ざっくりとした「将棋26級の認定基準」
写真は2016年の「関西こども将棋大会」です。そのまんまな名前のこの大会ですが、「かんこ」と呼ばれる歴史と権威のある大会です。
さて、2012年~2019年に開講していた「こども将棋教室ポポ」「おとな将棋教室ポポ」の級位認定基準を紹介するこのコーナー。
前回は「将棋30級の認定基準」と題して、全く初めて将棋に触れる人にどんな級位を認定するかと話をしました。
結論をおさらいすると、「ほっといてもひとりで対局できると30級」でしたね。
では少し進んで25級になるまではどんなことを重点的に指導し、どんな基準で認定していたでしょうか。
まずは例のごとく、結論から。
25級の認定基準だけで言うと、「26級に上がったあとに飛角鬼ごっこ昇級テストに合格すること」になります。
26級までの昇級、25級昇級テストを受けることを認めるのは、相変わらずの目分量でした。
目分量もちょくちょく補正されていまして、最後のほうは「既に20級の実力がある子」に25級の昇級テストを受けてもらっていました。
具体的には、「10枚落ち100戦99勝レベル」ですね。(何が具体的なんだか)
じゃあ26級ってどういうことができれば26級やねん、っていう話ですね。
26級レベルの子に教えていたこと
26級レベルの子に教えていたこと、挑戦してもらっていたことは以下です。このうち、「ほぼ全員が完璧にできること」を◎、「できる子が多いこと」を○にしておきます。無印は「教えたけどできるとは限らないこと」です。
* * * *
◎駒の動かし方を覚える
◎対局開始前と終わりに挨拶をする。(床の場合は挨拶だけでも正座。対局中は崩してもいいが、机より上にひざが出ないこと)
◎対局開始から終わりまで、座ったままで対局する
◎対局中は口を閉じる(しゃべらない)
◎駒を数えて片づける →おかげさまでポポ7年間で1枚も駒を紛失しませんでした
○指したら手はひざの上(手番じゃないときに駒を触らない)
○指す手を決めてから駒に触る(待ったをしない)
・かっこいい駒の持ち方
・大橋流・伊藤流で並べる
◎駒箱を開けたら玉(王)をまず置く
→大橋流、伊藤流は「かっこいい並べ方」と言っていました。あまり強制すると、駒を探すのに時間がかかって大橋流で並べられないことで挫折する場合もあります。
・将棋盤を「Z」に見る(四隅の香車を見る) 下図参照
◎駒を強い順番に並べられる(駒の価値を知る) ※この記事最後で補足説明あり
◎王手をかける
○王手を受ける
○タダの駒を見つけて取る
○タダで取られそうな駒を守る
◎歩を垂らしてと金を作る
○と金を作られそうなところを守る
・歩で桂頭や角頭を狙う
○歩がぶつかったら取る
○大駒は成れるときにすぐ成る
○頭金・腹金の1手詰を必ず詰ませる
○”頭竜”、”頭馬”の1手詰を見つける
○「1手詰があるよ」と言うと1分以内に見つける
○相手玉を向こう側(すみっこ)に追い詰める
(中段玉に真上から竜、馬、金などで押さえて下段に落とす)
・相手玉の2マス手前に持ち駒の金や銀を打つ
◎1手詰ハンドブックをひとりで解き進める
○1手詰ハンドブックを10分で80問解く
・1手詰ハンドブックを10分で300問(1冊)解く
○3~5手詰をゆっくり解説されて、まあまあ理解する
・両取りをかける
○駒をどんどんとりかえっこする
○とりかえっこした駒は、できるだけ向こう側で使う
◎初手に飛車先の歩を突いたり、角道を開けたりして大駒の働きをよくする
◎相手が△8五歩と飛車先の歩を伸ばしてきたら、▲7八金と受ける
◎△8六歩を▲同歩と取る
◎△8六同飛に▲8七歩と打つ
→この3つ、こんな風に3段階で説明する必要があります。
・△8五歩に▲7七角や▲7七銀で受ける
→これは△8八角成と取られる事故が起きます。
○金銀4枚を、攻める班と守る班に班分けする
○玉を、守る班の金銀のほうに動かしておく
○1枚で守られているマス目を2枚で攻める (数の攻め、棒銀)
・駒をタダ取りするための歩の手筋いろいろ
○対局が終わったあとに、初手から覚えているところまで再現する
→感想戦はまだ難しい棋力なので、講師陣が指導対局につきっきりで全ての対局を見切れないときにやってもらっていました。平均20手くらいでした。
○自分が指した手の、選んだ理由を説明する
→理由発表つきリレー将棋をやっていました。
◎先生に教えられたことと違っても、自分で指した理由を説明できるなら違うことをやっても良い
◎上記の技術を総合して、10枚落ちは(上手が無理やり負かそうと思わなければ)だいたい勝てるようになっている
◎10枚落ち上手を持って終局まで指す
→入会したての子相手に。26級以下同士は総平手で25級から駒落ち上手を持つことにしていましたが、25級手前の子には駒落ち上手の練習などいろいろな理由から10枚落ち上手をやってもらっていました。(上手側の子にもメリットがいろいろあるのでまた機会があれば書きます)
○対局中に作戦を立てる
○対局待ちのときに、他の人の対局を見て「どんな作戦を狙っているのか」「自分ならどう指すか」を考える。
・上記の習ったことを、友達や弟・妹に説明する
→というわけで、できるだけ小学生がそっくりそのままパクれるような言葉遣いで指導します。その結果、私のコピーロボットみたいなしゃべり方をする子が大量に出現しました。
* * * *
25級以下の子の棋譜
当時26級の子vs33級の子の棋譜(平手)が出てきたので紹介します。なんとなく、「確かに上記のことはやろうとしているな」という雰囲気が伝われば幸いです。
開始日時:2018/02/08
先手:33級
後手:26級
▲5八金右 △3四歩 ▲3六歩 △8四歩 ▲2六歩 △8五歩
▲7八金 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲8七歩 △8二飛
▲3七桂 △4二銀 ▲2五歩 △3二金 ▲2六飛 △5二金
▲1六飛 △4一玉 ▲1五飛 △1四歩 ▲1六飛 △5四歩
▲2六飛 △7二銀 ▲6九玉 △4四歩 ▲4八銀 △3三銀
▲1六歩 △9四歩 ▲6八玉 △7四歩 ▲1七香 △7三桂
▲2七飛
(棋譜ここまでで終了。反則があったと思われる)
棋譜再現はこちら (将棋アルバトロスさん作成のページを利用)
相手の守備駒がない10枚落ちならなんとか勝てることもあるけど、平手になるとどこを攻めていいかわからなくて右往左往している様子がうかがえるかと思います。
マナーは「始めたばかりだから厳しく言わなくても」という声もありますが、始めたばかりのときに教えたほうが「そういうものか」とすんなり受け入れてもらえます。駒を数えて片づけるなんて、当たり前にやります。
むしろ、初めから20級や15級くらいの実力があって入会してきた子のほうが、マナーを守らずに(知らずに)指すことに既に慣れているので、改めて教えて修正してもらうのが大変でした。
教えるスピード
私の教室が他の教室と決定的に違うなあと思ったのは、教えるスピードです。
上にいろいろ書いたでしょう。
1回の講座(30分)でどれか1つを延々やります。(あ、そりゃたまには2つ3つ混合もありますが、基本は1つです)
「かっこいい駒の持ち方」だけで30分かけます。
「王手の守り方」を30分の間、どんどん問題を出します。
頭金(成駒)は場所と駒を変えてやります。
大事なのは、「おさらい」と言って同じ講座を2回やることです。
棒銀の講座でも同じところで「じゃあ次の一手は?」と聞きます。
初めの解説でちんぷんかんぷんでも、2回目はさっき聞いたことだからなんとなく覚えているし、実は聞きそびれたことをもう1回聞けるかもしれません。
全員の理解度が高そうなときは、誰かに前に出て大盤を使って同じ解説をしてもらう、ということもしていました。
だから30分の講座でも、実際は15分の準備をしていました。
駒の価値の指導について
私は駒を点数や金額に例える教え方はせずに、強い順番を教えていました。
大盤の上にこのように並べて「玉は天井よりも上に行ってほしいくらい大事な駒、歩は床を掘りたいくらいに動きが小さい駒」(弱い、と言うのは抵抗があった)と言います。
隣に並んでいる駒は等価。ただし金は銀と比べるとほんのちょっとだけ強い(と言って、ミリ単位で上に動かす)。
同じ列同士のとりかえっこはどんどんしてください。
上と下をとりかえっこすると、上の駒をもらった人のチームが強くなります。
でも上1枚と下2枚をとりかえっこすると、実は下2枚のほうが使うのが便利でお得です。(二枚換え)
てな感じで指導していました。
点数や金額は、将棋業界全体で統一された数値がないのでもともと好きではなかったのですが、書籍で見て点数を覚えてきた子が教室での対局中に駒交換のたびに足し算を始めてしまって全然対局が進まなくなったときに、改めて「こりゃだめだ!」と思いました。
おわりのあいさつと次回予告
今回は26級に認定するまでに教えることを書きました。
何か抜けている気もしますが、これはそのまま、初心者指導で教えるカリキュラムにもなるんじゃないかなと思います。
大雑把にいうと、この段階では竜・角・と金を使って攻めることができれば十分です。
次回は25級の認定に必須としていた「飛角鬼ごっこ」を紹介します。
これ、深すぎて書きかけで挫折した下書きがたくさん残っているんだよなぁ。そろそろ書けるかなぁ。
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