伝えることで興味・関心をもってもらう取り組みもそう。
ではなぜ、福祉の関係人口を増やしたいのか。人口減少に向かう社会のなかで、経済成長ではない豊かさのありかたや、いろんな困りごとや生きづらさに、ぼくらは今まさに直面しています。前例なし、正解なしの時代にチャレンジしていかなきゃいけないなかで、大きな可能性を秘めているのが福祉なんだと感じています。だからこそ、福祉をもっと社会にひらいていきたい。福祉にとって異分子である「非福祉の観点をもつ人」にも関わってもらい、福祉分野の人と対話し化学反応を起こすことで、社会福祉法人ひいてはこの国の社会福祉をよりよくしていけるはず。そういう想いから、このプロジェクトはスタートしました。
大原さんは社会福祉法人ゆうゆうの経営者として、非福祉系の若者の採用も行っています。ぼくも福祉の現場を経験したことがないので、「社会福祉をアップデートする」かのような活動をしている大原さんとのやりとりからSWLABの構想を深めてきました。

大原:今津さんもおっしゃいましたが、これから人口が減っていけばさらに担い手が足りなくなる。高齢化が進めば福祉サービスを必要とする人も増えていく。コロナもあいまって社会を見渡せば、ものすごい経済困窮とそれにしわ寄せを受けたさまざまな困りごと、生きづらさを抱えた人も増えてくる。こうしたなかで、福祉はますます制度のなかのパッケージサービスではなく、社会全体のなかの非常に重要な分野になっていくだろうと思います。従来通りの福祉人材だけで解決する問題ではありませんよね。

今津:福祉というフィールドには、想像力を発揮すれば無限にやっていけることが、まだまだあると思うんです。そのことが社会的にはあまり認知されていないように感じます。そしてぼくらは、社会課題に向き合って仕事をしたいと思っている若者たちに、まだまだその機会を提供しきれていません。
だからこそ、非福祉系の若者たちも含めて新しい関わりの場を提供することは、SWLABの大切なミッションと捉えています。意志ある若者たちのプラットフォームとなり、新しい流れをつくっていきたいと考えています。

3、なぜ「ソーシャルワーカーズラボ」なのか

福祉の外から
福祉をブランディングするために


今津
:ぼく自身が大学のときに福祉で働こうと思っていないんですよね。30代になってはじめて福祉の仕事に関わることになったとき、福祉の魅力や可能性を若者に届けるためにはクリエイティブの力が必要だと思いました。
だからこそSWLABの立ち上げにあたって、浅倉さんというコンセプトデザイナーに相談し、そこにデザイナーの田中さんにも加わってもらって、このプロジェクトに至った背景や思いを語るところからスタートしたんです。「ソーシャルワーカーズラボ」という言葉も、そうしたやりとりを重ねるなかで誕生しました。
けれど、クリエイティブのお二人から「ソーシャルワーカー」という言葉の入ったプロジェクト名を提案されたとき、ぼくは「これでいきましょう」とは言えなかったんです。ソーシャルワーカーを業界的な言葉だと認識していたので、正直戸惑ったところがあって。
このアイデアに至るまでの経緯を、田中さんからお話しいただけますか。

田中:今津さんからSWLABについてのご相談をいただき、ヒアリングしていくうちに、福祉人材を採用することはもちろんですが、その本質は福祉のリブランディングだと思いました。福祉が誤った認識をされているのはすごくもったいないことです。
だから、ぼくのなかでは採用と結びつけることは一旦置いといて、福祉のイメージをよりよくするためにはどうすればいいだろうという観点でテーマを捉えるようにしました。短期スパンの効果というより、長期スパンでどう変えていけるかということを含めて、ネーミングやロゴデザインを考えていったんです。
今津さんとの打ち合わせの場でも、ソーシャルワーカーというのはもともとある言葉だから、新しい言葉をつくったほうがイメージを変えていけるんじゃないかという議論もありました。ただ、たとえ新しい言葉をつくっても、果たして福祉と結びついていくのか疑問でした。
今回やるべきことは、福祉の外側から福祉をブランディングしていくこと。だからこそ、福祉から遠いところにある言葉を使いたくなかったんですね。とはいえ「福祉」という言葉はネガティブなイメージももたれているので、「ソーシャルワーカー」という言葉で展開したいという提案をしました。

今津:ソーシャルワーカーと言われて、真っ先に大原裕介が頭に浮かびました。業界的な専門用語と思っていたソーシャルワーカーという言葉を、ぼくらなりの解釈で使ってしまっていいのかと躊躇したんです。それで大原さんに相談すると、あっさり「いいじゃん」って(笑)。そこではじめてフラットに考えることができて、一気にしっくりきました。

大原:ソーシャルワーカーって、福祉の業界でもその使い方・捉え方がいろいろあるんですよね。「ソーシャルワーク演習」といった大学の授業名にあったりとか、職種資格を指すのもソーシャルワーカーだったりとか。一方「ソーシャルワーク」とは、価値ある福祉専門職の倫理観として捉えられたりもしています。
だからぼくらが社会に訴求するときの福祉のひとつとして、また、インパクトを伝えていく言葉として「ソーシャルワーカー」を使うことは何の問題もないと思います。
外から福祉をみせるときに、「ソーシャルワーク」という言葉はむしろ絶妙。おもしろいですよね。

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4、SOCIAL WORKERS LABがめざす景色

SWLABをくぐることで
目の前の業務ではなく
社会を相手に働ける人へ


大原
:SWLABを通じて、福祉の道に進みたい若者もいれば、企業や公務員になる若者もいるでしょう。ただ、このSWLABをくぐることで、ひと味もふた味もちがう企業マンであり公務員になるんじゃないかと思うんですよね。要するに企業マンでありながら、あるいは公務員でありながら、ソーシャルワーカーとして働けるようになる。目の前の業務を相手にするのではなく、社会を相手に仕事をする若者たちが、SWLABからぞくぞくと生まれていくような気がします。たとえ福祉業界に就職しなくても、SWLABで得た価値観をもってそれぞれの職場に就く。それもおもしろいと思うし、そんな若者が10年後、30代になってバリバリやっていることを想像すると本当に楽しみですよ。

今津:10年以上前のことですが、知人から「ソーシャルワーカーみたいな仕事してるね」と言われたことがあって。そのときは目から鱗でした。福祉の現場に一度も立ったことのない自分が、そんなふうに見えているんだって。
ソーシャルワーカーって、福祉の領域においても広い概念ですよね。社会づくりから対人援助のケアまで、つまりスピリッツの部分から実践まで含まれている言葉。SWLABを通じて、福祉業界じゃない企業に就職しても、ソーシャルワーカーでありつづけられることを伝えたい気持ちもありますね。

大原:福祉のソーシャルワーカーだけでやる福祉ではなくて、いろんな仕事をしながら福祉に関わりをもつこと。おもしろいと思うのは、ぼくくらいの年齢の建築家、パティシエ、料理人とか、それぞれ第一線でやっている人たちが、自分が今までやってきたことを社会のために還元したいと言うんですよね。つまり自分も社会にコミットできる実感がほしいとなったときに、社会福祉法人が舞台になるということ。そういう同世代の方と出会う機会が多いんです。いろんな経験、仕事をしてきたけどやっぱり社会のために何かしたいというね。そんな人が増えていって、社会が変わっていくとおもしろいなと思っています。

田中:僕は大学院卒業後に就職した大企業を一年で辞めましたが、当時は、会社の先に社会が見えていなかった。会社のためだけに働くってすごいむなしいんですよ。デザイナーとして働く今は、どんな仕事をしていても、その先に社会をみていたいという気持ちが常にあります。社会全体でそういう本質的なところに向かっていく価値観は育っていっているとは思いますが、社会的なことをしようと考えたときに、まだまだ選択肢がみえにくい。そのときに果たせるSWLABの役割は大きいのではないでしょうか。

5、今後のイベント

福祉の周辺から
福祉の内と外の線引きを問いなおす


今津
:具体的なイベントの話もしましょう。2021年1・2・3月に「福祉の周辺」というタイトルのトークイベントをオンラインで開催します。
1月「まちづくりと福祉」、2月「福祉を超える」、3月「家族と福祉」というそれぞれのテーマのもと、福祉の周辺とも呼べる立ち位置で活動しているゲストたちが、福祉の内と福祉の外という線引きを問いなおす、といった内容です。
2月の「福祉を超える」というテーマでは大原さんにも登壇いただきます。
「福祉の周辺」というネーミングは田中さんに考えてもらったのですが、この意図や狙いについてお話しいただけますか。

田中:福祉をリブランディングするために、最初の入り口として「SWLAB」とネーミングするほうが訴求できると考えました。とはいえ「SWLAB」と「福祉」をいつまでも遠ざけてはいられない。この両者を結びつけていかないと、福祉業界ひいては社会を変えていくことにつながりきらないと思います。だからこそ、外からの目線で福祉に興味をもってもらうにはどうしたらいいかと考えたときに、「福祉の周辺」がいいんじゃないかと。
ゲストが福祉業界で活動されている大原さんだったり、福祉外だけどソーシャルワークと呼べる活動をしている方々だったりっていう。「福祉」と「福祉外」という線引きを、この境界線の周辺にいる方々がいろんな視点で問い直したり、「福祉」として遠くに切り離していたものは、実は自分の生活に身近なものだったり、そういうところを曖昧にしてみようという意図を込めました。
一見したところ福祉外だけど実は福祉に関わりが深かったり、福祉の会社だけど福祉外の領域までおよんでいたり。フライヤーのデザインでは、そんな福祉の外側を表しているようで内側を表しているようでもある、というビジュアルにしています。

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6、おわりにひとこと

とどのつまりは福祉じゃなくても


田中
:「福祉業界のために」という活動ではあるけれど、長期的に視野を広げるとすべて社会のためにつながっています。SWLABは、社会をよくしたいすべての人が対象であり、そのひとつの道として福祉業界で働く人が増えることにつながるのもよし、というくらいでいいと思います。採用だけに寄りすぎず、だけど採用にもつながってほしい、この温度感がうまく伝わればいいなと。

大原:SWLABを通じて福祉に人を斡旋していくものでもなければ、かといってゼロでもない。
保守的な福祉業界において、革新性の高い福祉法人に人が集まるという不均衡が生じています。だからといってみんな革新的にやろうということでもなくて、保守的な法人にも素晴らしい歴史や実践もある。そういう意味でも、我々の社会福祉業界もいい過渡期にきてるんじゃないか。そんなタイミングでのSWLABの取り組みなので、期待感は大きいですね。時間はかかるかもしれませんが、そのぶん出てくる成果はものすごく尊いものになっていくと思います。

今津:とどのつまりは福祉とかではなく、この国はみんなで支え合って生きているという認識をしていかないと、大変な時代になっていくよねということ。SWLABを通じて、こういうことを実感とともに身近に感じてもらいたいという願いがあります。本日は、ありがとうございました!

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